表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/35

言い争い

「じゃ、半分やっといて」


 松谷くんから渡された資料の厚みに、思わず「えぇ⋯」と声をもらす。


 仕事のやり方はごく普通、資料を順番に重ねてホッチキスで止めるだけという単純作業⋯なんだけど!


「量⋯多いね」


 前にも言った通り、仕事をするのは結構好きだ。達成感もあるし、やりがいもあるし、人の役にたてるっていうのが何より嬉しい。


 けどさ、そうとは言っても!!



(放課後の時間だけで、しかも2人だけで終わらせるには結構酷なんじゃないの⋯!?)



 A4の紙が1人につき、たぶん20枚以上はあると思われる。しかも、たぶん1回落としてバラバラにしちゃったんだろうな、プリントが種類ごとにまとまってないし。


「とりあえず早く終わらせないと⋯」


 ちらっと松谷くんの方を見ると、彼は窓の外を見ていた。


「⋯あのー、早くやんないと終わんないよ?」


「あーごめんごめん、何からしたらいい?」



⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯あれ、何か、



「⋯⋯⋯今日、声変じゃない?」


 朝からちょっと思ってはいた。いつものうるさいくらいよく通る声と違う、すこしかすれたような、つまったような感じの声。


「あーえっと⋯分かっちゃう?昨日さぁ、向井たちとカラオケ行って歌いすぎたんだよなー」


 あ、聞かなきゃよかったかも。

一瞬でも心配した自分が馬鹿みたいだ。



(いいな、カラオケ⋯)



 中学のときは校則でカラオケもゲーセンも行けなかったから(誰も守ってなかった)、高校生になったら行けるって楽しみにしてたのに。


「そう、友だち多くてよかったね」


「⋯何か今日冷たくね?」


「別に?」


 私は友だち関係のことで色々悩んでるのに、松谷くんはいいよね、人気者でさ。


 半分くらい八つ当たりであることを自覚しつつも、考える気持ちは止まらない。


 今朝のこともあり、今私はちょっと機嫌が悪い。口を開くとひどいことを言いそうな気がするので、とりあえず黙っておくことにする。


 松谷くんは私のピリピリした様子に気づいてないようで、それにまたイライラする。


「あ、待って凛、そこ逆じゃね?」


「これ1部落ちてるけどどっか抜けてない?たぶん俺じゃないと思うんだけど」


「何かだんだん雑になってきてね?」


 いつもならさらっと流すはずの言葉が、今日は何か引っ掛かる。しかもそれが全部図星であるだけにムカつく。


「凛ってもしかして不器用?笑」


松谷くんの意地悪そうな笑顔を見た瞬間、押さえていた何かがブチッと切れた。


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯そんな文句言うくらいなら自分で全部やれば!?」


言ってしまってから1拍おいて、我に返った。


「ご、ごめん何でもない⋯」


「いーよ、そうするわ」


 慌てて取り繕うとした私に、松谷くんはそう言い放った。その言葉と冷めた表情にはっと息を呑む。



(どうしよう、怒らせた?)



「つか、1人でやった方が早いし絶対。凛はもう帰れよ」


 松谷くんは怒ってる風でもなく、まるで当たり前かのようにさらっとそう口にした。



(なに、それ)



 自分は窓の外見たりスマホさわったり、ぼーっとしてたりするくせに。

 私が不器用だとしても、委員なんだから、やんなきゃいけないんだからしょうがないでしょ?松谷くんがそれをどうこう言う権利ないじゃん、第一、立候補したわけでもないのに。


「⋯⋯⋯⋯⋯そうだね、そうするよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ