神様は不公平
「凛」
「ん?」
「もうすぐ研修あるじゃん?放課後それの資料を作るんだって、学級委員が」
⋯学級委員仕事多すぎるって思うのは私だけ?
「あーうん、わかった」
「にしても竹田、人使い荒いよなー、何でも学級委員に言えばいいと思ってんじゃね?」
うん、私だけじゃないっぽい。
竹田先生は私のクラスの担任の先生である。
結構年は取っているけど(たぶん50くらい)、体育会系っぽいくノリがいいからか、割と人気がある。
「ねー、まぁ仕事は好きだからいいんだけど」
「仕事好きとかあんの?優等生かよ」
「嫌いなの?そういうの」
「普通にめんどくさい」
「いいじゃん、暇でしょ」
ついうっかり口にしてしまってから、あ、と気づいた。
松谷くんは友だち多いんだった。
「ひでぇなー、つか凛って結構よくしゃべるよな、しかも結構毒舌っていう」
「えー⋯普通でしょ」
私、そんなしゃべってるかな⋯
あ、前がしゃべらなさすぎたから相対的にそう見えるとか?
「友だちだもんなー?心許してるってことか」
「⋯」
間違ってはない。けど、それを認めるのは何か恥ずかしいというか、なんというか。
「凛って他に友だちいねーの?」
(分かってるくせに聞く、それ?!)
「あ、わりぃ地雷?」
「⋯⋯いたもん中学のとき」
「過去形かよ」
「⋯い、今はあんま会うことないからさ」
「まぁ確かに凛と仲良くなりたいって思う人はあんまいなさそーだよね、表情無いし面白そうには見えねーし」
(!)
傷つくより先に頭にきた。
松谷くんが口悪いのは知ってるけど、そんなこと言わなくてもいいのに。言っていいこととと悪いことの区別ぐらいあるでしょ。
「⋯松谷くんは悩みなさそうでいいね」
精一杯の嫌みを返したのに、松谷くんはヘラヘラと笑って言った。
「悩みねー、ないことはないけどさぁ」
クラスでも人気者で、運動もできて、友だちも多くて、それ以上に何を悩むと言うのだろう。
私なんて、たいした取り柄もないのに⋯
神様は不公平だよ───なんてありきたりな台詞を、柄にも合わず真剣に思ってしまった。




