表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/35

線引き

(うわぁ⋯タイミング悪いなぁ⋯)



 登校すると、早速下足箱で山本さんと藤井さんと遭遇してしまった。


 どんな顔をしたらいいのか分からないので、とりあえず目が合わないようにする。



(これから気まずいな⋯)



 山本さんの友だちだから、きっと藤井さんにも、三木さんにも小林さんにも、私とのことが知られているんだろう。



(クラスでも目立ってる4人に嫌われちゃったりしたら、これから友だちができる自信がないよ⋯)



 弱気になりかけた自分を心の中で退治する。



(そんなの、言い訳にしちゃダメだよね⋯!)



「⋯⋯おはようございます!」


 階段の方に向かっていた2人が振り向く。

今の、私変じゃなかった⋯よね?


「おはよぉー」


 藤井さんは何てことなさそうにそう返してくれたけれど、山本さんは気まずそうな顔で背を向けた。



(まぁそうなるよね⋯)



 分かってはいたけれど、若干ヘコむ。

仕方なく靴を履き替え、階段の方に歩きかけた───そのとき。


「⋯おはよ」


 周りが静かだったからかろうじて聞き取れたくらいの、ささやかな声で山本さんが言った。


 ちょっと無愛想ではあったけれど、返してくれたことが嬉しくて。


「凛って挨拶フェチだったりすんの?」



⋯何で松谷くんって、いつもこう嫌なタイミングで現れるんだろう。



「何そのフェチ、聞いたことない」


「うん、俺も。ていうか藤井とかと仲良かったっけ?」


「そんなことはないけど⋯」



 実際、挨拶しただけだし。



 松谷くんはふーん、と言いながら笑った。


「何か、強くなったな」


「⋯普通だよ」


「いやぁ、前から比べたら成長したなー的な?」


「誰目線なのそれ!?」


 でも、言われたことに心当たりはある。


 前なら絶対、挨拶なんかしなかった。目が合わないように、関わらないようにってしていただろう。


 強くなれたのは──────


自分の味方がいてくれるからなのかな。


「嬉しそうなとこ申し訳ないんだけど、敬語はやめた方がいんじゃね」


「えっ⋯何で?」


「俺もそうだったんだけどさぁ、距離置かれてる感?みたいなのあるっつーか」



(そんなもんなんだ)



 初対面の人には反射的に、特に山本さん系のイケてるグループの人には無意識的に敬語を使ってしまう。



(自分の中で、線引きしちゃってたのかも)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ