初めての男友達
「えーと⋯俺、距離なんて置いたっけ?」
⋯はい?
「別にそんなつもりはなかったんだけど⋯そうだっけ?つか普通にこれからも話しかけるつもりだったんだけど」
「えっ⋯!」
じゃあもしかして、私の早とちり!?
⋯死にたい。
顔が熱い。鏡なんか見なくても顔が真っ赤になってるんだろうなって分かる。
「でも西澤がそういう風に思ってくれてたって言うのは知らなかったなぁー?」
「⋯からかわないで」
「で、さっきのって告白?」
こ⋯告白!?
「そんな、こ、告白って!!そんなわけないじゃん!私はただ人として⋯!」
「人として好き、と」
「⋯何かそんな言い方されると何か何というか⋯」
「まぁまぁ、これからもいっぱい話しかけてやるからさ」
だってそう言ってたもんね?とでも言いたげな顔。
(もう嫌だ忘れてほしい⋯!!)
「⋯私戻る」
「ごめんてごめんて。だって俺西澤には嫌われてると思ってたからさぁ」
「嫌われてると思ってたのに話しかけてきたの?なんで?」
「まぁ特に意味はねーけど、何かちょっと面白そうだなー的な?」
私の何が面白そうなんだろう。変なひと。
「じゃ、よろしく、友だちとして」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯うん」
「何だよ今の長い沈黙。あ、もしかして友だちじゃなくて彼女にな⋯」
「なわけないでしょ!松谷くんのこと、人としては普通に⋯いいと思うけど、恋愛とかそういうのはありえないから!」
私は優しくて友だち思いの人が好きなのに。松谷くんは、正反対だ。いくらイケメンでも、人気者でも、やっぱりそれはありえない。
「あっははは、全否定かよ!まぁいいや、西澤は俺が初友だちなんだもんなぁー?」
「中学のときは友だちいたから」
「じゃあ初の男友達ってことで」
⋯その通りだよ、その通りだけどさ?
(男友達いなかったって決めつけないでよね!)
「じゃ、まぁよろしくね、凛」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯う、うん」
しれっと名前呼びできるあたり、松谷くんは結構女慣れしてるんだろうなー。
*
「凛」
「あ、はい」
「帰ろうぜ」
⋯え⋯帰る?一緒に?
「えーと、それはちょっと⋯」
だって皆の目とか気になるし⋯
「あれ、俺ら友だちじゃないっけ?」
「そ、そうだけど⋯ほら、えっと松谷くんのこと好きな女子とかに見られたら誤解されちゃうし⋯」
大分大まかに言ったけど、本音である。
山本さんの件もあったし、正直周りからの目が怖くないってわけじゃない。
───だとしてもその上で、仲良くなりたいって思ったんだから。
でもなぁ、さすがに一緒に帰ってるとこ見られたらなぁ⋯と揺れていると。
「凛、そういうの気にするタイプなんだ?」
「誰でも気にするよ」
「本当女子ってめんどくせーなぁ、誤解されたら解けばいいだけじゃね?」
⋯何と言うバカっぽい発想。
でも、松谷くんのどや顔を見てると何だか気が抜けて、私は頷くことにした。
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