学級委員
「あの⋯」
「ん?」
「お、お昼⋯お昼の授業って何でしたっけ」
「えっと⋯古典だと思うけど」
「ありがとうございます!」
*
あーあ、またやっちゃったよ⋯
高校生になって、はや一週間。
既にグループができてしまっていて、出遅れた私はお弁当すら1人で食べるしかない。つまりはぼっちだ。
(入れてって言おうと思ったのにな⋯)
教室で1人で食べる勇気はないので、仕方なく隣の空き教室に行く(余計みじめな気持ちになるのは承知である)。
1人の姿をクラスメートに見てもらえば、誰かが誘ってくれるんじゃないかって、それも考えた。でもそんな同情心から付き合ってもらっても嬉しくないし、それは私のプライドが許さない。
「⋯ぼっちなりのプライドってやつかなぁ」
*
「今から学級委員を決めるぞー、やりたい人いたら手あげて。推薦したい人でもいいし」
担任の竹田先生がそう言うのを、私はぼーっと聞いていた。どうせこういうのは目立つ人が人気投票で選ばれるって決まってるから───。
「⋯」
「いないようなら先生が勝手に決め」
「はいっ!蒼クンがいいと思います!」
手をあげたのは河原くんで、「蒼クン」と言うのは松谷蒼くん───かっこいいと評判の───である。もちろん私とは何の縁もない人だ。
「女子は?」
一気にみんなが黙りこくる。
誰もやりたくない上に、友達を推薦するのも気が引ける、というのは私も何となく分かる。
「⋯西澤さん、どう?やってくれない?」
えっ?
私は学級委員なんて柄じゃないし、中学生のときは立派な委員を任されたことすらないのである。任されるはずがない───そう思い込んでいたから、予想外の出来事に驚いた。
私は確かにぼっちではあるけれど、いじめられてるわけではない(と思う)ので、そういうつもりでもないだろう。
それに何となく、思い当たる節がないこともない。
入学後テストで学年3位を取ったのだ。
「他に意見なければ、西澤にお願いするけど。西澤、いいか?」
ここで嫌だなんて、言えるはずがない。この「いいか」は、ほとんど押し付けに過ぎない。
(松谷くんと一緒かぁ⋯)
内心嫌だなぁと思いつつも、私は「はい」と頷いた。
「早速今日の放課後集まりがあるので行くようにね」