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作者: GreenDog

僕は彼女の事が好きだった。今までは、見た目とお似合いの子供のような仕草に、愛嬌を覚えているだけだと思っていた。正直、感覚で生きてるだけの他の女達との小さな、それは小さな一言を何日も気に留めている彼女に多少の鬱陶しさを感じた事もある。ただ、それを不快だと、いちいち愚痴をこぼすたびに、関わらないでくれと思うことはなかった。

友人たちには幾度も、彼女はお前に気がある。大丈夫だとそそのかされていた。そもそも、僕が好意を寄せているなんて一度も話したことはない。強情な奴らだとさえ思っていた。

しかし、彼らはそうは間違ってはいなかった。いや、実際はその当時は好きという自覚はなかったのだから、間違いでもあるのだが、今はそう強く否定できない。彼女は、その幼稚で、純粋で、まるで彼女のお気に入りの真っ白なスカートのように尊かった。

ただ、その日は彼女に少しの曇りがみえた。曇りと言っても、落ち込んでいる様な感じではない。なんとなく、いつもの、彼女の幼さが感じられないのだ。

その原因は、なんとなくわかっていた。それは、悠々と、不味そうに安いウイスキーを飲むあの男のせいだ。他の皆は、友人と集まってただ賑やかに、他の人よりも酒を飲むことに精をだすこの大学独特の雰囲気のせいで気づいていないが、彼は、彼だけはここにいてはいけないはずなのだ。彼は楽しむということを知らない。そんな奴にここにいられるのは周りにとってもよくないはずなのだ。

少し話が逸れたが、彼女はそんな場違いな男と、酔いを覚ますなどと言って外で会話していた。いや、実際にそれを僕が見ていたわけではない。男の方は、彼女よりも先に、タバコを吸うと言ってこの場を出て行った。その後を、少しして彼女が、外の空気を吸うといって出て行ったのだ。何も、タバコを吸うような男と同じ時に出なくても、と思っていたが、彼女はそういうことにも無頓着なのだ。

彼女たちが出て行った間は、僕は彼女達付き合ってるのだと、取られていいのだの沢山の質問をされた。そんなわけはない、そうだとしてもいいだろうとあしらってはいたが、どうも気にかかってしょうがない。まさか、あの男が、彼女を相手にするとは思えないし、そうだとしても彼女があいつに惹かれるなんて思えない。いつかカマでもかけて聞いてみたいが、そうしてみたい自分さえ嫌に感じる。

その後少しして、彼らはコンビニの袋を振り回しながら戻ってきた。彼女は僕に、アイス、といってにこやかに白くまのアイスを手渡した。その後も、せっせと他の人にも配っていた。その時、ふわっと、タバコの匂いがした。それも、いつものあの男と同じ匂いだった。

僕は心底、不快だった。よりによって、あの男の匂いだ。あいつは、彼女の親切もめんどくさいの一言で片付けるような男だ。あいつは、あいつの無神経な言葉が彼女の心にどんなに響くか知っていながらのうのうと行ってのける奴だ。そんな、そんな奴に、彼女は懲りずに笑いかけている。今も、僕の目の前で。


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