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分けた精神が接合に至るまで  作者: 大神祐一
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外も危険がいっぱい2

アクセス有り難う御座います

 周りを囲まれ逃げ場がない。木の上に登るのは予測される可能性があっても、地面に潜ればどうだろうか。あちらさんが地中で呼吸を可能としない限り、この発想はすぐに出てこないだろう。

 

 僕も地面に潜ったことはない。危険な発想ではあると思う。でも、ぬかるんだ地面であるということで僕には大丈夫だという確信があった。地面の中の水分量は充分にあるはずだと。それに逃げ場は下にしかないし、アメーバの危機反応は特になかった。

 

 初期では仮住まいとしていたはずのアメーバだが、今では肉体と精神が強く結びつつあった。アメーバの魂は僕に上書きされないよう保護してある。

 そのお陰でアメーバ自体の危険行動はアメーバの口から直接教えてくれる。まだ僕には人間の感覚が大部分を占めているため、人間として生きてきた行動をそのまましてしまうと、アメーバを危険にさらしてしまう。アラートがあるからこそ生物として危険な行為を躊躇できるのだ。

 

 時間もないことだし、地面に潜ろう。

 柔らかい地面に簡単に沈んでいく。隠蔽するために魔力を極力抑え込み、周辺と溶け込むように魔力の質を擬態させる。水槽の中での魔力操作トレーニングによりこれぐらいは出来る。あの少年にばれないように必死だったというのもある。

 

 潜る過程で穴を塞ぎ、3mほどだろうか、潜ったあたりで1回止まる。呼吸が出来る確認をする。

 クローン操作するにも魔力は僕から流れるので、ただ流れてくる情報を受け取るだけにしておいた。相手の詳細な映像を見れる訳ではなく、位置情報ぐらいしか分からない。その情報によると何体かこの真上にいて、他は周辺をあちこち動き回っている。きっと僕を探しているのだろう。ということは地面にいることは気付いていない? 気付いているなら呼吸が苦しくなり地上まで上がってくるのを待っている?

 少しずつ潜りながら、相手が去るのを待とう。ここまで来たなら潜ることで地面が盛り上がったりすることは減るだろうし。


 地中の中には多くの生き物が住んでいる。微生物、幼虫、ミミズ、アリなど小さいのからネズミやヘビ、モグラなどの大きいものまで幅広い。光りが差さない場所なので、目は退化するかわり熱などを感知したり、音を振動として察知したり、巣を造りそこに掛かった獲物を捕食したり、独特な生態をする。

 

 潜っている間に地上の大木に張り付けておいたクローンに群がるのがいたので、疑似核を使いエナジードレインを使った。クローンから吸収したエネルギーの余剰分をリンクしてある本体に流れさせる。いつまでも流れるくるので一旦止めると、そのクローンが落ちたっぽいのだ。木のエネルギーを折れるまで吸い付くし、その辺りの空気に含まれる魔素まで吸ってたかもしれない。となればその周辺だけ不思議なサークルを形作っていてもおかしくない。

 でも、そこに目がいくようになったと思えば結果オーライか。

 

 やり過ぎてしまったことを一先ず置いといて潜る作業を続けると、トンネルに繋がった。

 地下鉄のようなほぼ直線的なもので、なおかつ幅が広い。人間の子供位なら通れるのではないだろうか。

 

『キシャーー‼』


 そこに現れたのは40㎝ほどある蟻だった。その蟻が6本の脚をガサガサ動かし僕に向かってきて、口にある大きな2対の鎌を広げて襲いかかってきた。


(でかい‼ ここは蟻の巣か? もしかしてこんなのが万匹単位でいたりするのか?)


 とんでもないところに来てしまったかもしれない。とりあえず避けて攻撃しようとしたが、僕の物理攻撃は御察し下さいチンケな攻撃なんです。硬い殻に覆われた蟻には全く効かなかった。

 

 蟻はスズメバチ科に属しており、姿はとても似ている。性格は凶暴で獰猛。軍隊のように大軍で敵を殲滅する。毒針の代わりに強力な酸を吐き出す。強靭な顎は簡単に獲物を引きちぎり、食物連鎖の上位にいてたりする。まして、この蟻はとてつもなく巨大だ。

 

 そして僕は口から突き出た鎌に引き裂かれ、一部分を喰われた。

 痛いかと思ったがそうでもない。痛くはないが他者にされると腹立たしいし、喪失感がある。喰われて気持ちのいいものではない。

 喰われたものには疑似核がないためにエナジードレインは出来ないが、増殖させることは出来る。

 結局僕には攻撃オプションがこれしかないのは問題だなと思いながら、喰われた一部に魔力操作で細菌を活発化させる。

 

 水槽で嫌というほど細菌を味わったので、アメーバの体には細菌の仕組みを取り込んである。細菌は自動修復能力を持つので破壊されるくらいでは死なずに復活するし、餌や水という環境が揃えば無限に増殖するのだ。

 なんて恐ろしい。ガクガクブルブル。

 だが、なにより恐ろしいのはその増殖スピードだ。僕の魔力を加えた最高の環境下であれば秒単位で増殖を繰り返す。だからこんなことを考えている間にも蟻の腹部は膨れてきた。

 

 傍目から様子を伺う僕に、蟻は苦しみのあまり奇妙な踊りを披露する。そして目が飛び出て、触覚が千切れる。腹は裂け、脚は弾け飛ぶ。魔力操作で休眠させて増殖止め、疑似核を作り蟻の内部に埋め込み、僕は全て美味しく頂きました。



 ※



 レベルアップの話をしよう。

 人の細胞は使われることで破壊される。壊れればより強い細胞に生まれ変わろうとする。これを超回復と呼び、筋トレはこの超回復の時間帯に筋トレを行うことでより強い筋肉を目指すことにある。

 

 これは頭脳も同じで使用することで疲労させ、回復を得て以前より働きを向上させるのだ。

 スキルもそうだ。前日は自転車に乗れなかったとしても、翌日には乗れるようになることがある。これは睡眠時に脳の回路を太くし、記憶を強く定着させるのだ。

 

 レベルアップするならダウンもする。使わなくなったものは廃れていく。

 人も含め生物はアップとダウン、進化と退化を使いながら環境に適した体と能力を手にする。


 この異世界では、レベルアップ条件に吸魂がプラスされる。倒した魔物などの魂を自分の糧にするものみたいだ。これに気付いたのは蟻を倒した時にアメーバに起こった異変だった。


 体が熱く上手くコントロールが出来ない。体が溶けるように消え、また新たに作られていく。


(このタイミングで進化か…)

 

 倒された蟻は仲間に緊急事態コールを送ったのか、大量の蟻の軍勢がこちらに行進してきたのだった……。




最後までお読み頂き有り難う御座います

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