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分けた精神が接合に至るまで  作者: 大神祐一
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外も危険がいっぱい

アクセス有り難う御座います

 少年の家は小高い丘の上にあったようだ。草原の下には村が見える。

 山から川が流れ、周りには川から水を引いた貯水炉に田畑。家畜に毛むくじゃらの牛に似た四足獣、尾と脚が長いダチョウのような鳥類。一階建ての家がまばらに建てられていて、地面を踏み固められて造られた道が家と家を繋いでいる。綺麗に舗装された道ではなく、何度も人が通ることで出来た道。

 女性と小さな子が田畑で農作業をしていて男性は見られなかった。農作業は力作業のはずなのに何故だ? 他の仕事に駆り出されているのか?

 

 石造りの階段を降りればその村に行けるが、今回は止めておこう。見た目スライムで言葉を話せない。相手の言語を理解出来ない。これはトラブルが起きる予感しかしない。

 川の上流を目指して山に向かうと男衆と鉢合わせする可能性があるし、やって来た方向――少年の家を迂回するように遠回りして山を目指そう。

 そして僕は移動を始めた。



 ※



 こちらからの山の麓は森になっていた。じめじめした空気にぬかるんだ地面。背の高い大木に周りを草木が覆う。侵入を防ぐように上下左右と枝がつきだしてくる。人なら地面に足をとられ、枝を折って道を進むだけで重労働だろう。

 それにあちこちに強い反応がある。逃げるのも戦うのも厳しい場所で襲われたらひとたまりもなく殺されてしまうだろう。

 僕はその点では小型だし自分の重さで沈むことはない。枝もまだすり抜けられる。いざという時に逃げるのは苦にしないと思う。


 複数の反応と接触しそうだ。

 向こう側もこちらに気付いているのか、僕を囲むように連動している。2人1組で数は6組。

 最初のアクションは向こうからだった。矢が何本か飛んでくる。誘導が目的か、当てるというより道を塞ぐためだろう。他の組はそれを意識して行動しているように感じる。

 近づいて見れないが、矢尻は銀色に輝いている。何かの金属を加工できる種族? 牽制して誘導する戦術とその矢の技術力と加工力に僕に焦りが出る。

 一応クローン数体をレーダー代わりに大木に張り付けて置いていたので、詳細は分からないが敵は息を潜めて気配を絶つように進んで来る。僕の感知は精神や魂の反応を探れる。死なない限り見失うことはない。と思いたい。たぶん村の人達の魂の種類から察すると、こいつらは別の種族だ。

 僕を村の住人と間違えている? 捕まったら尋問か人質にしようと思っているのか? 僕は他種族同士のいざこざに巻き込まれているのか?

 これは僕の勝手な推論だ。村に男性が全く居なかった事実とこいつらの集団での戦闘行為からの推測だ。狩りをしているなら矢を直接当てればいい。話し合いには物騒だし、僕を逃がすつもりはないようだ。

 矢が3本飛んできて僕の前と左右の地面に着弾する。矢尻に付与された魔法か、それと同時に風が巻き起こり僕を後ろに飛ばす。僕の体は風に飛ばされ地面を転げる。感知を使うと6組がかなり接近してきていた。

 アメーバのこの体は凝縮しているが強度は良くない。剣による切断に弱く簡単に切られ、ハンマーなどの殴打で潰される。炎や熱、冷却などの魔法に対して抵抗出来ずに滅される。

 だからまだこいつらと戦うには時期尚早だ。ここは逃げる。情報収集のためクローンは置いたままにしとくとして、どうやって逃げるか?

 周辺は囲まれている。一部を突破するには耐久力が足りないし、奴等はここの地形に慣れているだろうから、逃げてもすぐ追い付かれる。大木を伝って上に逃げるか? 撃ち落とされる予感がするからあまりしたくない。

 僕はこのアメーバに愛着を持っていた。少なからず僕はこのアメーバに救われたのだ。だからこのアメーバを捨てたくないし、死なせたくない。僕だけなら相手に乗り移ればいいだけなのだ。 でも、その選択はしない。アメーバと共に行き強くなる。

 

 僕は最善である方法を選択し実行に移した。



 ※



 人は考えの違い、種族の違い、宗教の違いで争いを起こす。この世界で宗教の違いは大きい意味を持つ。

 人はこう考える。

 神は絶対であり、全知全能である。それ故に降りてきたお告げはとてつもなく正しい。

 神は一柱。他は偽物を語る不届きもの。邪神だ。

 いや、邪神ですらない。神は一柱。神ではない悪魔だ。それを信仰するものは悪魔であり魔族だ。


 宗教の違いは戦争を起こす。相手は魔族、こちらが正義だと。

 

 森で"彼"を囲み捕らえようとしていたのは、人から魔族と呼ばれている者たちだった。彼らは山に住んでおり、人からの襲撃に備えて見回りをしていたのだ。

 森に何かが1体入り込んだ。ヒューマンらの陽動かもしれない。可能性は少ないが工作兵ということもある。それに発する魔力から放置するのは危険だと判断し、捕獲するために万全を喫した。

 見回りを他の隊に任せ、実力のある者で12人選抜した。2人1組で行動させた。無理はしないように厳命し、遠目からの矢での牽制で誘導する。

 囲むところまで順調だった。

 だか、その侵入者は忽然と姿を消したのだ。

 気配は完全に無くなり、私は、私たちは唖然とした。

 まるで幽霊を相手にしていたかのように……。

 

 

最後までお読み頂き有り難う御座います

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