星空
路地裏に着いたわけだが……。現在時刻は深夜2時。良い子はとっくに寝ている時間だが、ここにいる4人は生憎不良だ。不良グループ「天壊途」の副リーダー花巻夕哉。そしていかれた仲間たち。コケ、ウェヒェ、ファチョ。コイツらは何故不良なんかになったのかよくわからない。優しいし、能力もあるし。笑い方が気持ち悪いというだけで居場所を無くして辿り着いた所が不良だったんだろうな。リーダーは弱きを助ける。きっとリーダーに拾われたんだろう。その姿に憧れたのだろう。
そんなリーダーからの命令というかお願いで、この路地裏までやって来た。
「さて、どうしたもんかな」
進むしかないのはわかっているが俺は普段なら寝ている時間なわけで(冒頭で格好つけたけど)こんな暗いと怖い。近くに街灯なんかなくて、この路地裏の正面にある自動販売機の薄い光が路地裏を路地裏たらしめている。まるで獲物をじっと待つ怪物のように、誰もが寝静まった夜に出歩いてる愚か者を喰らわんと、大口を開けて佇んでいた。路地裏の奥から足にまとわりつくような冷風が漂い、ブルっと震えが込み上げる。
「コケ!」
「ウェヒェ!」
「ファチョ!」
急にでかい奇声が三つ上がった。
「うおぉい!?なんだよ!急にデケェ声出すんじゃねぇ!」
本当はキモさに驚いたのだが正直に言うとへこむので、でかい声でビビったという風にフォローしておいた。どうしたのかと思ったら俺と同じようにブルっときたらしい。それだけでいちいち面倒なリアクションを取らないでほしいのだが……。
とにかく奥に行ってみることにした。噂では高い建物が目印らしいが今のところ塀が左右に在るだけだ。そして前後に過去と未来が、上を見ればなんと満天の星空が広がっているではないか。しかし、塀がなかなかの高さで見えづらいな。目的地は開けた場所らしいので楽しみだ!
ともあれ路地裏はあまりにも迷路だった。夜の暗さも相まってか何処を進んでいるかも分からないような状態だ。星の灯りは高い塀に阻まれて人間には届かないのだ。ふと後ろを振り返ると誰も居なかった。どうりで静かだと思ったんだよ。何故はぐれるのか不思議でならないが曲がり角で振り切ってしまったらしい。来た道を戻ると何か落ちていた。一円玉。一円玉とはケチくさいがそれが沢山、一定間隔で落ちているとなると拾わざるを得ない。心細さを埋めるために俺は一円玉の道を追いかけた。
スマホの灯りがあることに気が付いたのは現在時刻を確認しようと電源をつけた時だった。盲点というか間抜けというか普通見逃さないようなミスだ。やはり暗くて怖いから冷静さを欠いてしまったのかもしれない。因みに時刻は2:47だった。何故わざわざ丑三つ時に来たのだろうか。甚だ疑問である。
一円玉を集めてると、もう百枚集まっていた。そして一円玉が途切れていた。どうやら金が尽きたらしい。五円玉にすれば良いのに。そんなことを考えながら曲がり角を左に曲がると、そこには寝転がる三人がいた。
開けた場所に出た。この三人は星空を眺めているのか。確かにこの場所なら大三角だろうが天の川だろうが見えるだろう。俺は空気を読んで静かに三人の隣に寝転んだ。そして視界いっぱいに星が踊った。赤青白黄。鮮やかに、真っ黒なキャンバスを彩る。それは宇宙。宇宙を感じられる時間が夜だ。路地裏の奥には正しく夜があった。闇があり、星があった。その空間において深夜三時に起きている花巻夕哉は正しくなかった。
復活の舞い( ・_・)ノΞ●~*