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Sunny world after the world end  作者: 琉乃
3/7

日常

(ФωФ)ノΞ●~*

 僕は考えていた。日常とは何かと。日常は人それぞれにある。日常、それは穏やかな日々。ある一定の生活ランクを保って過ごす日々。日常は変化する。常とか言っているけれど変化する。何かが起きたとき、これも日常だと許容したならば、その日常は前まで続いていた日常ではない。日常は階段のように変化する。これを階段型の日常としよう。しかし、変化が階段よりも早く大きい人がいる。それがエレベーター型だ。この日常を過ごす人は、例えば宝くじに当たったり、いきなりホームレスになったりするのだ。だが、エレベーターの電力はその人の持つ運によって決まってくる。人生のいずれかの地点で生活の質が昇華するか暴落する。二度目は無い。しかし上がったからといって下がらないという訳ではない。階段やエレベーターはあくまで人生の途中にある通過点である。これは生まれ持った、現代社会を生きるうえでの能力なのかもしれない。


 と、そんなことを意味も無く考えていた。あるいは妄想していた。特に意味も無いのだが。とにかく今日は土曜日だ。そして現在時刻は六時。朝だ。昨日は謎の女の子が浮遊して普通じゃなかった。混乱している。ちなみに謎の女の子、詠華さんは家に泊まった。昨日の夜はご飯を三人で食べ、春月と詠華さんがお風呂に入り、その後僕が入り(残り香を楽しんだりなどしていない)、お風呂から上がった僕はそのまま寝た。部屋は余っていたので一つを詠華さんに与えた。ちゃんと夕飯前に案内しておいた。喜んでくれたようだったのでなによりだった。

 朝ご飯を食べなければ。僕はリビングに向かった。途中、詠華さんの部屋があった。起きているかなと思い、ドアを開けると、まったくもうベタなことに着替えをしていた。しまった。ノックぐらいするべきだった。ベタなことに僕はそれを後になってから気づいたのだった。

 詠華さんが着替えてるところを見てしまったのだが、鑑賞時間は一秒にも満たない。そもそも今見たのは詠華さんではなかったかもしれない。状況を整理しよう。まずドアを開けると女の子と言われる姿のナニカがパジャマらしき物を脱いでいる途中であった。そのパジャマらしき物は春月が前に着ていたものっぽかった。ちょっといかれた目をしたクマさんのプリントがされたパジャマっぽいというのは昨日見た気がする。そのパジャマらしき物の下にはTシャツを着ていた。脱いでいる途中でシャツが少し上に引っ張られお腹の辺りが見えていた。彼女はどうやら下を先に着替えたようで既にスカートを穿いていた。スカートの色は黒。膝の上ぐらいまでのやつだった。そんな彼女は身長一五〇㎝ほどで小柄だ。体重不詳。年齢不詳。性別はまあ女性なのだろう。髪は黒くて長い。顔立ちはとても綺麗だ。そして彼女の目は僕を捉えていた。


 謝ろうと思って詠華さんの部屋の近くでうろうろしているとドアが開いて詠華さんが出てきた。服装は外出するときに着るもののようであったが似合っている。小柄な体に合っている。そこで僕はこう聞いたんだ。

「How old are you?」

 ってね。そしたらこう答えたんだよ、彼女は。

「I am five to sixteen years old.秋月さんが自分というものを確立したのが五歳くらいだとすると五歳以上秋月さんの現在以下の歳です。ちなみに私はこういう曖昧な年齢なので範囲内の歳に対応した姿になることが出来ます」

 なるほど、僕に対応した年齢なのか。

 「あの、さっきはすみませんでした。悪気があったわけではなくてですね、起こそうと思いドアを開けたらあのような結果になってしまいまして」

 忘れていたがきちんと謝った。謝ったぞ僕は。

 「別に謝ることはないですよ。家族ならあることだと思いますから」

 彼女はどうやらこの家の子になったらしい。彼女は淡々と喋るので、僕の方も謝意は薄まった。

 「ところで秋月さん、「ちょっと気になったのですが詠華さん」はい?」

 こほん。

 「僕達は現在兄妹という関係なのですよね」

 「はい、そうですけど」

 それがどうかしたんですか?と詠華さんは首をかしげた。新たな妹というのも甚だ疑問なのだが、僕が気になったのはそこではない。それについては昨日の内に既に慣れていた。受け入れがたい状況だというのに。圧倒的に非日常といった感じであったというのに。残念なことに僕は一般的な情緒やら感性は失っていた。

 気になっていたのは、「兄妹ならさん付けはいらないのでは?」ということであった。

 「それもそうですね、秋月」

 いきなり呼び捨てに変更できるんだ。すごいな。うん、これは負けられないな。

 「そうだよ、詠華」

 こちらも呼んでみた。なんか照れる。すると何を思ったか、

 「秋月、」

 無表情で名前だけ呼んできやがった!くっ、負けてたまるか!

 「詠華」

 こちらも無表情、どころか生気さえ失った鬱病患者みたいな顔で応えてやった。すると、

 「朝ごはん食べましょう?」

 キョトンと首を傾げながらそう言った。

 呼び合い対決は既に終わっていた。というか始まってすらなかった。さて朝ごはん。突然ですが皆様にご紹介。うちの猫。セリエル・ミラージュ・渡月鏡(とげつきょう)。猫とかエルとかミラとか猫とかって呼んでる。ちなみにメスだ。

 渡月鏡は家の外にあまり出ない引きこもり系猫である。その昔、近所に住んでいる僕と春月の幼馴染に殺されかけて以来、渡月鏡は窓から憧れと恐怖の眼差しを外に向ける系猫になってしまった。殺されかけたといっても故意に殺害しようとした訳ではなく、偶然が重なって渡月鏡に「殺されそうになった」という印象を与えてしまっただけなのだが。しかし、最近は玄関を出て家の周りをぐるぐる出来るようになってきた。それは時々訪ねてくる御近所さん、リリエル・フロン・フィナフトのおかげである。


 リリエル・フロン・フィナフトは……何だろう。少なくとも人間ではない。神、天使、魔王、悪魔、宇宙人、妖怪、天皇、大統領、首相、社長、ホームレス、アメリカ人、イギリス人、鳥類、植物、貴金属。どれでもない。形はあるが本質は未知。人形、というのが一番近い。

 話してみると印象は20代の女性だが、その外見は人間離れしているというか神々しいというか。「この世のものとは思えない」は言い過ぎだが、「女神のようだ」は言えるだろう。女神もこの世のものではないし、誰も女神を見たことなどないだろうが、表現としては後者が妥当なのではないだろうか。尤も「彼女は僕の心をかき乱す悪魔だ」とも言えるような外見と性格を持ち合わせているため、やはり全体的な印象は、20代の女性で、とても美しく、誰にでも明るく優しく平等で(モテない男性が勘違いしちゃうヤツ)、世の男性たちの理想の女性像という感じに落ち着く。ただ、それはあくまでリリエルの表面的な情報から導き出された結果を客観視したものに過ぎない。主観に立てば物事の印象など十人十色。そしてリリエルは人ではない。人間とそれ以外のもので千差万別が生じるのは自明の理と言えよう。

 彼女がどんな風に世界を見ているのかは置いておいて、最近よく渡月鏡と遊んだりしてくれている。渡月鏡はリリエルになついていて、昨日とかもゴロニャンして8の字すり寄りしてた。とにかく今日も平和です。

(゜m゜;)?

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