~序章その2~かくて彼女は異世界へ~
「・・・・・・随分物分かりが早いじゃないか、ここに来た人間は早々例外なく最初は自分の死を受け入れられないものなのに」
彼女の余りにも短い反応の一言に対し、【管理人】はまるでアテが外れて面白くないと言わんばかりに肩を竦める。
「それ、私がここに来る前に何を最後に何したか知らないで言ってる?」
「【旧式のボロ船使って海難事故と見せかけた自殺】だろう?、船舶の自動運転システムの試験云々と言って一人だけで乗り込んだ挙げ句の壮大な自殺、ホント、アンタ考えるときはトンでも無いこと考え付くよなぁ」
「私の立場が立場だったからねぇ、下手な死に方すると国民が大爆発不可避だったし、かといって平穏な余生を過ごそうと思うには私自身が危険すぎたし、あと、私の愛艦を旧式のボロ船扱いはちょっと私としては頂けないわね」
「おっと、こりゃ失礼、流石に二つの大戦争を生き延びた挙げ句、後世の歴史家、或いは私でさえ頭おかしくなりかけたキチガイ戦果を叩き出した武勲ある艦名高き戦艦を旧式のボロ船扱いは流石にご不満と見る」
「そりゃそうよ、私の軍人生活どころか、私の人生の八割近くが彼処に詰め込まれてるのよ?」
愛着があったのだろうか、自分の人生の最後を共にした船のことをボロ船扱いした管理人に不満を漏らすウォーダン、管理人も失礼をしたと判断したのか軽く詫びを入れる。
「さて、まぁ軽く話をしたところで、いよいよ本題といこうじゃないか」
「まぁ、そりゃそうよね、いきなりこんな所に来させられる訳だし、本命の話はあるわよね」
軽く話をして感じを掴んだのか、本題へと移る管理人、ウォーダンもまたその事を察していたのか次の話を今かと待ちわびるようであった・・・・・・
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「さて、話を本題に移そう、実は今回、アンタにはアンタが生きた世界とは別の世界、要するに異世界へと向かってほしいんだ」
「は?」
「おやおや、名高き【名誉元帥】ともあろうお方がこの程度のことも予測できなかったのかい?」
「・・・予測そのまんまの話が持ち上がったからいろんな意味で驚いてるだけよ、んで、それまた何で?」
それまで見せなかったウォーダンの呆然とした顔を少し嬉しそうに見つめながら、管理人はウォーダンをからかう。
「・・・・・・異世界なら、君が生前、老後に望んでいた【平穏な余生】とやらを過ごせるだろう?、とウチの上司が話をぶち上げてきてな、まぁ何だ、よーするに神様が【異世界で彼女に第二の人生エンジョイさせてあげて】と言ってきた結果だ」
「ちょっと待って、要するに私に第二の人生をくれると言うことはよくわかったけど、話に出てる神様と管理人であるアンタになんの違いがあるの?」
「・・・・・・申し訳ないが、それらを説明するわけには行かない、まぁ本気になって考えれば答えはすぐ解るだろうが・・・」
「・・・そう、まあいいや!んじゃ話にあった第二の人生に関して教えられるだけ教えて!」
話を聞いた彼女の指摘への管理人への返答を聞いた彼女はそれ以上の追求を諦めると、すぐに気を切り替えて先程の管理人の話に飛び付いた・・・・・・
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「んじゃ異世界行きについて、だ、と言ってもすることは決まってるんだがな」
「・・・?何をするの?」
「こうするのさ!」
異世界行きについての話を聞くために話に飛び付いたウォーダンであったが、管理人は話をする前に彼女の足元に奈落の落とし穴を生成した。
しかも彼女はなぜか自分の体を動かせない、これはどう考えてももうすぐ落ちるヤツである。
「ちょっ!」
「それがどの世界のどんな場所に繋がってるかは分からん、だが、【比較的平穏な場所】に飛ばされるようにはなっている」
「ちょっと待って説明は!」
「到着先にてアンタの手元に持たせておいとく紙に転移したアンタの状態に関しては色々と詳述しておく、と、言うことで達者であってくれ」
「まだ聞いてないことが沢山ってワーッ!」
有無を言わせず落ちてゆくウォーダン、そしてここから彼女の物語は始まりを告げる・・・・・・
【序章、終】
【第1章へと続く】
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主人公は次回から