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ライアンラヴァー  作者: TUBOT
カインとイツバ
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カインの部屋

 面倒な報告書の作成も終わり、私はカインとイツバちゃんの二人が住んでいるという部屋に行った。

「クリーヴァーって儲かるのね」

「ピンキリだ」

「あんたみたいなクソクリーヴァーでもここまで稼げるんだから、十分すごいでしょう?」

 さっきから不満そうな顔のカイン。私に一本取られて悔しがっているのだろう。いい気味である。

 カインとイツバちゃんが住んでいるマンションの前に来て自動ドアをくぐると機械の音声が流れる。

「おかえりなさいませカインコック・シルヴァリー様。ようこそ。ゲスト様」

 自動で網膜を認証し人物を判断している装置だ。カインは生意気にも高級住宅にある一等のマンションで暮らしているらしい。

「アインステナだ。住人登録」

「登録しました。アインステナ様。ようこそいらっしゃいました」

 カインの言葉でコンピューターが私の事を認証した。そして、自由に出入りできるようになったのだ。


 リニア式のエレベーターで上階に向かう。

 動きもスムーズで何より早い。地上百階にまで到達するのに十秒とかからない。しかもエレベーターが上がっているという重力感もまったく感じないというものだ。

 カインの住んでいるマンションは高級な最新式のエレベーターを使っている。カインのくせに生意気な話だ。

 廊下を歩くとカーボン製の床や壁。硬くて歩きやすいのに転んでも痛みのないという最新素材。温室育ちの人間はこういう所に住んでいるからナヨナヨになるのだろう。というのがよくわかる。

 カインが部屋の前の立つとドアが開いた。

「カインコック様。アインステナ様おかえりなさいませ」

 機械の音声がそう告げると自動的に扉が開く。

「ステナさん。いらっしゃいませ」

 中のイツバちゃんは私の事を待ってくれていたようだ。可愛いエプロンを着て私の事を出迎えてくれた。

「お祝いのケーキを用意したんですよ」

「ケーキなんて久しぶりに食べるわね」

 イツバちゃんはそんなものまで用意してくれた。私はギリギリでやっている。そんなものを食べるなんて本当に久しぶりだった。

「コーヒーは俺が淹れる」

「苦くしないでくださいね」

 イツバの言葉に会釈をして返すと、カインはキッチンに向かった。

 リビングにイツバちゃんと一緒に向かうと、そこにはケーキがおいてある。

「お兄様に手伝ってもらったんですよ。かき混ぜるのは手が痛くなりますから」

 そういや、イツバちゃんはカインの事をお兄様なんて呼ばされているんだっけ。これはヤバい話だな。

「イツバちゃん。カインの事をお兄様なんて呼ぶのは良くないよ」

 私が言うとイツバちゃんはどんぐり眼で私の事を見つめた。やはり洗脳が行き届いているようでこの事をおかしいと思っていないらしい。

「妹に自分をお兄様って呼ばせるなんておかしいわよ。カインの奴オタクよ。それが普通だと思っていると、この先恥ずかしい思いするわよ」

「うちの子に変な事教えないでくれませんかね」

 コーヒーを淹れてやってきたカインがそう言う。

「もう来たの? ちゃんと淹れたわけ?」

 コーヒーを淹れるには時間がかかるはずなのに、もうできたのだという。

 私の前とイツバちゃんの前にコーヒーを置き、自分はケーキカットナイフを持ってきた。

「四つでいいか?」

 ホールのケーキを切り分け、私とイツバちゃんの前に出すと、カインはまた台所に戻っていった。

「一人二つづつですよ。アインステナさんがいらないなら私が三つたべちゃいます」

 意外と意地汚いイツバちゃん。イツバちゃんと山分けできるなんて夢のような話である。

「お兄様も『栄養管理』でしたっけ? そんな事なさらないで召し上げればよろしいですのに」

「そういうのがいけないんだ。一口が決壊の始まりになるからな」

「お兄様のそういうところ、分かりません」

 イツバちゃんをい悲しませてまでやる事とは思えない。


「最初に説明をしておくぞ」

 ケーキを楽しみ終えると、カインがお小言でも始めるような口調で言い出した。

「お前はどこかの組織に目を着けられている。それがどこかは分からない。ただ、お前に無関係の場所からいきなり狙われたわけではない」

「無関係よ。心当たりないもん」

「探偵なんてもんを生業にしておいて、恨みを買う心当たりがない方がおかしい」

 また何を知っているつもりになっているのか?

「探偵だったら恨みを買うなんて、いつの時代の話をしているの?」

「お前の捜査方法が十年前の代物だと聞くがな」

 また屁理屈を言い出す。何を言っても無駄そうだから聞いてやろう。

 カインが言うには、私はいつ狙われるかわからない危険な状態である可能性が高い。それは現在クリーヴァーが捜査している事件との関連性のある確率が高いため、クリーヴァーに仕事による保護の扱いになり、本部から支給品が受けられるという。

 そして、カインの許可と同行なしに外出をしない事など、厳しい制約がある事も教えられた。

「軟禁状態じゃない。来るんじゃなかった」

「お前から言い出したんだがな」

 カインは勝手な事を言う。こんな事まで頼んだ覚えはない。

「俺は買い物に行ってくる。イツバ。アインステナを頼むぞ」

「ステナ」

 カインの言葉に私は言う。

「ステナでいいわよ。一応、これからお世話になるんだし」

 私が言うとカインは小さく頷いてから買い物に出かけた。

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