手際の悪いクリーヴァー
クリーヴァーは私を見ると、すぐに拘束具を確認した。
「しっかりしてください! 何も考えないで! 余計な事を考えると電流が流れる装置です」
そんな事は分かっている。早くこいつを捕まえてカギを奪え。手際の悪いクリーヴァーだ。
「待て!」
手際の悪い事をしているから男が逃げてしまった。クリーヴァーは男を追っていく。
「ユーフォー!」
クリーヴァーの動きはまあまあといったところだユーフォーを使って男の進路をふさぐ。すぐにユーフォーは男に催涙ガスを振り掛けた。
男は目をつぶって息を止めて先に逃げる。
「こいつ何者だ? こんなものを手に入れられるし、クリーヴァーの装備も知っているらしい」
そんな事は後で調べればいいからあいつを捕まえろ。家屋の外にまでクリーヴァーは男を追っていった。
クリーヴァーの姿が消え、何もいなくなった後に私は残された。
まあいい。どうにしろ私は助かる。
男に逃げられるかもしれないが、クリーヴァーに見つけてもらえたのならいずれ助けが来るだろう。
そう考えると足に流れる電流は止まった。
あの状況で男を捕まえられなかったら、また屯所に苦情だ。
「いますぐ拘束を外します」
カギを持ってきたという事はあの男は捕らえたようだ。このクリーヴァーはそこそこ並のクリーヴァーだったようである。
「昼間の事は水に流してあげようかな?」
私は気づいていた。こいつは昼間に私の事をクズ扱いしたクリーヴァーだ。
「まあ、気づいているわな」
クリーヴァーは私の拘束を外すと手を取った。
「立てますか?」
気持ち悪い行動だ。こんな事で昼間の事が帳消しにでもなると思っているのだろうか?
「立てるわよ」
手を振り払うと私は立ち上がった。
「それでは屯所で詳しい聴取を受けていただきます。私のバイクに乗ってください」
被害者からは詳しい聴取をする。事件の概要を報告するためだ。
「常識は知っているようね」
「いつまで蒸し返す気ですか」
呆れたという顔で答えるクリーヴァー。
外に出ると、すでに空は真っ暗になり星が見えていた。
このエネルギー全盛の時代は田舎でも大量にエネルギーが消費されていて、空に星など、全く見えない。
星が見えるという事はここはど田舎からも遠い場所という事だ。
「何分かかるの?」
この男のバイクのケツに乗る時間も、かなりの長時間になるだろうと思うと気がめいってくる。
「三十分くらいです」
そういうクリーヴァーの後ろに乗った私はバイクに手足をガッチリと固めた。バイクも時速二百キロ出て空を飛ぶのである。バイクに固定をしないと危ない。
二人乗り用の固定具を持つのはクリーヴァーの義務であった。