クリーヴァーの出動
「アリシルちゃんをほうっておけない」
いままでの自分の行動を考えると、こう考えるのはおかしいと自分でも思う。
「まあいい。このクリーヴァーの命は助けよう。ただし、解放は計画が完遂されると確信できてからだ」
テリーヌはそういうと、アリシルちゃんのこめかみに銃を突きつけた。
「私達についてきてもらおう。ついてこないならこいつを殺すぞ」
そう言われ私はテリーヌのあとについていった。
「脳波の反応は全くない。気づかれてはいないようだな」
悠々とした態度のテリーヌ。悔しくはあったが、アリシルちゃんのためには従うしかなかった。
「あのアホ。なんでこういう時に逃げ出さない?」
私の体に発信機と通信機が埋め込まれていたらしい。
クリーヴァ-が相手の時、犯罪組織は脳波を調べる。だが電波は調べない。
隠密的な作戦の時には、クリーヴァーは電波を使って通信するのが常であった。
カインが食事に混ぜた発信機が、この時の私達の会話をクリーヴァー達に伝えたらしい。
「そんなものが見つかったら、確実に各国が取り合いになるな」
そんな強力なものが発見されたら、軍事利用をされるのは明白だ。世界の事を考えたら、本気でそのエネルギー物質を破壊する方がいい。
カインもそうは思った。
「あのアホを見殺しにできるか」
カインは言う。
『おいおい。お前あいつの悪口しか言っていなかったろう?』
通信でそう言われる。カインはいつもは理路整然としていて、質問にはすぐに返答なり反論なりする彼が、この時は答えに窮していた。
「なんでもいいだろう?」
「はっはっは。お前が初めて人間らしい行動をとったな」
そう言うと、相手のクリーヴァーは通信を切る。
「ふん。クローン人間を使って、理想の嫁を作ろうなんて、ずいぶん人間らしいと思ったがな」
隣にいるイツバを見ながら言うカイン。
「ステナさんの方が、私より好きですか?」
「お前、どこでそんな言葉を覚えたんだ?」
イツバが見上げながらそう言ってくるのに、煩わしさを覚えたカイン。
「事件後のあいつの世話も仕事のうちだ。アフターケアが万全なのが俺の売りなんでね」
カインはそう言った。
クスクス笑ったイツバ。
「でも、とられる相手がステナさんならいいかもしれません。手のかかる子ほどかわいいっていうのもわかりますよ」
「だから、お前はどこでそういう言葉を覚えてくるんだ?」
そう言ったカインは、すぐに空を飛んで現場に向かった。