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ライアンラヴァー  作者: TUBOT
過去と向きあう
32/37

決意

 普段の私なら、こんな事を言わなかった。だが、ここで言わないわけにはいかないとふと思った。

 自分のやれる事をしない。組織の事をしゃべろうとしなかった。

 この間にも、テロは起こされるかもしれない。テロでなくても人を不幸にするような事をしているかもしれない。

 全力で捜査に協力をしないといけないはずだ。

「屯所に帰ったら、私も捜査に参加させてもらいたいって言うわ」

 私が参加しようと言ったところで邪魔になるだけであるのは分かっている。

 でも言わないわけにはいかない。それができるのは、。私だけなのだ。

「あの組織を私が壊滅させる。たとえ、刺し違えても」

 ふと口からそんな言葉が出た。

 いままで自分はこの言葉を言いたかったのかもしれない。

 昔の自分を乗り越えるために、贖罪をするために。

「何を言っているんだろう? わたし」

 いままで、そんな事を言うなんて全く考えなかった。

 強く、気高くなりたいとは、いままでも思っていた。だが、今までのわたしに、そんな事は不可能だった。

 勢いで言ってしまった言葉だ。決意もないのに言った。笑い飛ばしたい気分にもなった。

「聞いたぞ。組織への反抗の意思ありだ」

 そこで、従業員の一人が言った。

「ステナ。ここが組織の経営している店だというのを知らないのか?」

 店員のかっこうをしていたテリーヌだった。格好だけではなく、本物の店員だったのだろう。

「店の奥に来てくださいますか?」

 ニヤリと笑ったテリーヌは言う。

 アリシルはユーフォーを使おうとするが、音楽を流す、店のスピーカーから甲高い音が聞こえてきた。

「屯所に乗り込んで使うつもりだったのだがな。ユーフォーを使えなくする音波だ」

「アリシルちゃんは解放してあげて」

 私は言う。テリーヌは驚いた様子だった。

 アリシルちゃんは、ユーフォーを使うことはできない。今の彼女はテリーヌにとって危険はないのだから解放だってしてくれるだろうと思った

「ダメだ。クリーヴァーを呼ばれたらたまらん」

 テリーヌの後に店員が数名。テリーヌの部下だろう。

 テリーヌとその部下たちに連行され、私は店の奥に案内をされていった。

 

「さて、何から聞こうか?」

 テリーヌは店の奥にある事務所と見える場所に私を案内した

 アリシルちゃんの額に光線中を押し付けた。

 強力なエックス線を発射する銃だ。外傷はなくとも、脳をエックス線で打たれて機能しなくなって死んでしまう。

「アリシルちゃん」

 あの光線を当てられたら人は死ぬ。

 あの孤児院で習った事だ。

「アリシルちゃんに何があるって言うの? そこまでする必要があるの?」

「死ぬのが少し早まるだけだ。私達の目的の達成の前には路傍の石ころ」

「目的って何よ?」

 いろんな人を殺してまで達成したい目的とは一体なんだろうかとも思う。

「この星を破壊する事」

 テリーヌは言う。

 だが散々話された事だ。何の意味があるか、さっぱりわからない。

「あなたのような組織から爆弾を仕入れようなんて思う国があると思う?」

「そう思っていたのか? 浅はかだな」

 テリーヌの返答は私が考えている事が全部分かっているような言いようだ。

「私達はこの星を救うため。世界を救うために行動をしているんだ。自分たちの生まれ育った星を、優しい嘘で包むために」

 全く意味が不明だ。何度もテロを起こし、人を散々殺してきたテリーヌ達に、どうこの星を救えるというのだろうか?

「あなたたち狂っているわよ! こんな事をしてこの星を救うなんて無理に決まっている! むしろこの星をこわしているじゃない!」

「そうだ。壊すんだ」

 テリーヌの言葉はさらに意味不明だ。

「我々の目的を話そうじゃないか。一度は組織から真実を教えられていた身だ。話せばわかる事だろう」

 テリーヌの言葉。私はテリーヌを見据えながら続きを聞いた。

「この星の中心には巨大なエネルギー鉱物がある」

 テリーヌは言う。

「それは、恒星系一つを吹っ飛ばすくらいの力が出せるのだ」

 それから話す内容は、私でも度肝をぬくようなものだった。エネルギー波が、恒星系を吹き飛ばした後も遠くにある恒星たちに影響を与える。

 今の微妙なバランスの上で成り立っているこの宇宙をかき回し、宇宙全土を破壊しつくしてしまうほどの力があるのだという。

「その昔地球では核爆弾が危険視された。国との対立のために核爆弾が大量に作られ、人間を十回以上滅亡させるほどの数の核を世界中が保有していた」

 だが、今回はその核爆弾の比ではない。

 周囲十キロに被害を与える原子爆弾。だが土地は残り、除染をすれば復興は可能だ。だがこのエネルギーが爆発したらこの星から始まり、宇宙全体に影響が広まる。

 その影響の結果、星々はぶつかり合い、重なり合って一つの大きなブラックホールになってしまうという見解の学者もいる。

「私達はこの星に生まれ数々の嘘が身に染みてきた。嘘を言われたし、嘘を言った」

 だからこそ、テリーヌは最後の嘘をついて、この星を壊し世界を危機から救おうと思って活動をしているというのだ。

「最後は我々が、この国を優しい嘘で包むのだ」

 テリーは優しい嘘と言った。

 この星が宇宙を壊す力を秘めている事や、嘘つきである星の人間を根絶やしにする。

 これがこの星を守る事であり、優しさであるというのである。

「アリシルちゃんを開放して」

「お前なら、自分が解放されるように望むだろうと思ったがな。人の心配なんかしないでなりふりかまわず逃げると思ったぞ」

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