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ライアンラヴァー  作者: TUBOT
過去と向きあう
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人をしあわせにするか?

 とにかく、私がいた組織は何をするのかわからない。

「だから、俺たちが調べるんだ」

 カインが言うにはそういう事らしい。まだ、何も分かっていないのだ。

「キリキリ働いて、私の事を助けなさい」

「そのつもりだ」

 その言葉を最後に、カインの報告は終わった。


 屯所の中の倉庫だったという部屋に私は案内された。

 事件が終わるまではこの部屋で過ごすという。

 自分が孤児院にいたころ、何を教えられたかを考えた。

 人の暗殺の方法ばかりだ。爆弾の扱いなんてまったく教えられなかった。末端にまで組織の目的を教えられるはずもないという事だろう。

 そして、私の体の中にある錬粒子の事。

 テリーヌが最後のドンパと言っていたが、いままでの自爆テロの傾向を見ても、特に一貫性はないと思われるとのことだ。

 暗殺かもしれないとはいえ、ビルごと吹っ飛ばすような方法を使う意味が分からない。

 もしかしたら被害者を多くして、暗殺対象を絞らせないようにしていたのかもしれない。

 そうなると、足取りを追うのや依頼主を洗うのも不可能だ。

 そして、テロ行為は一年前にやめているという事実。

 テロを請け負って金を手に入れているのが目的ではないという事だ。

 錬粒子にできる事は大きな爆発を起こすことだけだ。それで達成できる目的とは何か?

「その暫定的な結論は出ているけどね」

 軍事方面に錬粒子を売るという事だ。

 これは私の予測であるが、これから私の中の錬粒子を使って街の一つでも吹っ飛ばすようなデモンストレーションをする。

「いーやそれはありません。いくら強力な爆弾だったとしても、買い取るのは列記とした国家。テロ組織に金を送ってまで手に入れようとする国はないでしょう」

 ノックもせずに、部屋に入ってきたアリシルは言う。

「テロ組織もバカの集まりではないです。それくらいの事をは予測できるはずですし、街を一つ吹っ飛ばす方法なんて、人間が地球を這いずり回っていた時代から、いくつも考案をされていますよ」

 アリシルの言葉だ。

 強力な爆弾を作り出しても買ってくれるところがないという事だ。

 本当に何のつもりなのかわからない。

「何が目的なのかわからないと、対策も立てれません」

 結論は手出し不可能という事だ。だが、私が狙われているという事実ははっきりしている。

 屯所の中に隠れながら、カイン達がうまくやっていくのを待つしかない。

「私の同伴があれば外出もできるのですし、美味しいクレープでも食べに行きましょう」

 アリシルは話を終わりにしてそう言ってくれた。


 アリシルとまた外出した私。

 私だっていつまでもふさぎ込んでいるわけではない。

「ほんとに、早くカインも仕事をして、私を自由にしなさい」

「カインコックさん、かなりむっとするでしょうね」

 軽口を交えて言う。

「実は私もあの人、あんまり好きじゃないんですよ。イツバちゃんなんて引き取っているロリコンのくせに、言う事ばっか偉そうで」

「わかるわかる」

 ちょっと調子に乗りすぎかもとも思うが、陰口くらいだれでもやる事である。

 今はファッションの店に来ていた。

 探偵は、その場に溶け込んだ服装をしている必要がある。

 服装に特徴があり相手に顔を覚えられるなんて、三流でしかない。

「私こそ三流なのにね」

 そう考えるが、いまさら悔しさなんて沸いてこない。自分の技のすべてが否定されたのだ。

「ステナさん。探偵を人を救えますか?」

 服を選びながら聞いてきたアリシルちゃん。

「人探しの探偵なら機会があるかな」

 探偵にはいくつもある。私のように下世話な仕事ばかりが回ってくる者もいれば、行方不明人の捜索を主にしている者もいる。

 生死不明でどこにいるかもわからない肉親の居場所を探るのだ。

 生きている者を見つければいいが、遺体として見つかる事になっても、結局は肉親を救える。

「探偵が人のためになる。私はそんな事は考えなかったな」

 自分のスキルを活かして生きる方法が探偵だっただけだ。はじめから、幻想など持っていなかった。

 詐欺をした犯人を見つけたこともあった。

 詐欺師が金を持っているわけもなく、取られた金を取り戻す手段はない。

 見つけたところで誰も救われず、詐欺師が懲役になっただけで終わる。

 私への依頼料もあるし、結局さらに損をしただけで終わる。

「でも、あの人達は救われたのかも」

 詐欺の犯人を見つけ、恨みつらみを晴らすことができた。

 それだけでも、犯人を憎み続ける日々から解放をされた事が救いであるはずだ。

「いやいや、こんなの自己満足だよ」

 何か理由を付けて自分の事を正当化したいだけ。無理矢理意味をこじつけての自己満足にすぎない。

「いえ。自己満足ではないと思います。あんな奴らを野放しにできない。制裁を与えないといけない。そう思います」

「私に向けて言っているようね」

「はい。言っています」

 アリシルは言う。

 これくらいの恨みつらみを言われる事は、とうに覚悟していた。

「開き直っているんですか? あんなにテロ事件を起こした組織の一員で、ろくに情報も話さないで」

 服を選びながら言うアリシル。見ているだけなら、仲良く服を選んでいるだけに見えるだろうが、私とアリシルは、私の心臓を突き刺す言葉の応酬をしているのだ。

「私は逃げてる」

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