屯所へと
「お前はロボットじゃない」
カインはイツバの様子を見る。彼女はロボットなんかじゃなく、本物の人間に見えた。すぐにユーフォーを自分のところに戻す。
そして、自分の足で公園に向かった。
「イツバ!」
表情のない顔で絆創膏を見つめるイツバのところにカインは向かった。
カインは、イツバの事を抱きあげる。
イツバの顔を見つめると、自分の事を救ってくれた人造人間の事が頭に浮かんできた。
今思えば、あの人造人間の笑顔は、作られた笑顔だった。その事を思い出すと、これからイツバがどんなふうに笑ってくれるかを想像して苦しくなる。
「ご主人様」
抱き上げられて驚いている。照れている。うれしくて笑っている。
そんな、人間の複雑な感情を表現するような崩れた笑みを見た。
いままで自分を助けた人造人間に向けられていた恋心が、イツバに移っていった。
「少しずつ、俺と一緒に学んでいこう」
カインの言葉にコクリと頷いたイツバはカインの手を握り返した。
「屯所には私と同じようにして作られた行先もない人造人間が収容されています」
「ちょっとイツバちゃん。それを私に教えてどうしようって言うの?」
「余計な事までいいすぎだぞ。とにかく、イツバに会いたければ屯所に行けば飽きるほどみられるって事だ」
カインは話を締める。だが、イツバちゃんはまだ言いたいことが残っているようだ。
「過去から逃げないでください。何をしたところで帳消しにする事の出来るものではないのですから」
イツバちゃんは私の眼前に立った。
「そろそろ戦ってはいかがでしょうか?」
「いろんな意味があるな」
カインは言う。組織に立ち向かえとも、過去を捨てろとも聞こえる言葉だ。
「犯罪に立ち向かうのはクリーヴァーじゃない。私なんて足手まといよ」
「いいや、お前は重要な証人だ。お前も一緒に立ち向かうべきだ」
調べれば分かる事なのに、いちいち私の口から言わせるなんておかしい。
立ち向かうなんて言い方しておいて、結局のところ私をやり玉にしたいだけだ。
「いいわよ、屯所にでもなんいでも行くわよ」
この二人の保護下にいるうちは、いつまで経っても説教を言われる。屯所に行った方が幾分マシであるような気がする。