表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライアンラヴァー  作者: TUBOT
乗り越えられない過去
17/37

謎の集団

「裏切者の事を護衛するクリーヴァーか」

 その時、私の事を観察している者達がいた。

 私と同じくらいの年齢の女の子がリーダ格らしく、全員はその子の事を見て指示を待っている様子だ。

「こっちもクリーヴァーを雇うしかないですよ」

「だがな、信頼できるクリーヴァーならいいが」

 部下の一人の提案に答える。

 ユーフォを持つ人間に生身で立ち向かうのは無理がある。だが、自分たちの行動は違法だ。法の番人であるクリーヴァーに頼むわけにもいかない。

「信頼できる奴いますよ。法律だけが全てではないって分かっている奴が」

 部下の言葉にピクリと眉根を寄せた。

「同志か?」

「同志です。我々の事を知って仲間になりたいと」

 自分たちの行動も、ただの違法行為じゃないという自負がある。賛同をしてくれる人間も多い。

「任せてみよう」

 彼女の一存でそれは決まった。


「カインってのは何を考えているかわかんないやつよ」

 私はイツバちゃんと一緒になると、カインがいかにダメな奴かを説いた。

「あの、アインステナさん。どこでお兄様が聞いているかわかりませんから」

 そう言うが、それならそれで、カインが盗み聞きをするようなゲスであるという事がわかるというもの。

 そういうところがカインのダメなところである。

「イツバちゃんもいろいろ綺麗ごとを吹き込まれているようだけど、ダメよ。人は最後には一人になるものなんだから」

「そういう事こそ、教えちゃならない事なんじゃ?」

 イツバちゃんは、どうしてもわかってくれないらしい。そういう常識にとらわれるのがいけないのだ。

「普通の考え方をしているだけじゃ、大切な物を失うの」

 そうだった。私の昔の考え方は普通そのものだった。だからいろんなものを失ったし、奪われたし、新しく手に入れるのが怖くなったのだ。

「何も持たない事こそ本当の強さよ。失うものがあると人間は弱くなるから」

 何かを守っている人間は弱い。身軽に生きる事こそが一番だ。

「何かを失う事は悲しいだろうけど、何かを抱えて身動きが取れないままだと」

 そこまで言うと私の頭にある思い出がフラッシュバックしてきた。

 あれが私の原点だ。人を疑うのにためらいがなくなった原因が、あの一件にある。

 親友を助けようとした。

 だが、親友はそんなものは望んでいなかった。その場で死んでもよかったと思っていたのだ。ここで死ぬ事が自分のすべてであるとまで思っていたらしい。

 私はその想いを踏みにじった悪者にされてしまった。

 人の事を計る事なんてできない。私とまったく違う考えの彼女を見て、私はその当たり前に聞くその言葉の意味を、心臓に焼き印を押されるような感覚と共に刻みつけられたのだ。

「何かを抱えて身動きがとれないままだと、もっと悲しい想いをするの」

 自分で自分を傷つけるその言葉を吐いた私は、体から魂が抜けていくような脱力感を感じた。


「おい、隠れていろ」

 私がイツバちゃんと一緒に話していると、不意にカインがやってきて言う。

「ユーフォーが近くに飛んでいる。敵性を確認した」

 脳波によって飛んでいるユーフォーからは、相手の脳波を感じ取れるという。友好的か、敵対的か、という事もわかるらしい。

「イツバ。二人で安全な場所に隠れていろ」

 イツバちゃんにそう指示を出すと、カインはユーフォーを操った。

「招集!」

 携帯をしているユーフォーは数個だ。だが、インカムから放たれる電波から、家の中に保管してあるユーフォーを呼べる。最悪、この場でインカムを使い、通信販売で買ったユーフォーを今すぐ呼び出すこともできる。

 クリーヴァーと戦う場合、無限に襲い掛かっていくるユーフォーとの戦いになるのだ。ふつうに考えて勝てるはずもない。

 監視のために一台のユーフォーが私に付くらしい。カインはユーフォーを操りながら空を飛んだ。

 重力を遮断する電磁波が発見されたのは先述の通りだ。

 足の裏から空気が射出される特殊な靴を履いているカインは空を縦横無尽に飛び回ることができる。

 厚さが数センチしかない靴の底の中には、微細な振動を続ける鉱石が入っており、振動の力で空気を震わせ、ロケットエンジンのように空気を噴射する。

 数秒で、カインは十メートルくらいの高さにまで浮かんでいった。

「どこにいる?」

 カインは言いながら、自分の事を狙って銃口を突きつけてくるユーフォーを撃ち落とした。

 これは敵も同じこと。ユーフォーは無限に沸いてくるので、司令塔であるクリーヴァー本人を狙うしかない。まずは敵の位置を確認する。そして、自分は逃げ回りながら自分のユーフォーが敵を仕留めるように指示を出す。

 クリーヴァーの戦いとはそういうものだ。

 逃げ回るにもいくつかタイプがある。

 息をひそめて隠れるタイプ。逆に空に浮かび縦横無尽に飛び回り、敵の攻撃の回避を続けるタイプ。

 敵は前者、カインは後者なのだろう。

 カインは敵が潜んでいそうなところに索敵ユーフォーを飛ばし、カメラユーフォーを探すためにレーダーを付ける。

 敵からもカインの姿が見えなければ狙うのも難しい。カインが敵を見つけるのが早いか、敵がカインを撃ち落とすのが早いか、これはそういう戦いだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ