エピローグ 〝秋〟
天寧の村で起きた一件が済み、夏休みも終わると、和真と春香は、元の学生生活へと戻っていた。
校長の長いスピークがあった始業式は終わり、和真と春香は、天寧の村で起きたことを振り返りながら教室で話をしていた。
あれから、天寧の家は和解することは出来たが、天寧の父が言った通り、村のけじめとして天寧は村から永久追放を受けることになり、和真と春香も、村への今後の立ち入りを禁止されることになってしまった。
「天寧、元気でやっているかな」
「うん……」
春香の言葉に、その後の天寧とは連絡が取ることが出来なかったことに、和真は少なからずの心残りを感じていた。
「それにしても、和真にあんな力があったなんてね。本当、改めて考えても信じられないよ」
村から戻った和真は、春香に自分の知りうることをすべて話した。
和真の両親は、〝異能〟によって失ってしまったこと、それと同時に、和真自身も〝異能〟
の力を手に入れたこと、その力を使って、今まで数々の〝異能〟を倒してきたこと、危険なことに巻き込みたくないからと、それを春香に隠していたこと――。
「でもさ、やっぱり一言ぐらいは言って欲しかったな」
「だから、それに関してはごめんて何度も言ったじゃないか」
全部話してくれたことにある程度の納得はした春香ではあったが、やはりどこか腹の虫が治まらないのか、時々、思い出したかのように和真に詰め寄っては、同じ問答を行なっていた。
「おい、聞いたか? 何か転入生が来るらしいぜ?」
「マジかよ? どんな奴だ、女子か?」
「何か、とびっきり可愛いって話だぜ」
和真と春香がそんな話をしているときに、二人の耳に他愛もなさそうな男子たちの会話が聞こえてきた。
「へー、転入生が来るんだ、どんな子が来るんだろうね」
現在、和真たちの学年は二年生であり、転入生がやって来るには少々珍しい時期ではあるが、決してありえない話ではなく、教室内は少なからずざわついており、その熱気に軽く当てられたのか、春香も心なしか興奮しているようであったが、和真は「さあ?」と軽く流す程度で、別段興味を持つような様子はなかった。
和真のそっけない態度に春香の目が吊り上がっていくが、間もなく担任が戻ってくることもあり、渋々と春香は自分の席へと戻っていった。
「よーし、お前ら静かにしろー」
教室の扉を開くと、和真たちの担任の教師が姿を現し、他の生徒たちも各々の席に着いていった。
「えー、今日は、このクラスに転入生がやって来ることになった、皆、仲良くするようにな」
教卓の上に着きながら担任が軽い説明を終えると、廊下で待機していた人影に合図をし、教室の中へと招き入れていく。
「っ……」
人影が教室内に姿を現すと、そこには、長く伸ばした美しい黒髪を赤いリボンで後ろを結んでおり、自然の光沢を放っている黒髪に整然と着こなされた学生服は、おしとやかで清楚な雰囲気を醸し出した少女が姿を見せた。
和真と春香がよく知るその少女の姿に、二人は言葉を失った。
「今日からこのクラスでご一緒させて頂く、姫野天寧と申します、どうか皆さん、よろしくお願いします」
天寧の透き通るような声と穏やかな口調に、和真は自然と笑みがこぼれていき、それに応えるように、天寧も笑顔を返していくと、まるで時が止まったかのように、二人はしばらく見つめ合っていた。
夏が終わり、残暑も治まっていく昼下がり、間もなく、秋が訪れようとしていた――。
初めまして、なろうずでの投稿は初めての叶あたるです。
ここまで読んでくれてありがとうございました。
この作品はいかがだったでしょうか? 少しでも楽しませることが出来たら幸いです。
さて、堅苦しい挨拶と前置きはこれぐらいにして、ここからは完全に私事を語ろうかと。
この作品は某新人賞に投降したものでして、3次落選という残念な結果に終わったのですが、ただそれだけにするにはもったいないと思って、読者からの感想という糧……あ、いえ、評価やら何やらをこれからの参考にしていきたいと思って投稿した所存です、はい。
選評シートも受け取ったのですが、やはりそれだけではなく実際にこれを読んだ大勢の人たちの声も大切なことだと思うのです。
え、誰にも読まれなかったらどうするかと?
…………
まだまだ未熟も未熟なところもあるとは思いますが、もしかしたら今後もちょくちょくと投稿するかも知れませんので、そのときはぜひ御贔屓にお願いします!
それでは、ここまでの駄文にお付き合いいただき感謝です。




