六.五章 〝和真〟
七年前――。
〝異形〟と化した両親の姿に怯え、気づけば両親は姿を消し、自分の身に起きた変化に気づいた和真は、〝異能〟に目覚めていた。
最初は、〝異能〟の力の使い方に戸惑いを感じていたが、一年、二年と時が経つに連れ、体に馴染んでいったのか、段々と力の使い方と性質を理解できるようになっていた。
この力は、自分の〝影〟に対して特定の性質を与える力であった。
和真が理解できた性質、一つは〝影〟を独立して行動させることが出来る性質。この性質によって、和真と〝影〟は別々に動かすことが可能になり、同時に行動させることが出来る。更に、この〝影〟には意志があり、記憶の共有と、ある程度の命令をすることで、主である和真が動けない状態になったとしても、与えられた命令を基準に独自の判断で行動することが出来る。
二つ目の性質は、〝影〟は自在に変化、硬質化させることが可能で、ナイフのような物を構成し、全身に影を纏わせることで、鎧のようにも扱うことが出来る性質である。
そうやって力の性質を理解しながら三年目が経過したとき、〝影〟の性質を操る力とは別に、和真は、何らかの力による波長のようなものを感じ取れるようになっていた。感じ取った力によって導かれるように、和真は、力を感知した場所へと向かっていた。
そこで、和真は見た。
〝異形〟へと化してしまった両親に酷似した、〝異形〟なる存在を……。
その姿が、自分の記憶に残っていた、両親の変異した姿とは違っていたが、和真の胸中には、言い表すことが出来ない、興奮にも似た激情が湧き上がっていた。
その激情に駆られるまま、異形なる存在へ挑みかかり、気づけば、和真の力によって、異形なる存在を消滅させていた。
先ほどの激情を抱きながら、淡い希望を帯びた、強い使命感にも似た複雑な感情。
『この力ならば、すべてを終わらせられることが出来る……』
そして、アリスの右腕が二人に振りおろされる瞬間を見た和真は、感情が爆発したかのように、思考よりも先に体が動いていた。
ただ、大切な人たちを奪わせはしないという強い想いと、すべてが狂ったあの日に、自らの〝異能〟に対して呟いた決意だけを去来させながら――。
(ボクが……)
(俺が……)
『必ず、お前たちを滅ぼしてやる!』




