訪問とそれからの話
まずは、約一か月と次話投稿が遅れてしまい誠に申し訳ありません。
詳しいことは、活動報告に書かせていただきます。
待たせた割に短いと思いますが、今月はあと何話かは投稿できると思います。
それからというもの、お母様が指揮していたのをお父様が引き継ぎ、お母様は第二王子が来るまでの時間はお茶を楽しんだ。私は身体をリンネに返し、身を清めるために湯浴みをして室内用の見栄のいいドレスに着替え、王子を迎えるように待つ事になった。
自室でフラムの入れる紅茶を飲みながら待っていると、ドアがノックされフラムが対応すると、どうやら王子が来たようでそろそろ来るようにとの伝言であったらしい。
フラムにお茶の片づけを頼み、一足先に玄関に向かう事を伝えた。
玄関に迎えると、お父様やお母様、メイドや執事たちのほとんどがいた。
「お待たせしました、お父様、お母様。」
「来たか。そろそろ殿下が来られるから出迎えるぞ。」
「はい」
それからすぐに、王室が使う国の紋章の形をした馬車が来た。
馬車から降りてきたのは、この国の第二王子のエドワード・グルン・ティルロッテ様と、従者の方が降りてきた。
「出迎えありがとうございます、カルネージ家の皆様。お知りになっていると思いますが、私は第二王子エドワード・グルン・ティルロッテとこちらが私の従者をしているアメル・コールです。」
「殿下の従者をしているアメル・コール言います。アメルとお呼び下さい。」
「これはご丁寧に、立ち話もなんですがどうぞ中へ。」
お父様が王子と挨拶をしていると、王子はお母様の後ろに居た私に目を向けてきた。
「お久しぶりです、リンネ譲。誕生会で倒れたので心配しましたが、体の調子は良くなりましたか?」
「はい、王子の大事な誕生会で見苦しいところを見せてしまい誠に申し訳ございません。」
王子の問いに答えるために面を上げたその時に、私と王子の目が合ってしまった。
「サリア嬢、左目の瞳が金色になっているのだが、もしや倒れた際の後遺症か?」
「っ!?はい、原因は不明ですが恐らくそれしか原因が無いとしか。」
「そうか。未婚の令嬢に傷があってはいけないし、ましてや国の宰相家の令嬢とあれば。それに私の誕生会での出来事だ、そのまま知らない振りをすることも出来ない。困った事が有れば気にせず言うといい。」
「王子のお力添えありがたく思います。」
客室にてフラムが給仕をし、アメル様は王子の後ろに着いた。王子、お父様、お母様、私の5人で話をすることになった。
「それで、殿下はお見舞いという事でお越しになったとは思いますが、それだけの為に来たのではありませんよね?他に別件の用が有ったのではないですかね」
「さすがにバルトン公爵は気付くか。実はだな、私はまだ婚約者を決めるつもりは無いのだ。」
「ですが、あくまでも婚約者候補ですよね。そこまで神経質になる事は無いと思いますが。」
「それが他の貴族ならいいのだが、王族となるのなら別だ。王族からの婚約者候補を断れたとなれば、その個人、ましてや家にも悪い印象が行く。それに第二とはいえ、継承権がある。万が一のことは思いたくは無いが国母になるかもしれないのを軽い気持ちで決めるわけにはいかない。国母になることを考えると相応しい者であり、教養や他の貴族に文句を言われない家の者でないと何処かで亀裂が入ってしまう。それは国民を守り、国を治める王族の軽はずみな行動で起こすわけではいかんのだ。」
「そこまでお考えだったとは、つゆ知らず。軽はずみの発言、お許しください。」
「いや、いい。それでさっきの話の続きとなるのだが、そのような事が起きるので、軽はずみに婚約者候補を作るわけにはいかない。しかし、国王様や母上が早い内に決めろと急かしてくるのだ。確かに婚約者候補が決まっていると王族と貴族の結びつきは硬くなるし、国民たちも安心する。しかし、私にはまだ時期が早いとどうしても考えてしまうのだ。そこでだ、私は婚約破棄をされても問題なく婚約者が捜せ、王族で悪い印象を払拭したとしても問題ない家を探していたのだが、なかなか見つからなかった。だが、誕生会にてリンネ譲を見つけ、私にとって幸いなことにリンネ譲のその左目のことがある。これをどうにか出来ないかと思ってこちらに来たのだ。」
私はそのことを聞いてお父様を見て驚いた。お父様がこんなにもわかりやすくもの凄く怒っているのが見えたからだ。
「要約すると、自身の婚約したいものが現れるまで私の娘に身代わりをしろと仰いますか?エドワード殿下は。」
「バルトン公爵が憤るのも分かる、私個人の我儘だというのも分かる。だが、王族の妻となるものを簡単に決めたくはないのだ。どうか分かって欲しい。」
そう言って、王子は頭を下げました。それを見て私はこれはただ事ではないと思い、そして個人ではあるが王族に『貸し』を作ることができると思った。
「お父様、私はこの話に乗ろうと思います。」
「リンネ!お前自分が何を言っているのかわかっているのか。」
「もちろんです。物事が分からないほど馬鹿ではありません。しかし王族が頭を下げ、私たちカルネージ家を頼ってくれたのです。それに私だって貴族の娘です。本人の思いなど家の柵などで有って無い様なもの。その点、王子がお願いをしてくれるのです。王族の頼みを断るなど、臣下ましてはその最上たる宰相家が断るなどあってはなりません。」
「……わかった。リンネの好きにするが良い。」
「ありがとうございます、お父様。」
「私が言って何なのだが本当にいいのかリンネ譲。」
「はい、しかしこちらの条件を飲んでもらうのが前提となります。」
「わかった。内容を聞いてみないと何とも言えないが出来うる限りは許容する。」
「何もそこまで難しいことは言いません。第一に、これは先ほど王子が言われた婚約破棄された個人または家に着く悪い印象の件です。これの払拭をお願いします。第二に、この話に乗るのは私にも言えるからなのです。私も婚約者を決めていません。なので、この話は王子が婚約者にふさわしい人を見つけるか私が婚約者を見つけるまで続けます。そして可能性としてどちらとも婚約者が見つからなかった場合は、このまま私を娶ってもらいます。第三に、第二の可能性の条件以外の場合において婚約破棄の話は王子が出すように。これにより第一の悪い印象が少しはましなものになるかと思われます。」
「それならこちらとしても問題はないだろう。どうかこれからよろしく頼む。」
「こちらこそ、短いか長いかはわかりませんがよろしくお願いします。」
そうして、王子と私たちカルネージ家の内密の秘密が出来上がったのであった。
「リンネ譲。近い内に婚約が決まったとの事でパーティをあげることになると思う。それの出席をお願いできるか?」
「わかりました。」
それで理解したのか王子はうなずき、アメルにそろそろ王城に戻ると告げた。
「そうそう、リンネ譲も私と同じ年だ。となると来年には学院に入らなければならない。火を操り、戦争では先陣を切るカルネージ家の長女だ。さぞかし高い魔法特性を持っているのだろうな。これは来年が楽しみになるというものだ。」
「っ!?…はい。王子の期待に応える為に私自身も頑張ります。」
「うん、良い返事が聞けた。では、パーティの日程などが決まり次第参加の招待状と共に文を送る。それまで待っておくがいい。」
そうして、カルネージ家で起きた王子訪問の長い一日が終わった。
王子の帰り後の会話
王子の帰りを家の前で見送り、私たちは大事な事に気が付いた。
「…お父様、お母様。私は婚約者になるという事は、私の評価も見られるという事を忘れていたようです。」
「だから、私は自分の言っていることが分かっているのかと言ったのだ。もし未来の国母になるかもしれない者の魔法適性が低いものだと知れたら、国民が不安がり、上級貴族も黙ってはいないだろう。」
「まぁ、なるようにしかならないわ。リンネの魔法適性は私たちの都合で隠していたのだから。それに堂々とカルネージ家に喧嘩を売るような事は無いでしょう。王族の婚約候補という地位に居るのだもの。」
お母様は、うふふふ、ととても気分がよいらしく私はその笑い声を聴きながら、これからどうなるのか不安が積もっていった。