ギルドと先触れ
まずは一言。「お待ち頂いた読者様、本当に申し訳ありません。orz」
執筆意欲が激減してしまい、次話投稿に三週間も掛かってしまいました。
今回も前話と同じように少し長文になって今ますので、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
翌日の朝、俗にいう家族会議というものが行われた。
朝の朝食を終えた後に、お父様がフラム以外の使用人を全て例外なく席を外してもらい、家族会議を開いた。勿論のごとく家の決定権を持つお母様で、私たちはお母様に昨夜にあったことを全て話した。
「そう。そんな楽しいことが有ったのに、私一人仲間はずれなんてひどいわねぇ。ねえ、あなた。」
とお母様は目を細め笑っていたが、お父様は冷や汗をダラダラと流しつつ、小さな声で笑っていた。
「それでどうですか、お母様。お許し頂けますか?」
「大体の事情が分かりましたし、リンネが目を覚ました時からフラムからの一言もありましたからね。まあ、よいのではないですか。護衛をしてもらうのですから。それも誰もいなくても怪しまれないという。それに、母は娘が一人増えて嬉しいものですよ。リンネ、その娘に会いたいのだけど代わって貰える?」
お母様に何か考えがあるものだと思い、私はわかりました。と言ってサリアと入れ替わった。私は自分の体の後ろに立つような感じになり、サリアが今身体を動かしていた。
――サリア、お母様がご挨拶したいというのだけど大丈夫かしら。
――ええ、心配してくれてありがとう。身体、借りるわね。
「初めまして、サリアと申します。カルネージ家の皆様、おはようございます。」
「あらあら、あなたがサリアちゃんね。私はローレ・カルネージですわ。ローレまたはお母さん、どちらでも呼んでいいわよ。それにしても、本気を出してはいないと言え、うちのクロムといい勝負をしたのでしょう。ぜひとも手合わせをしてみたいわ。この頃、楽しいこともないし暇なのよねえ。そういえば、クロムはきちんと挨拶は済ましたのかしら?話を聞いた限りでは、会話はあまりなかったようだけど。」
「そうでしたね、ご挨拶がまだでしたね。名まえは何度か出てきているとは思いますが、改めて。クロム・カルネージといいます。クロムと呼んでください。これから、リンネの事と護衛の事共々をよろしくお願いします。それと、お母様手合わせの件はお控えください。なかなかの使い手ではありますが、お母様に勝てるものはこの国ではあまりいませんので。それに周りに広まる評判などをお考えください。公爵夫人ともあろう者が血生臭い事をしていると思われたら、私とお父様で噂を消さなければなりませんから。」
「あら、いいじゃない。私たち、カルネージ家はこの国が立国した時から血生臭いことをしているのだから。そうじゃないと、この国は今頃無くなっているはずだわ。」
とても気になる話をしていた。立国から周りからの国から宣戦布告を受けたような言い方だ。もしかすると、ティルロッテ王国は国の歴史的には短くこの頃出来た国かと思い質問した。後で、リンネから書庫に案内して歴史書などを見せてもらう約束だが、情報は多ければ多いほどいいだろうと思った。
「その様子ですと、この国は建国からあまり年を重ねていない国なのですか?」
「ええ、そうよ。この国の事もあまり知らないのかしら?」
「はい。後でリンネに書庫の方へ案内してくれるのですが、少しでもこの国について知っておこうとしまして。」
「あら、良い子ね。この世は情報が命を守るという事をあなたは知っているのね。なら少しだけお話をしましょうかね。この国の成立ちを。」
それからというもの、ローレさんよりティルロッテ王国の建国を聞いた。
かつて、『終焉のモノ』と呼ばれる竜が居たとされる『終焉の森』から出てきて、この世に住んでいる全種族に対して戦争を起こしたことを。そして、人を焼き、国を壊し、大陸を消した。だが、全種族による連合軍により疲弊した『終焉のモノ』は、やがて動かなくなりその時を神様と賢者様により封印され、その体は現在も何処かで封印されているといわれている。それから、人間族の勇者様は何を思ったのかこの『終焉の地』と呼ばれる、いわば『終焉のモノ』が暴れまわった土地の近くにこのティルロッテ王国を建国したそうよ。
もちろん、この国に攻めるものは居なかった。何を隠そうこの国を立国したのは『終焉のモノ』を倒すために動いた勇者様たちの御一行だったからだ。しかし、勇者たちがこの世を旅立たれてからはこの国は荒れ、他の国から好機とばかり見られ戦争をしてきた。表向きは国一丸となって国を守っているが、内心では他の人を蹴落とすことしか考えず、たとえ親族であっても信用できないのが今の王族や王城になっているとの事。ちなみにたった
200年で王族は7回も変わってしまった。それに一人だけ、戴冠式当日に暗殺された王様もいるのだとか。今は第7国王が現王だがその実、王は7代も変わっているらしい。
ローレさんの話を聞き終わった後、私は自責の念に襲われていた。そんな時に、いつの間に自分の後ろに立っていたローレさんが抱き着いてきた。
「何をそんなに思いつめているのか私たちには分からないのだけど、泣き止みなさい。愚痴ぐらいなら聞くわよ。あなたはもう私の子なのだから。」
その言葉を聞いた時に、私は泣いている事に気づいた。それから、自分が思っていることがぽろぽろと口からと流れていく。
「私は、自分が情けないです。妹を守ることも出来ず家族を失い、村を失い、森を失い、そしてお方さえも失うのか。あの男が言っていたように戦争を起こしてしまった。こんな私は自分自身が、全くもって不甲斐無い。」
「そう、とっても辛かったのね。(この子、戦争を起こしたって言っているのだけど、もしかして、竜巫女様なのかしら。近年まで戦争した国はあったけれど、戦争を悔やむという国は無いはず。平民ならなおさら、政をしている王族を恨むはあっても『戦争を起こした』という事は平民でありながらそれなりの地位にいたという事なのでしょう。それなら近年では、200年ほど前に亡くなられた竜巫女様をおいて他無い。あの森にすんでいた住民はある二国の戦争の元で国から逃げ出した国民の住処ものね。それに、今では知らない人は居ないとまでされている『終焉のモノ』という物語。あの話のどこまでが本当の事なのか、真実を確かめる事が出来るわね。)」
この話も終わろうとしていたときに、バルトン公爵がそろそろお開きとするかと声を上げた。
「ええ、そうね。」
「私も何もありません。」
ローレとクロムも、もう話すことはないとして家族会議が終わった。
お母様とクロムさんが部屋を出た後、私も退室しようとしていた所バルトン公爵に声を掛けられた。
「サリア、この後にギルドへ行く。外に出られるように準備していなさい。」
「はい」
それから、私はフラムと共に部屋に戻り目の周りやドレスを着直してお父様からの託けを待った。
フラムに入れてもらった、紅茶というものを飲んだが私にはあまり分からない味がした。リンネたち貴族は、こんな飲み物をいつも飲んでいると思うとこの味がいい味というものなのか。と納得した。
それから、時間がたった頃、ドアを叩かれる音がした。私が出ようとすると、私の近くにいたフラムが、私が行きますのでサリア様はそのままお待ちください。といい、フラムがドアを開けるとそこには一人のメイドがいた。どうやら、馬車の準備ができたらしく、バルトン公爵が玄関で待っているので来るようにという話だった。
フラムと共に玄関へと行き、外に出てみると馬車は2つあった。先頭馬車に護衛たちが使用する馬車で、後ろの馬車に私たち乗るとの事だった。バルトン公爵とフラムとの三人で後ろの馬車に乗った。
ティルロッテ王国には中心部に王宮があり、それを囲うように貴族街がある。貴族街の周りには、区分ごとに分けられた住宅街や商店街などの市街地がある。
周りは、他国や『終焉の地』に近いため円形の城壁が建てられ各方面からの侵略から国を守れる形をとっている。南には『終焉の地』と呼ばれる廃れた地があり、戦後の後から年月が経った現在でも危険度の高いアンデット系の魔物が徘徊し、北には武勇に誉れ高いアミルラ帝国、西には森があり、東には商業国家イルミーナがある。
そして、全方位を守れるようにとの初代国王(勇者)により、王宮を円の中心にし
他国からの侵略に対して東北にカルネージ家が建てられ、魔物などによる災害対策のために西南に魔物を狩ったりして生計を立てるギルドを建立した。そのため、カルネージ家とギルドの位置はほぼ正反対にある。
馬車に揺られ、20分ほどで馬車が停まった。先にバルトン公爵が先に降り、馬車内へと手を差し出してくださり私はその手を取って馬車を降りた。馬車の近くには護衛騎士が6人ほどいて、3人がついてきて、残り3人と御者の2人はそのまま馬車の近くで待機するらしい。
私が降りた後に、フラムも馬車から降りて護衛の人も合わせ6人でギルドへ入った。
ギルドへ入った瞬間、ギルドに加入している冒険者と呼ばれるたくさんの人や獣人などの目がこちらを向いた。
「誰だ、あれは」
「わからんが、どこかの貴族様だろ。いま入口に馬車が停まっているだろ」
「貴族がこんな所に何の用だ?」
「貴族がこんな所に来るなんて、依頼しかないんじゃないか?どんなもん出すかは見物だな」
いきなりたくさんの目や言葉にドキリとしたが、今の私は公爵令嬢なのだから冷静さをいつでも見せつけないといけない。
そんな時に、フラムが手を肩に置き大丈夫ですか?お嬢様。と心配をしてくれる。私は大丈夫と言ってバルトン公爵の後に続き、ギルド職員がいるカウンターへといった。
バルトン公爵はなぜか人が居ない所があるのに、あえて人が並んでいる所に並んだ。
「お父様、並んでない場所がありますが、どうしてここに並んでいるのですか?」
「あそこは獣人がしている。ここで充分だ。」
私は疑問に思ったが、空いているカウンターを見るとそこには可愛らしい兎耳の女性がカウンターに座っていた。私は何故かそこに足を進めた。後ろから、バルトン公爵とフラム達の声がするが今の私には聞こえなかった。
「すみません、依頼をしたいのですがこちらで大丈夫ですか?」
「ふ、ふぇ。依頼ですか?は、はい。こちらで承ります。」
「そう、なら何か依頼書みたいなのあるかしら?」
「は、はい。こちらになります。上から順にお名前と身分証明、依頼内容、報酬額、依頼期間で全てとなっています。」
「わかりました。書く物はあるかしら」
「はい、こちらです」
どうやら、新人っぽいが仕事はきちんと覚えているようだ。しかし、困ったことに私は文字が書けなかった。すると、後ろからバルトン公爵たちが来て代筆をしてくれた。
名前は「リンネ・カルネージ」で、身分証明はバルトン公爵が家の証明などで使われる印を使った。依頼内容のところでバルトン公爵は筆を止めた。
「依頼内容だが、内容を聞こう。それを私が書いてやる。」
「ありがとうございます。それでは、【ティルロッテ王国にて、二天姫ここに待つ 天姫】とお願いできますか?」
「わかった。」
そうして、だいたいが埋まり依頼書が出来たのだが、まだ報酬と依頼期間がまだだった。
「そこの獣人、ギルドマスターのところに案内しろ。」
「はい?ギルドマスターですか?ギルドマスターは多忙のため予定されている方としか会いません。すみませんが予定はありますか?」
「無いが、カルネージ家当主が来たと伝えろ。それで話は通じるはずだ。」
「カルネージ家?宰相様ですか?!わかりました。しばらくお待ちください。」
「あまり待たせるなよ。」
兎耳のギルド員は、はい。と言って奥の部屋に入っていった。
「お父様、あまり人を虐めるのはどうかと。」
「あれは、人ではない。獣人だ。」
「それでも、『人』です。昔ながらの柵に囚われ続けると、いつか足元を取られますよ。」
「うぅむ。」
話をしていると、兎耳のギルド員が戻ってきて案内しますと、ギルドマスターの部屋へと案内してくれた。
部屋の前に立ち、ドアをノックした。
「ギルドマスター、お連れしました。」
「わかった。入りなさい。」
「はい、失礼します。」
護衛の人には部屋の前に待ってもらい、バルトン公爵と私とギルド員の三人で部屋に入った。部屋に入ると、竜の牙らしきものや高級そうな毛皮のコートなど色々な物があり、机に座っている4,50歳の今でも現役の戦士と思うような男性が座っていた。
「ミネット、お前は職務に戻りなさい。対応は俺がやろう。」
「は、はい。失礼します。」
そういって、兎耳のギルド員は部屋を出て行った。出るときにちらりと私を見たような気がしたが、気のせいだと思っておこう。
「わざわざ、国の反対側からくるというと何かあったのだろう。用件を聞こう。後、俺はまどろっこしいのが嫌いだから建前なしで本題を言ってくれ。」
そういわれて、バルトン公爵が依頼書を私に渡して、あとは自分でやれ。とでも言う様な目で見てきた。
受け取った依頼書には未だに、報酬額と依頼期間が抜けていた。
私は、ギルドマスターへ近づき依頼書を渡した。
「依頼をしたいのです。ここに書いているように人を探しています。報酬額はこのあと、お父様が話してくれます。依頼期間はこの依頼が達成されるまで、達成されたらこちらからご連絡します。そして、ギルドには、他国のギルドへの連絡網があると聞いたことが有ります。その連絡網を使って出来るだけで構いませんが、全各国へとこの依頼書を掲示して欲しいことです。報酬額はすべてギルドへとお渡しして、掲示に掲載するだけで依頼が達成されるまで定期的に掲示料を支払わせてもらいます。悪い話ではないでしょう。依頼が達成されるまでお金がもらえ続け、報酬は全額ギルドへ渡ります。」
「ふむ、ギルド間の連絡網をどうして知っているのか聞きたいが、頭の良い者なら少し考えればわかるからな。その条件を飲もう。しかし、連絡網を使うのと全各国というには相当な金がかかるが良いのか?」
「問題ありません。ギルドはこの依頼を受けるだけでいいのです。お父様、あとは頼みました。」
そう言って、バルトン公爵とすれ違い、私は馬車に先に戻りますと言った。バルトン公爵はわかった。とだけ言ってギルドマスターとの報酬額と掲示料について話し合った。
私ではお金のことはわからないので、フラムと一緒に馬車に戻る事にした。
部屋を出ると、護衛の人が一人ついてきてそろそろギルドを出るというときに声を掛けられた。
「あの、すいません。」
振り向くと、ミネットと言われた兎耳のギルド員がいた。
「なにか用かしら」
「私、ミネットって言います。お名前聞いてもよろしいですか?」
「そう、私は『サリア《・・・》』といいます。会う事は無いと思うけど、よろしく。」
「お嬢様?!何を。」
「フラム、少し黙っていなさい。」
「…はい。」
「サリアさんですか。また、会えますかね?」
「……そうね。いつかまた会えるわ。」
そういって私たちの話は終わり、馬車へと戻った。
馬車で待つこと数分すると、バルトン公爵が戻ってきた。
「話は終わった。」
「そうですか。」
この二言だけで、私とバルトン公爵との会話は終わった。そして、馬車はカルネージ家へ向かい始めた。
家に着くと、何やら家中が騒がしかった。
バルトン公爵が使用人を呼び、何事か。と聞くと、何とも第2王子が自分の誕生会で倒れた令嬢の見舞いという名目で今カルネージ家に向かっているとの事だった。
そういえば知ってました?
私、今まで一話1500文字程度で一話を作っていたのですが、前話は今までの4話分の文字があることに。
「あれ、こいつ文字数多くなると投稿遅くなるんじゃね?」と思った、読者様それはあながち間違いではありません。お気づきかもしれませんが、タイトルを見たら大体どこまで話が進んでいるのかがわかるようになっています。これは、私が読専の時に「また、あのシーンが読みたいという時に話数がわからない」というためです。
今後とも、「終末のモノと二天姫」シリーズを宜しくお願いします。
あと、連載版の「終末のモノと二天姫」を完結するまでは絶対に失踪はしませんのでご安心ください。