思いと誓い
ツイッターを見てくださっている方は知っていると思いますが、本来であれば先日投稿するはずだったのですが何分まだまだ書くことがあったらしく、結果遅くなったことにお詫びします。
8割書いているといったな、あれは嘘だ!(実質6割でしたorz)
私は、ドアの前で一息つき、書斎の扉を開けた。
「失礼します、お父様。」
書斎の椅子に座っているお父様が、私が入ったのを見て扉を閉じたのを確認するとお父様がこちらに来るように手招きをした。
「リンネよ、体調はどうだ。リンネが突然倒れたから驚いたぞ。さあ、こちらにおいで。」
昔から、お父様は私と二人きりの時は、可愛い娘の顔をもっと近くで見たいと駄々をこね膝の上に乗るようにせがむのだ。
断ったら断ったで、家での唯一の楽しみがなど言い私を困らせるのだ。お母様にこのことを言ったら、私にまで被害が来そうなので何も言わないが、お母様ならすでに知っていてもおかしくないと思いつつ、私は扉から書斎の席のむかえにまで歩いた。
「その際は、お父様とお母様に多大なご迷惑を掛けました。起きた後、お母様がいらっしゃって大体のお話は聞かせてもらいました。さらに、お父様にご迷惑をかけると思いますが、大事なお願いがあります。」
私は真面目な顔でお願いを聞いてもらえるようにお願いしました。が、お父様は私の必死のお願いを余所にして
「それは、後でもいいのではないか?さあ、早くこっちにおいで。私にリンネの顔をもっと近くで見せておくれ。」
と、簡単に話をそらされた。
「お父様、私のことを無視するのでしたら、私もお父様のことを無視します。よろしいですか?」
そういうと、お父様はすぐにはっと表情を変えた。その顔は宰相をしている顔だ。そして私は表情を引き締めた。
「さて、このバルトンになんか御用かな?カルネージ家リンネ譲よ。」
お父様は宰相のお仕事の時に、自身と相手の立場を確認するような時がある。
「そこまでの大事は言いません。カルネージ家のお名前をお借りたいのです。」
「ほう、家の名を使うという事は、大なり小なり家に被害が出るという事を知っていての『お願い』なのかね?まあ、そこの部分はリンネも十分大人だ。カルネージ家の名前を使うことは許そう。だが、名前をどんなふうに使うのかそこは聞かせてもらわないと、快く許可できない。」
やったと私は思った。あのお仕事状態のお父様から私自身でお願いを聞いて貰えたと思った。あとは許可をもらうために納得のいく説明をしなければならないと緊張で冷や汗がでる。そして、私は意を決意して『お願い』を言った。
「お願いは依頼ですわ。」
「…依頼とな。それは何処に対しての依頼なのかな?」
「幼い頃、お父様は私に『ギルド』という何でも屋の話をして下さいました。そこに対する依頼ですわ。」
「ほう、『ギルド』に対すると言うとは。あそこは国家や貴族などのしがらみとは全く関係ないし立場上の強制力も効かない、簡単にいえば不法地帯みたいなところだぞ。そこに貴族の名を使う事に何の意味がある。」
「依頼に対する信頼ですわ。依頼するのであれば、大きかれ小さかれ出所がきちんとしなければならないと思うのです。」
「依頼に対しては分かった。では、その内容はどうなっているのかね?」
やはりこの時が来たか。どう考えてもお父様を納得できる理由を見つけることができなかった。だけど、嘘を吐くのは宰相というお父様相手には愚かな事だ。だから私は愚直になるしかなかった。
「……人探しですわ。」
「んっ、人探しとな?それは、「誰が」、「何のために」するのかね。嘘偽りなく言いなさい。」
どうしましょう。まさか、私たちの秘密に気付いているのかしら。と、背筋が凍るような感覚がした。
その時、サリアが言った。
――ありがとう、リンネ。ここまでで大丈夫だよ。後は、私がやる。
――え、待って。何か策でもあるの?
――いいえ、何もないわ。でも何とかなるよ、それに私には最終兵器があるの。使ったら大変な事になるけどね。
――わかったわ、サリアに任せるわ。後は自分で何とかなさい。お膳立ては十分でしょう?
――うん、ありがとう。
その時、リンネの身体がぐらりと倒れた。だが、身体は地面に横たわらずに再び、立ち上がった。
その時のバルトンは心の中で、自分の愛する娘が倒れそうになったのを見ていた。病み上がりなのに無理をさせすぎたと驚いたが、その考えはすぐに消え去った。
そして、自身の娘に対してこういうのだった。
「お前は誰だ。」バルトンの目の前にいたリンネは、まだ12歳で我々貴族の大人から見ればまだまだ可愛いものだったが、それが突然他の者になったような感じがしたのだ。
そして、リンネの傍付きとしていたフラムが言っていた事を思い出した。
「起きたばかりのお嬢様は別の人間に見えましたが、奥方様と話していたお嬢様はいつもの私たちの知っているお嬢様であったと。」
そして、リンネと思わしき者が姿勢を正し挨拶をしてきた。
「まずは、ご挨拶を。カルネージ家当主、バルトン・カルネージ公爵様。私は今、リンネお嬢様のお身体を一時的にお借りしているサリアと申します。以後、お見知りおきを。」
この言葉にバルトンは驚いていた。可愛い娘の中に他の人間が入っているなど。だが、それと共に、色々な事に説明がいった。おそらく、リンネが王城で倒れたのもフラムがいつものお嬢様と違うように見えたという事にも説明がつく事に。
「サリア嬢といったな。リンネの身体で一体何をするつもりかな?事によっては実力行使も厭わない。」
「いえ、そんなことを起こすつもりはありません。私はただ妹を探しているだけなのです。私のたった一人の可愛い妹を。」
「ほう、妹とな。その妹を探すのに我らカルネージ家の名を借りたいという事か。サリア嬢よ、お主家名は何というのだ。」
「私に家名はありません。元はただの平民ですので家名を持ちません。」
「ただの平民風情が、公爵家の名を借りたいとそんな迷いごとを言うのか。これはこれは、全くもって面白い。」
「はい。そうです。」
「駄目だ、許可できぬ。」
もはや、私が平民だと知ると許可を真っ向から拒否してきた。きっとこうなることは分かっていたので、私は使えるのではないか?と思ったことを交渉として出すことにした。
「そうですか。では、交渉をしましょう。」
そういうと、バルトンは眉をひそめた。
「交渉だと?ただの平民風情が一国の宰相を務めるこの私にか?面白い冗談を言う娘だな。聞くだけならただともいう。交渉の内容を言ってみよ。」
ただの平民が何を言い出すかと思えば交渉とな。この交渉でこの娘を判断してやろう。信頼するに値するか、それとも消した方がよいかを。
「交渉材料は、このリンネ・カルネージの身の安全です。」
「ほう。それは、人質にするという意味合いでいいのかね?」
その言葉と共に、目の前とあと一つの箇所で殺気が脹れ上がった。
「いえ、そうでわないわ。この娘は貴族の娘でしょう。それなら、護衛騎士やお傍付きが入れないような場所で、もしもの場合が起きた時に私が代わりに守るという意味よ。意識が分離していると思うから、もしリンネが気絶されられても私が動けるという意味よ。」
「なるほど。平民は自分の願いを叶えて貰う為に、リンネの命を守るという意味か。だが、それには何の保証もないし、私は平民の実力も知らん。これはどうする?」
「私とリンネは一心同体になっているの。リンネが死ねば私が死ぬし、私が死ねばリンネが死ぬ。これを保障として、そうね、実力の方はそこの扉に最初から隠れている人にお願いしましょうか。」
とそういうと、書斎の中にある隣の部屋に続いている扉から一人の男性が出てきた。金髪に緑色の目、そこはかとなくリンネの父バルトンに似ていた。
バルトン似の男性が書斎に入ってきた。
「もし、私に勝つことができるのなら、君の実力というものを信じよう。勝負の内容は決定打を一撃入れる事だ。武器、魔法何でもありの一本勝負。受けるか?」
と、挑発じみた勝負を挑まれた。それに私は「わかった。」と答えようとすると、リンネが私に言葉を発してきた。
――どうしてここにお兄様が。王城の方でお父様と一緒にお仕事をしているはずなのに。
――あれは、お兄さんなの?結構な剣の腕前のようだけど。
――ええ、お兄様は、宰相のお仕事をする前は、王城の騎士団に勤めていたのだけど、近衛兵騎士団まで上り詰めた凄腕よ。無理よ、私では勝てないわ。
――いえ、勝負とは最後までわからないもの。やってみないと分からないわ。
「どうした、怖気づいたか?」
その挑発に私は昔から決めていたようなことを思すのだった。
「いえ、まさか。昔から事を思い出しただけです。私は、可愛い妹の為なら何だって出来るし、何だってする事を。その勝負、受けて立ちましょう。その様子ですと、あなたは剣をお使いになるようですが、私は魔法ですがよろしいですか?」
その言葉に、バルトン公爵とリンネのお兄さんが息をのむような吃驚した顔をした。私は何か可笑しな事を言ったのだろうかと思うと、バルトン公爵が言った。
「この平民は面白いことをいう。貴様は仮にも我が娘リンネの身体を使っていることを忘れたのか。我らカルネージ家は代々、火を扱う事に長けているが、リンネは手のひら台の火しか出せないのだぞ。」
と言った。私はその言葉にとても驚いた。何故なら、たとえ前世で死んでもあのお方からの加護は魂に定着するとの事で、あのお方以外の誰であっても外すことは出来ないはず。それに、私の適正魔法はあらゆるモノを照らし、裁きを与えるといわれる光魔法と、夜のように不意打ちや幻影といった闇魔法の2つしか無いのだ。
そして、それ以外の魔法は一切使えないと言っていい程の魔法適性を失うのだ。実際に私たち姉妹が実証済みだ。
「そう。それは驚いたわね。」
「そうだろう。それなのに、貴様は魔法で戦うというのか?なんと愚かな。」
「ええ、そうね。まさか、こんな魔法適性が凄い人が私の中にいるなんてとても吃驚したし、あなたたちはとても愚かだわ。こんなにも魔法適性が凄い人が『愚か』なんて言うしかないなんて。」
それはどういう意味だ。とバルトン公爵が尋ねようとした所を、私は言葉をかぶせるように言った。さあ、勝負する場所に案内して。と。
そこで、バルトン公爵は何も言う事もなく案内する。とだけいい席を立ち、先導した。
その中、私は自身のステータスを見るようにした。
「ステータス」
――――――――――――――――――――
リンネ・カルネージ
年齢:12
適正魔法
火:F(SS) 水:-(F)
風:-(F) 土:-(F)
光:-(S(F)) 闇:-(S(F))
パッシブスキル
火魔法:LV1
光魔法:LV4(加護により隠蔽)
闇魔法:LV4(加護により隠蔽)
詠唱持続(加護により隠蔽)
特殊スキル
終焉のモノの加護(自身の適性魔法の成長過程を大幅上昇。【デメリット】その代わり、適正以外の魔法適性を、無にする。真の魔法適性と元の魔法適性を()に記しす。なお、このステータスに関する事は、加護者と加護を受けている者にしか見えない。)
火魔法:火の魔法適性。火の魔法が使えるようになる。
光魔法:光の魔法適性。光の魔法が使えるようになる。
闇魔法:闇の魔法適性。闇の魔法が使えるようになる。
詠唱持続:一度唱えた魔法を、ある一定の時間内なら魔法名だけで魔法を発動することができる。【デメリット】しかし、詠唱ありよりかは威力並び射程などの持続時間が減少する。
――――――――――――――――――――
となっていた。
きっと、他の人だと、火の適性が【F】と、それ以外の魔法適性は【-】で書かれているのだろう。
――ごめんなさい。私が魔法の才能が無いばっかりに。
――何言っているの、あなたは誰よりも魔法の才能があるわ。それは私たち姉妹でも勝てないぐらいの。
――え。それは、どういう・・・。
――もう、この話は終わりましょう。これ以上は何も知らない方がいいわ。
と話を途中で打ち切って、バルトン公爵が訓練場に案内するという事で、書斎から出て遺書に向かう事にした。
決闘の勝負をするとの事で、屋敷から少し離れた訓練施設に来た。そして、その中央で私とリンネのお兄さん、バルトン公爵にリンネお傍付きのフラムの4人が揃った。
「ここは私たち、カルネージ家の所有する訓練場の一つだ。我々カルネージ家は宰相という身でありながら、国に損害が起きるようなことが起きると、たとえ戦場でも前線に出る。頭だけの他の公爵家と一緒にしないことだな。さて、準備はいいかな。こちらはいつでもいいよ。」
「こちらも、いつでも大丈夫です。」
そして、バルトン公爵による勝負の采が投げられた。
「先手はやろう。せめてもの情けだ。」
どうせ相手の使える魔法は小さな火だろうと慈悲を貰えたので、私は喜んでもらう事にした。貰えるものは貰っといた方がいいのだ。
「それでは、ありがたく貰っときましょうか。」
早速、手を前にだし光魔法の詠唱に入る。
「我、総てを照らす者なり。浄化の光を持って敵を打たん。『フォトン=レイ』」
手の前に手の平ほどの大きさの光の玉が数十個現われそのまま、相手に向かって飛んで行った。
いきなり光魔法を使ったからか、相手は凄く驚き攻撃を避けた。他の人間も驚いていた。
「なっ。光魔法!?リンネは火魔法のみの適性のはず。」
「確かに、リンネは火魔法だけが適性で当たっています。ですが、私の適性は違います。『フォトン=レイ』」
すかさず攻撃するが、さすが近衛騎士団まで行ったリンネのお兄さんだ。すぐに体制を取り戻し、距離を詰めてくる。
「我、天を覆う者なり。影による現世を持って敵を欺かん。」
「無駄だ、ここまで距離を詰めたら、何もできまい。」
「『ミラージュ』」「てやああぁぁ。」
その瞬間、リンネの身体が縦に真っ二つになった。
「ば、馬鹿者。やるなら峰打ちだろう。」
「いやぁー、お嬢様。」
「しまった、相手の殺気に当てられて。」
しかし、地面に横たわっていたリンネの身体は夜に消えるように消えた。
「死体が消えた。まさか変わり身の魔法か。なら本体は何処に。」
リンネのお兄さんが周りを見渡したが、そこには、バルトンとフラムがいるだけ。
「我、総てを照らす者なり。敵を穿つ光よ、射ち貫け『フォトン・レーザー』」
一直線状に光を撃つ、私の持っている光魔法の最大技。
それを剣に火を纏い薙ぎ払おうとするが、それをさせる私ではない。右手は『フォトン・レーザー』を撃っているため、動かせないが左手がある。
「放て。『フォトン=レイ』」
「なっ!?魔法を二つ同時だと。我、火を纏いし者なり。『ファイアーウォール』」
相手は、詠唱をある程度なら省略できるのか。なかなか厳しい戦いになりそう。と思った所に静止の言葉が出た。バルトン公爵だ。
「両者、矛を収めよ。勝負はここまでとする。」
「どういう事かしら。まさか戦いをここで収めろと?」
「ああ、そうだ。これ以上の戦いに価値はない。お前の実力も分かった。クロノいいな、これ以上の戦闘は許可しない。」
「んっ、わかりました。これ以上は本気になります。」
「今までの詫びをしよう、サリア嬢。我が娘の護衛を改めてお願いする。その代わりに、ギルドへの依頼の件は私自ら頼もう。」
「そう、それならいいわ。ギルドの件お願いしますね。」
「サリア嬢、リンネに代わってもらえるか?」
「…わかったわ。後は家族で話した方がいいでしょう。フラムさん、こちらに来てください。」
「フラムとお呼び下さい、サリア様。」
そう言いつつ近づいてきた、フラムに私は抱きついた。
「そう。これからよろしく。フラム」
そして私は眠りにつき、リンネに身体を渡した。
それからすぐにリンネは目を覚また。私は、リンネの後ろに立つような感じで、皆の話を聞くだけの存在になっていた。
「フラム、ありがとう。私はもう大丈夫だから。」
そういって、私はフラムとの抱擁を解いた。が、フラムは私を離してくれなかった。
「いけません。またお嬢様がどこかに行ってしまう。」
「大丈夫だよ、私はいつもここにいるから。」
なんとか、フラムに分かってもらい話してくれた。
そして、私はお父様とお兄様に向かって話を始めた。
「お父様、お兄様こんなことになってしまい申し訳ありません。ですがわかって貰えますか?」
「こんなことは初めてだから、私では何とも言えないな。家の事なら決定権はローレにある。妻にどうするか聞くさ。まあ、妻の事だ。「娘が一人増えたわ。」ぐらいで終わるのが目に見えているな。クロムお前もそれでいいな。」
「はい、お父様とお母様の決定に従います。それにしても、サリアと言いましたね。あの娘とても強かったですね。彼女は、平民だと聞いていたのですが、戦闘技術といい、口調といい本当に平民とは思えないですね。そこは、おいおい聞いていくとしましょう。」
それから、家に戻り湯浴みをし直し眠るのであった。
王子の話は、次話で出で来る予定です。(キャラとして出てくるとは言っていない。)