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勇者

ぽかぽかと柔らかい日差しが俺を包み込む。

今日は、レンとニースと公園を散歩に来ている。

連日の魔族襲撃が嘘のように街は平和で、周りには家族連れやカップルが楽しそうに過ごしていた。


「ふわ〜、暖かくて眠くなってくるな」

「なら、私が膝枕してあげる。お兄ちゃんこっちで休もうよ」


そういって、レンが芝生のところでシートを敷いている。

可愛い妹の膝枕なんて兄冥利につきるなぁ。


「なんじゃなんじゃ、膝枕だったら妾がしてやるぞ」


レンに対抗心を持ったのか、大きな乳を揺らしながらニースもそんなことを言ってくる。

いやいや、お前の膝の上に頭乗せたら、そのおっぱいが気になって寝るところじゃなくなるわ。

とにかく、レンに膝枕をしてもらいゴロゴロし始める。


《のんきなものですね。またいつ魔族が襲ってくるか分からないのに、そんなにのんびりしていていいのですか?》


いきなり、頭の中に女性の声が響く。

多次元管理組織ナマケラス管理局管理官主任のアナリヤだ。


《あら、説明ありがとう》

《で、何用じゃ。妾たちの憩いのひとときを邪魔するほどじゃ、何か事件でもあったのじゃろう?》

《相変わらず勘がいいわね。そうね、事件ってわけじゃないけど、あなた達の耳に入れておいた方がいいと思って連絡したのだけれど》


なんだか、面倒くさいことのような気がする。

アナリヤが関わると碌な事がないと踏んでか、ニースもピリピリしているのが分かる。


《それで、何を伝えに来たんだ?》

《そうそう、勇者が近くまで来ているわ》

《はっ?》

《なんじゃと?》

《だから、勇者がダータラの街の近くまで来ているの》


勇者というと、神の加護を受けて魔王を倒すために仲間と共に世界を巡り、伝説の武器をもって正義を貫く、あの勇者か?


《ナナシが、なんの勇者について考えてるか分からんが、魔王と相対する者のことじゃな》

《この前、言っていた奴だろ?》

《そうです》


確か、奴もロリエドシステムの力を使えるんだよな。

で、そいつが街に近づくと何か問題でもあるのか?

まさか、勇者を騙り悪行の限りを尽くしているとか!?

だとしたら、なんて不届きものだ。

この俺が、成敗してやる!


《わかった、勇者のことは俺に任せておけ》

《多分、何か勘違いしているかもしれないけど、そこまで自信があるなら任せるわよ!間違っても、私が責任を取らないといけなくなるような状況に発展させるのだけは勘弁してよね》

《たわけ、ナナシがそんな間抜けなことをするわけがなかろう!妾もついているのじゃ、大船に乗った気持ちでいればよいのじゃ》


そんなことを次元通信で話していると。

レンの声が聞こえる。


「お兄ちゃん、どうしたの?」

「うん?なんだいレン」

「ううん、さっきから何度も呼んでるのに、起きないからどうしたのかなって?」

「それは、レンの声が可愛いから子守唄のように聞こえて、さらに寝ちゃったんだよ」

「うふふ、お兄ちゃんたらまたそんなこと言って」

「レン、妾は?妾を起こすために呼んでくれたんじゃよな?」

「ニースさんは、呼ぶ前に起きちゃったから」

「ぐはっ」

「なんだか腹減ってきたな」

「だったら時間もちょうどいいし、ここでお昼ご飯食べようよ。お弁当作ってきたから」

「妾も一緒に作ったんじゃぞ」


そういって、レンは持っていたバスケットからランチボックスを次々と出してきた。

どう考えても、あの小さい片手持ちのバスケットの中に、どうやって入っていたのか分からないほどの量だが気にしないことにした。


《くそっ、何をのほほんとしてるのよ。さっきの勢いはどうしたのよ!》

《それはそれ、これはこれだ。今は、レンと楽しい会話してるんだから邪魔すんな》

《そうじゃ、これから楽しいお昼ご飯なんじゃ、引っ込んでおれ》

《くっそ、くっそ、リア充が。私だってなぁ、そんな甘酸っぱい時間を過ごした事があるんだからな!嘘じゃないぞっ!別に羨ましいとか思ってなブツッ・・・。


やたら喧しいので強制的に通信を切った。

さあ、楽しい楽しいご飯の時間だ。



ダータラの街を一望できる高台の上に佇む人影がある。

吹き付ける風がマフラーをなびかせている。


「やはり、あの街から感じる」


そういって、その影は街に向かって駆け出した。


「くは〜、美味かったぁ。食い過ぎて腹いっぱいだ」

「おそまつさまでした」

「やっぱりレンの作るご飯は美味いのじゃ」

「ニースさんも料理上手になってきたよね」

「レンの教え方が良いからなのじゃ」

「ふ〜、なんだか暑くなってきたな。レン、飲み物くれないか」

「はーい。あれ、もう飲み物がなくなっちゃった」

「なんじゃ、それなら妾が買ってくるのじゃ」

「ううん、私が買ってくるから休んでいていいよ」


レンはそう言って商店街の方へ走って行った。



「やはり、この街には魔族の残滓を感じる。ここも魔族に襲われたのだろうか?」


だが、この街の様子はなんだ?

どう見ても平和そのものだ。

いままで魔族に襲われた街を見てきたが、こんな状況初めてだ。

とにかく、街の中を観察してみよう。


「なぜ、こんなに賑やかなのだ?」


街の歩いていると大きな広場に出た。

奥の方には公園があり、人々が楽しそうにしている。


「むっ、近くで魔族の力を感じ・・・いや、神の力か?残滓なんてものじゃない、魔族の力と神の力がなぜ同時に感じる」


あの時の感じた奇妙な気配。

この奥から、しかも2つ感じる。

こんな街の中で、上級魔族!?

まずい、人が多すぎる。

このままでは、被害が大きくなってしまう。

脚に力を入れ、一気に広場を駆ける。


「きゃっ」

「なんだ、旋風か?」


風の力を受け、気配のする場所に飛び込む。

そこに居たのは、ただの男と巨乳の女。


「なんだっ!?」

「むっ、きさま何奴じゃ!」


腰に携えてある剣に手を掛け振り抜く。

男と女がいた場所に鋼が穿つ。

いない。

神力を展開し光線を後ろに放つ。

外れた。

上方に跳ね一帯を見渡す。


「おいおい、急になんだ」

「こやつが、アナリヤの言っていた勇者じゃな」

「やっぱり面倒いことになったな」


背後を取られた。


「魔族が」


ならば、神力を解放する。

右腕にある腕輪が光る。


「神姫聖装」


神域から力が送られてくる。

体の中に神力が溢れ、全てを書き換える。

白銀の装飾が施された純白のドレスを纏う。

光の粒子が零れ落ちる。

余剰神力で光の奔流が周りを照らす。


「勇者プニエール、参上です」



そこにいたのは、小さな女の子だった・・・。

ただ、紛れもなく勇者なのだろう、とてつもない神気を放っていた。


「魔族は、絶殺ぜっころです」


小さな女の子の勇者は物騒なことを言った。

勇者が現れた!

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