新たな存在
すみません、投稿が間に合わず1日飛ばしてしまいました。
今日も、朝からトレーニングをしてきた。
まぁ、ただの走り込みだけどな。
「ナナシは、もっと体力をつけるのじゃ」
数日前の、身体測定の不甲斐ない結果から、ニースが乳を揺らしながら提案してきた。
とにかく、朝早くから街の周り走って、いま家に帰ってきたのだ。
俺達が、居候している家は宿屋兼酒場で、親父さんが朝から酒場で冒険者相手に朝飯を作っていた。
「ただいま、親父さん」
「おう、帰ってきたか。朝飯用意するから、レンとニース嬢を呼んできてくれ」
たぶん、この時間はニースは寝てるな、レンはおかみさんと部屋の掃除や洗濯してるはずだ。
レンを見習ってほしいもんだ。そんなだから、いつまでたってもお姉ちゃんと呼んでもらえないんだぞ。
部屋に着き、ニースを起こそうと布団を剥いだが。
「あれ?ニースがいない」
いつもだったら、乳をぷるんぷるんさせながら、よだれ垂らして寝ているのに。トイレか?
「まぁいい、それじゃレンを呼びに行くか」
洗濯物を干してるはずだから、屋上に向かった。
そこには、見慣れた姿が二つあった。
「あっ、ナナシお兄ちゃん」
「おはよう、レン」
「おはよう、今日もトレーニングお疲れ様」
やっぱり、レンは可愛いなぁ。
「ナナシ、おはようなのじゃ」
「おはよう、ニースが朝から起きて手伝うなんて珍しいな」
「そりゃ、お世話になってとるんじゃから、このくらいはせんとな」
うん、殊勝な心がけだな。
いつまで続くかな?
「親父さんが、朝飯作ってくれてるから呼びに来たんだ」
「あれ、もうそんな時間?」
「ふむ、さっさと残りを片付けていくのじゃ」
俺も、洗濯物を干すのを手伝いさっさと終わらせた。
途中で、レンの下着を手に取ってしまい、なぜかニースにぶっ飛ばされたのは愛嬌だ。
「もう、ナナシお兄ちゃんは、デリカシーが足りないです」
「そんなこと言われても、手に取るまで分かんなかったんだよ」
「ナナシは、もう少し考えてから行動するべきじゃ」
そりゃ、レンが別にしてあるカゴに下着が入ってるとは思わなかったし。
気を利かせて、わざわざカゴを奪い取ってまで手伝おうとしたのも、悪気はなかったんだよ。
「お前達遅かったな、朝飯冷めちまうぞ」
親父さんは、すでに朝飯を作り終えていて洗い物をしていた。
他にいたお客さんも、殆どいなくなっていた。
そこへ、丁度朝の買い物から戻った女将さんが現れた。
「ただまぁ、あらあんた達今から朝ごはん?」
「ナナシのせいで、遅くなったのじゃ」
「俺だけのせいじゃないだろ」
「なんじゃ、レンのせいにするつもりか?」
「お前のせいだ、お前が俺をぶん殴ったせいで、屋上から落ちかけたんだろうが!」
「ナナシが、レンの下着を取るのが悪いのじゃ」
「や、やめてよ!私がちゃんとナナシお兄ちゃんに言わなかったのがいけなかったんだから」
「どうりで上でバタバタしてるなと思ったが、そんなことしてたのか」
「ち、違う⁉︎たまたま偶然手に取っただけなんだ」
「あらあら、若いっていいわねぇ」
朝から、ギャーギャーと言い争い、1日が始まるのであった。
さて、今日はこの後どうしようか?
そんなこと考えながら、街をブラブラしている。
一応、街の造りを把握しようと、散歩がてらに来たのだ。
「思ったより大きいな」
「そりゃ、都市って言うくらいだからねぇ」
乳を、ぽよんぽよんと弾ませながら、変なスキップをするニース。
「そういや、お前って魔王の魔剣なんだよな?」
「元は、じゃな」
「元はっていうことは、今は違うのか?」
「前にあのアナリヤとかいう奴と話たろうに、負の力が無くなった時点で魔王の制約も無くなったんじゃ」
「じゃあ、魔王の魔剣ではないんだな」
「今は、ナナシの魔剣というのが正しいのじゃ。ただ、元々魔剣として作られたから、力の源は魔力だし、ナナシが変身した姿も、魔族が魔人化した姿に近いのじゃ」
「なるほど、だから体が真っ黒なんだな」
「この姿も、ロリエドシステムとかいうのが、妾にも干渉しておるみたいで、わざわざ人格と人型を作ったんじゃ」
「不思議だよなぁ、巨乳なのはいいけど」
「ナナシと同じで、人と魔剣どちらでもあるんじゃよ。もちろん人として赤子も孕めるのじゃ」
さらりと、とんでもないことを言う。
つまり俺も、子供を作れるわけだな。
ぐるりと街を一周して戻ってきた。
だいたい街の造りが分かった。
東西と南に門があり、南側に住宅や商業施設が集まっている。
北の方は、貴族の住んでいる高級住宅街だ。
東西南北に伸びる大通りがあり、道に面して様々な店が軒を並べている。
魔族ナガセや魔族オオタは、西門からやってきたみたいだがたまたまか。
北の地域に魔族の城があるらしいが、まったく覚えていない。
ニースも、逃げるときは人格が曖昧になっており覚えてないらしい。
こちらから攻めるのは危ないな。
魔族オオタが、襲ってきた日から十日ほど経ったが、魔族の新たな動きはない。
貴族も、今回のことで色々と街の防衛に力を入れてきた。
騎士団も増強し、倍の数の騎士が常に街を警備している。
街では、謎の戦士が魔族を倒したと噂になっているが、騎士団が倒したことになっているようで、あまり騒がれていないようだ。
あまり目立ちたくないからいいだろう。
ただ、魔族の目的がいまいち分からない。
魔王が世界征服したいとか、魔族だけの楽園を作りたいとかなのだろうか?
「どっちにしろ、俺はレンと家族を守る為に戦うだけだ」
「妾も、それでいいと思うぞ。世界を守るとか、平和な国を作るなんて勇者に任せておけばいいのじゃ」
いま、ニースが聞き馴染のある言葉を言ったぞ。
「えっ、なに、勇者っているの?」
「もちろんじゃ、だから魔王がいて、勇者を倒す為に魔剣を作っていたのじゃ」
「そんな簡単に言われても」
「前回負けたから、悔しくって100年かけて妾を作ったのじゃ。それを、どこの誰とも知らんやつに奪われた挙句、正義の為に使われてるのだから笑えんな」
でも、それは俺のせいじゃない。多次元管理組織ナマケラス、もしくはアナリヤのせいだ。
「魔王に対抗できる勇者がいる、そいつは何者だ?まさかと思うけど神の力を使ったりしないか?」
ふと、疑問思った。嫌な予感がする。
《ピンポーン!そのとおりでーす!》
突然、アナリヤの声が頭に響いた。
やっぱり関係してたか。
《勇者は、異世界から転生した人ですよ、管理は別部署ですが。もちろん、ロリエドシステムでサポートされてますから、いわゆる『神力』を使えます》
《それって、魔力と対極の力だよな?だとしたら、俺って魔族として勇者に狙われたりしないか?》
考えてみれば当たり前だよな。
魔力を使う魔族、神力を使う勇者。
《そうなるかもしれませんね。でも、大丈夫ですよ!ナナシさんもロリエドシステムにサポートされてますし》
《だとしても、神力を使う勇者としては、冒涜でしかないような》
《考えたら負けじゃぞ》
色々考えても無駄か。
たぶん、勇者は俺のところに来る。
《あぁ、やっぱり戦わないとダメだろうなぁ》
頭を抱えながら、どうしようか悩んだ。
とある街の片隅で、一人の少女が佇んでいる。
「向こうから、魔力のような神力のような、不思議な力を感じる」
まだ見ぬ、敵か味方か分からぬ気配に不安を感じていた。
勇者の存在があるのがファンタジーだ!




