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異世界で、ヒーロー爆誕!

二作目となる作品です。

よろしくお願いします。


毎日ダラダラ過ごしていた。

適当に仕事して、適当に交友を結んで、適当に遊んで、適当に生きてきた。

それでも、楽しく過ごしていたんだ、そうあのときまでは。

もしかすると、いつか自分は変わると思っていた。

でも、変わったのは世界だった。



「こんにちは、アイダレオさん」

「あ、はい、こんにちは」

「突然で申し訳ないのですが、貴方は死んでしまいました」


淡々と話す女性がそこにいた。

どうやら俺は死んだらしい。


「死んだんだ。それで死因は?」

「驚かないんですね」

「そう?死んだ実感がないからかな?」

「死因は、心臓麻痺ってことにしました」


しました?

心臓麻痺ってことにしましたと、言ったのか?


「簡単に言えば、現世界で貴方は世界に拒絶されたので、私達の方で救済措置を取りました」

「ははっ、世界に嫌われてたんだ」


笑い話にもならない死因だ。


「なので、今の貴方はどの世界にも所属しないので、ここにシフトしていただきました」

「そうなんだ、それで俺はこれからどうなるの?」

「貴方と適性がある世界に転生してもらいます」


おおぅ、転生とか物語でしか聞いたことない言葉だぞ。


「そこでは、貴方は好きに暮らしてください。かなり裕福な立場にしてあげることができますので」

「そいつは、ありがたいねぇ」


何だか分からんが、楽して暮らせるならそれに越したことはない。

適当に転生させてくれと頼んだ。


「では、貴方が転生するのは、マルデラ・クエンという世界で、ホウケル王国の東に位置する都市ダータラになります。転生直後は、記憶が曖昧になることがあるので気をつけてください」


何やら注意事項を聞かされた。


「これは餞別です。何かあったらこの腕輪を使ってください」


オシャレな腕輪をもらった、使えって何に?


「それでは、転生を開始します」


足元から光が溢れ体を覆う。

だんだんと意識がなくなる。


「アイダレオさんに、良い人生が訪れますように」


最後に聞いた言葉は、祝福の言葉だったのか分からなかった。



ビーッ、ビーッ、ビーッ、ビーッ


突然、けたたましく鳴る警報に驚く。


「転生システムエラー、0.1%の歪みを検知、存在確率に影響大」

「な、何事ですか⁉︎」


システムエラーですって⁉︎

こんな時になぜ?安全の確認はしたはず、イレギュラーが発生するなんて、これがアイダレオの特性なの?


「ロリエドシステムに、異常を確認しました」

「アイダレオのマーカー消失」

「生存確率測定不能」


とにかく、このままじゃまずい。

私の責任になってしまう、今の地位から降格したくない。


「とにかく、あの世界でのサーチを続けなさい」

「了解しました」


お願い、生きていてアイダレオさん、私のために。



ところ変わって、マルデラ・クエンのホウケル王国の北に位置する魔族の城で盛大な実験がされていた。


「ふはははははははっ!ついに、この日が訪れた!100年の時を費やし、最強の魔剣を生み出すことができるのだ!」


大きな声で笑っている男がいる。

目の前には、液体の入った大きな容器に剣が浮いている。


「おめでとうございます、魔王様」


そばにいる女性が、男に向かって祝辞を述べた。

そう、この男は魔王である。


「うむ、それでは最後の仕上げをしよう。魔力全開でいくぞっ!」

「はい、サポートは万全です」

「さあ、生まれ出よ!魔剣レオニス!」


魔王は、そう言って手元の水晶に手をかざすと、不思議な光を放った。

剣に魔力が注ぎ込まれる。

だが、あちこちから火花が飛びはじめる。


「魔王様、様子がおかしくありませんか?」

「ほほぅ、お前も分かったか。魔力の注入が止まらん」


よく見ると、剣の入っている容器が謎の色に変色している。

その瞬間、魔力の逆流で大爆発を起こした。


ドッガッァァァァァァァァァン!


あまりの威力に、魔王と側近の女性は気絶していた。



俺は、どうなったんだ?

うっすらと浮かび上がる意識を手繰り寄せる。

体が痛い、軽い目眩もする。

だが、力が溢れてくる。


「×××××さんに、良い××生が訪れますように」


頭に、女性の声が蘇る。

誰の名前を言ったんだ?

俺は、レオ…ニス、アイダ…レオ?ケン?ヒト?

頭が痛い、目眩がする、吐き気が止まらない。


ウガァァァァァァァァァァァァ⁉︎


自分が分からない恐ろしさから叫び声を上げた。



「いたたたたたっ、急に爆発するなんて。魔剣はどうなったんだ?」

「ふぅ、魔王様大丈夫ですか?」


さすが魔王といったところか、気絶から復帰は早かった。

魔剣の安否を確認すると、容器があった場所に人影がある。


「ん?お前何者だ、なぜここにいる」


そう言って魔王が近づくと、それは叫び声をあげる。

そして、とんでもないスピードで逃げていく。


「うおっ、この魔王を撒くとは」

「追いますっ!」


そう言って、側近の女性が謎の人影を追った。


「うーん、彼奴の魔力が魔剣レオニスに似てたがまさかな」


まぁ、魔族のナンバー2が追っていったんだ、すぐにでも捕まるだろ。

そんなことを思っていたが、側近の女性は見失って帰ってきた。



それから、数日経って。


「お母さん、あそこに誰か倒れているよ」


小さな女の子が、ボロボロの男を見つけた。

男は、その親子に助けられたのだ。


「ありがとうございます」

「大丈夫ですか?そんなにボロボロになって、魔物にでも襲われたの?」

「すみません、何も覚えてないんです」


名前も、なぜボロボロなのかも、なぜこの街にいたのかも、何もかも覚えていない。


「ここは、都市ダータラと言ってマルデラ・クエン王国の東にある街よ」


それを聞いた瞬間に、頭痛が酷くなる。

なぜだか分からないが、女性の姿が脳裏をよぎる。


「おう、目覚めたか。食事を持ってきたが食えるか?」


優しそうな髭面の男が部屋に入ってきた。


グゥゥゥゥゥゥゥッ


美味そうな匂いに腹が鳴った。


「ふふっ、お兄さんお腹空いてたのね」


女の子に笑われながら料理を食べた。

簡単なお粥だったが、とてつもなく美味く感じたのは、この家族の優しさだろうか。



それから、数日経った。

この家族は、宿屋兼酒場を営んでるらしく、俺はお世話になった礼に手伝うことにした。

親父さんはゼイオン、女将さんはナーベル、娘さんはレンという名だ。

俺は、名前が分からないのでナナシと呼ばれていた。


「ナナシお兄ちゃん、シーツの取り換えは終わった?」

「あぁ、終わって床掃除するところだ」


レンは、俺のことをお兄ちゃんと言って慕ってくれた。

俺も悪気はしなかった、親父さんも女将さんも優しくて毎日が楽しいと感じていた。


だが、そんな日も長くは続かなかった。



ある日、街で悲鳴がこだました。


「うわーっ、魔族が襲ってきたぞっ!」

「逃げろーっ」

「きゃーっ、助けてぇ」


逃げ惑う人々を襲いはじめる魔物達。

騎士団が駆けつけたが、住人の混乱に対処できてない。

とにかく身を隠していよう。


「レンが買い物からまだ帰ってきてないのっ!」

「なにっ!」


まさか、巻き込まれたのか⁉︎

だったら助けに行かなくては!


「俺が、レンを探しに行きます!2人はここから出ないでください!」


そう言って俺は飛び出した。


どこだ、どこにいるレン。

できれば、騒ぎに巻き込まれていないこと願った。


「きゃーっ」


悲鳴が聞こえた。

レンの声だ!急いで声のする方、大通りに向かう。

そこで見たのは、魔族の大将のような奴に捕まっているレンだった⁉︎


「助けてぇ、ナナシお兄ちゃん」


俺は大声で叫んだ!


「レンを離せ、このクソ野郎!」


魔族はこちらを睨みつける。


「ふはははははははっ、脆弱な人間が威勢だけはいいな」

「そんなことはどうでもいいっ、離せって言ってんだ糞虫がっ!」

「口の聞き方をしらねぇ野郎だな。なら、てめぇから殺してやるよ」


そう言って、魔族が襲ってきた。

いきなり、腹を殴られ体が浮いた、すぐさま顔を殴られ吹っ飛ばされる。


「どうした人間、さっきの威勢はどこいった」


騎士が数人駆けつけ、魔族に攻撃するが一蹴され役に立たなかった。


「おらおらっ、反撃してみろよ!できないならこのまま殺しちまうぞ」

「やめてぇ、ナナシお兄ちゃんをいじめないでぇ」

「うっせえガキだな、あまりうっせぇとお前から殺しちまうぞ」


そう言って、魔族はレンを方に戻り、手から鋭い爪を出し顔に這わせる。

レンの頬から、一筋の血が伝った。


ゾワリと背中が総毛立つ。

ドス黒い塊が胸の奥から溢れ出す。

食いしばった歯が音を立てる。


コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス


殺意が込み上げ、全てを破壊したい衝動に駆られる。


「ソノ手ヲ離セ、クソ野郎」

「ほう、その姿まるで魔物…いや魔族だな」


俺の体は、真っ黒な鎧と生物を合わせたような人外になっていた。


「やれっ」


魔族の、その一言で魔物どもが襲いかかってきた。

俺は、まるで意に介さず魔物を殺していく。

殺すことに躊躇いがない。

そして、人とは思えないスピードで魔族に近づく。


「おっと、こっちには人質がいるんだせっ」


女の子が、魔族の前に出される。

だがそんなこと関係ない、女の子と一緒に魔族も殺してしまえばいい。

力を込めた拳を、振りかぶる。


殺す?コロス?誰を?女の子を?

レンを、俺が、殺す?


アガッ、グァッ、ガグァァァァァッ⁉︎


ダメだ、ダメだ、ダメだ。

俺は何を考えている、レンを、妹を殺そうと思ったのか。

頭が痛い、吐き気がする。

世界が、グチャグチャになる。



死後の世界の一角で、警報が響き渡る。


「ロリエドシステムに、異常確認!」

「アイダレオのマーカー確認!」

「生存確率15%を確認!」

「歪みが0.85%まで上昇!」

「やった、アイダレオをの生存が確認できたのね!」


これで、上司から叱責を受けることはなくなった。


「ただし、不確定要素の介入で安定しません」

「何らかの力で拒絶がはじまってます」

「なら、強制的に存在を固定します!」


こんなところで死なせたりしない。

アイダレオ、貴方の2度目の人生は、楽しくなくてはいけないのよ!


「ロリエドシステムをコンバート!、ウェイディーンリアクター展開!」

「コンバート完了、リアクター作動確認」


「エンゲージ!」


叫び声と同時に、光が世界に降り注ぐ。



オレハ、ダレダ

オレハ、アイダ

オレハ、マケン

オレハ、レオ

オレハ、レオニス


モウ、オレハ、オレガ、ナンダカ、ワカラナイ。


「ナナシおにーちゃーん!」


ナナシ、ナナシ、ナナシ、ナナシ


俺は、ナナシだ!

レンのお兄ちゃんなんだ!

薄れる自我が、レンの呼ぶ声で戻ってきた。

助けなきゃ、レンを、妹を!


思いが天に届いた。


その時、左手の腕輪が輝いた!

光は、全身を包み込む。

ドス黒い塊が消えていく。

殺意が浄化される。

体が軽くなる。


俺は、誰だっ!

俺は、アイダ!

俺は、マケン!

俺は、レオ!

俺は、レオニス!


俺の中に、優しい声が聞こえる。


「共に生きよう、共に護ろう」


光の洪水が収まると、人が立っている。

その姿は、先程の姿とは打って変わって神々しい!

鎧のような体には黄金の装飾が縁取られ、黒い体は真紅の紋様が現れた!


「お前はいったい何者だ⁉︎」


魔族は、その場所に現れた存在にそう問うしかできなかった。


俺は、俺の名は。


『マケンアイダー!レオニス‼︎』


ここに、正義のヒーローが、誕生したのである。


正義のヒーローモノです。

身近なヒーローです。

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