第3戦:“善”白空 vs “悪”我暗
僕、白空 和は、優等生らしい。別に自惚れているわけではない。色々な人に、そう言われているのだ。
「誠、僕のどこが優等生なんだ?」
親友の誠に聞いてみると、
「1.服装に乱れが無い 2.成績は常に20番以内 3.教師に対する言動が超丁寧 4.誰にでも平等に優しい…」
「いやいや、それ全部人として当たり前の事だから!」
誠に褒められて、恥ずかしくなったので、僕は誠の言葉を遮った。
「しかも和、顔面偏差値もそこそこ良いからなぁ」
いや、顔は誠の方が良いだろ。成績も。
「んー、でも俺は優等生じゃねぇから」
誠は、先生にもタメ口. 遅刻なんて当たり前. 不良を殴る、だもんねぇ…。成績は良いのに、勿体無い。
“何であの二人、仲良いんだろ”とか言われてたし。
「じゃあ、誠も“善い事”しようよ!誠に対する評価も絶対上がるよ!」
「え、和、自分の株を上げる為に“善い事”してんの?」
誠は誤解してしまったようだ。
「違うよ!善い事は、ほぼ趣味だよ!善い事をすると、人が笑顔になって、嬉しいんだ。だから、誠もしよう、ってこと!」
評価は、誠を誘う餌のつもりだったのだが、逆効果だったかもしれない。
「俺は遠慮しとく。和みたいな根っからの、つまり“本当の善人”にはなれそうにないし。なれても“偽善者”だろーな。」
誠はふざけながらも、心からの言葉を発していた。
「和は、珍しいんだ。和の様に、心に曇りの無い奴なんて、そうそういないからな。」
誠は、僕の事を過大評価し過ぎだ。
「過大評価か。確かに、そうかも知れないな(笑)」
誠はそう言いながら、笑っていた。
誠と別れて向かった先は、市内の大病院だった。そこに“悪の気配”を感じていたのだ。近くの、大きなものであれば、僕達は気配を掴む事が出来る。
大きな悪の気配は、院長室からだった。
院長は、助けを呼ぶ事が出来なかった。声を出せば、殺されるであろう事は明白だったから。椅子に座っている院長の前にはパソコンがあるのだが、それはもう、驚くしかない。
そのパソコンは、腐っていた。
パソコンが腐る事などあるのだろうか。それを見た事のある者など、この世には、まず居まい。
しかし、腐っていた。しかも、ある男の手によってだ。
その男は、人ではなかった。肌も髪も服装も黒。黒人の様な色ではない。まさに“暗黒”。その姿は、悪魔や死神とも呼べるものだった。
男は、“悪の代理人”を名乗っていた。
悪の代理人は突如として、天井を腐らせて院長室に侵入した。さらには、院長の目の前でパソコンを腐らせて見せ、声を出さぬ様にと忠告した。悪の代理人が触れるだけで、パソコンは腐っていた。
「パソコンの様になりたくないだろ?ならば、俺の問いにだけ答えろ。」
「お前は、何の為に他人の治療をしている?」
悪の代理人は、院長にそう問い掛けた。しかし院長がすぐに答えなかったため、代理人は院長の座っていた椅子を腐らせて、院長は床に倒れ込んだ。今度は、椅子に触れる事無く腐らせていた。
「答えろ。それとも、ここで死にたいか?」
代理人の脅しによって、院長は口を開いた。
「か、患者の命や健康を守る為だっ!!」
だが、悪の代理人は疑っていた。
「それは、真実か?本当に、命を救う為か?」
代理人が声を荒らげて尋ねると、院長は
「本当だ!命を救うことが私の生き甲斐なんだ!その為なら、命も掛けられる!」
そう答えた。
しかし代理人は、その言葉を信用していない。
「俺はお前が行ってきた悪事を知っている。それで莫大な金を得たことも。お前は、金や名誉の為に、仕事をしているんだろ?」
その言葉を聞いて、院長は青ざめた。代理人は院長の悪行など知らない。カマをかけてみただけだ。だが意外にもそれは当たっていた様だった。そして代理人は続けて言った。
「さっき、“命を救うのが生き甲斐”と言ったな?では、この病院の患者の為に死ねるか?」
代理人は院長の頭を掴んだ。院長は怯えている。
「最後だ、答えろ!お前にとって大事なのは、“患者の命”か?それとも“自分の命”か?良いか、嘘はつくなよ!」
代理人の言葉によって、院長は失禁しながら答える。
「助けてください…まだ、死にたくないんです……」
その院長の言葉に対して、代理人は尋ねた。
「それは、自分の命が大事という意味だな?」
院長は頷いた。
「やはり全て偽善だったか。ならば死ね!!」
悪の代理人が院長を殺そうとした、その瞬間だった。
窓ガラスが割れ、院長室に何者かが侵入してきた。
院長と悪がいた場所が、窓の近くで良かった。窓を割れば、すぐに室内に入ることが出来るから。僕【和】は“善の代理人”に変身して院長室内に侵入すると、すぐさま悪を蹴り飛ばした。代理人の身体能力は常人を遥かに超えているため、軽い蹴りだけで悪は4m先まで飛んだ。院長はまだ怪我一つ無い状態だったが、あと少し遅ければ危なかったかもしれない。院長はとても怯えていた。
「お前はぁ……」
声がする方を見ると、悪が立ち上がっていた。よく見ればその悪は、人ではなかった。すぐに理解できた。あれは“悪の代理人”だと。
「何故、邪魔をするっ!!」
悪の代理人は叫びながら殴りかかってきた。その反動で僕は病院の外、院長室は建物の随分上(何階かは忘れたが)にあるので、つまりは地面からそうとう離れた所に放り出される事になった。
しかし、代理人は飛ぶ事が出来る。普段は存在しないが、飛ぶ時に翼を出す事が出来るのだ。よって、放り出された僕も翼を出して、態勢を直した。
しかし……
「“死人の菌”!対象は善の代理人の翼だ!!」
おそらくは敵の能力だろう。
僕の翼は腐り始めた━━




