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中
彼女とケンカした。
全部僕が悪いのだけど、「ごめんね」の一言が言えなかった。
仕事のことでイライラしていて、つい怒鳴ってしまった。
そんな僕が嫌で、気がついたら家を飛び出していた。
彼女は何も言わずに、僕を見つめていた。
彼女は僕を嫌いになったかな。
もしかしたら、家にいないかもしれない。
雨が降ってきそうだったので、僕は足早に帰路につく。
日も沈みかけ、薄暗い道を歩く。
雨が降ってきた。
濡れて冷えた体を震わせながら、玄関を開ける。
不安で、しばらくの間呆然としていた。
傘立てからポタポタと垂れる雫の寂しさが胸を突き抜ける。
いないのかな?と思ったその時、彼女が裸足で風呂場から出てきて「おかえり」と言った。
彼女の姿に安堵したあと、今度ちゃんと「ごめんね」と言えた。
彼女は何も言わず台所で夕飯を作り始めた。
僕は彼女が許してくれたのだと思い、風呂に入った。
湯船に浸かりながら、2度とあんなことをしないと誓った。
風呂から出て僕らは一緒に食事をとる。
彼女は相変わらず無口で、無表情のまま。




