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あえてその裏をかく  作者: @
第二章 命の天秤
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死神の宴

なんだか、学校に友達とかいらなくね?むしろ、一人の方が独特の感性を養うことができるんじゃね?

俺は歩道で立ち止まっている。別に用もなく立ち止まっているわけではない。でもその用というのも大したものじゃない。

車道を挟んで向こう側の歩道に不良に絡まれている女の子がいた。

俺はそれを眺めているのだ。いや、別に好きで眺めているわけではない。むしろ、嫌いだ。

俺は女の子を助けたい。助けたい。でも、どうやって?俺の力で不良たちを撃退できるのか?そもそもあの近くに近づくことすらできてないじゃないか。そんなことを考えているうちに、二人の男子が女の子の手を引っ張りどこかへ行ってしまった。


俺は弱い。誰よりも自分のことを理解している。だからこそ自分が何ができて何ができないのかはっきりと線引きしている俺でもある。


俺の名前は『紫堂 裕也』二十歳の少し中二病をこじらせた平凡な大学生だ。


小学生の時に俺は少し周りとは違った。簡単に言うと浮いていた。そのため毎日いじめられていた。

内容は軽い悪口くらいのものだったのだが、俺にはそれが絶えられなかった。

自尊心が高いのかもしれない。

頻度も毎日というわけではなく、数日に数回言われる程度のものだった。だが、俺はその言葉を軽くは受け止めきれなかった。死のうとも思ったこともある。でも、俺には自殺なんてできない。それは俺が一番知っている。

だから、俺は我慢した。

我慢し続けて、数ヶ月たったある日とある少年が席を立ち


「やめろよ」


と言った。それ以来俺は悪口を言われなくなった。

俺を助けてくれた少年は別にクラスで目立っていたわけではない。だからといって地味な方でもないのだが。

俺はその少年に憧れた。それ以来その少年とは挨拶程度の交流しかもてなかったが、俺は密かに少年のことをある種のヒーローとして見ていた。

だから俺は少年に憧れているということはヒーローに憧れていることと同義なのだと考えた。



そして、ヒーローに憧れて数年間。

俺は自分の無力さを呪った。数年間で自分がヒーローになれないことを悟ってしまった。なぜなら俺は自分のことをよく知っているから。

俺にとってはこの世の全てがもどかしく感じた。常に自分の周りでは大小はあれど事件は起きている。なのに自分が弱いせいで何もできない。


もどかしい!もどかしい!俺にも力さえあれば人を助けることができるのに!力が手に入るのならばなんでも差し出すから力が欲しい!


俺は強く願う。


「いや、そこまで執念深く願わなくても、ちゃんと叶えてあげるよ」


どこからか声が聞こえる。


「まあ、それなりの対価は要求するけどね」


周りを見ても人がたくさんいて騒がしい。全く特定できない。


「じゃあ、力が欲しいならちゃんとそう言ってくれ」


俺は下を向く。そこには俺の影があった。だが普通の影じゃない。まるで自分の意思で動いているかのようだ。


「力が欲しいか欲しくないか早く言ってよ。こっちだって時間がないんだよ」


「欲しい…」


俺は無意識のうちに何かをつぶやく。


「誰かを救うための力が欲しい。そのためなら俺はなんだってする」


「お、いいね。じゃあ、君に力をあげるよ。その代わりの対価は勝手にもらっていくね」


すると影は元通りの自分の影に戻る。


特に自分の体に変化はない。そう思った瞬間に激しい頭痛が俺を襲った。

あまりの痛さに俺はうずくまる。

なんとか周りを見回してみる。するとその景色は今までとは全く違う景色だった。

全ての人の頭の上に数字がある。横をたまたま通った中年の男の頭の上には

00年00月00時間01分00秒

と書かれていた。その男をしばらく見ているとさらに文字が出てくる。


交通事故


俺は不吉な予感がして中年の男を追いかける。頭痛はすでに消え去っていた。

中年の男は横断歩道を渡る。ちょうどその時頭の上の数字が全て0になる。


中年の男は暴走した車にぶつかって死亡した。死亡した時刻はあの頭の上にあった数字が0になった時と同じ時間。


俺のもらった力とは

寿命と死因

この二つが見える力。しかも、ずっと見えるというわけではないらしい。今の俺には寿命と死因は見えないからだ。

それでも俺は少し笑う。

これを使えば誰かを救える。ヒーローになれる。



次の日


俺は大学に行く途中で仲のいい友人のシンジが俺の横を通って行く。俺はやけに無愛想だな。と思い声をかける。


「おい、我が眷属よ。俺を無視とはいい度胸だな」


スタスタ


シンジは俺を無視して歩く。

俺はたまらずシンジの肩をつかむ。


「おい、聞いているのか我がサーヴァントよ」


「え、なに?あんた誰だよ?」


シンジは本当に不思議そうに思っている。


「俺だよ。死神の紫堂 裕也だろ」


「いや、俺はあんたなんか知らないぞ」


何かがおかしい。


「俺すぐ大学行かなきゃいけないから」


「待ってくれ」


俺はまたシンジの肩をつかもうとした。だが、その手は届かない。なぜなら急にひどい頭痛がしたからだ。

痛みに耐えきれずその場で倒れる。流石に見過ごせないと思ったのかシンジはこちらに駆け寄ってくる。


「大丈夫か!」


シンジは俺のことを心配してくれているようだ。だが、俺はそれどころじゃなかった。シンジの頭の上には


00年00月00日01時間00分00秒


の文字が浮かんでいた。さらによく見てみると


自殺


の文字が浮かび上がった。


「おい、本当に大丈夫か?」


シンジが俺に話しかけている。


「ああ、ちょっときついな。でも、少し休めば大丈夫だと思う。でも、万が一のことがあったらいけないから一緒にいてくれないか」


少々気持ち悪いセリフだがそんなことは気にしてられない。俺がこいつの自殺を止める方法は俺の目の届く範囲にシンジをいさせることだった。


「まあ、しょうがないか」


本当に仕方なくといった感じで俺の意見に肯定するシンジ。だが、今の俺にとってはそれでも嬉しい。俺は人を救ったのだから。



それから、俺はシンジの興味の出る話題を振ってその場にとどめることに尽力した。時には手を掴んで投げ飛ばしてその場にとどめた。

そしてもうすぐ一時間が経とうとした時、俺にまた頭痛が襲う。


「おい、またかよ。大丈夫か」


俺は頭痛が消えるのを待ってシンジを見る。


00年00月00日00時間00分05秒


心臓麻痺




俺はただこの五秒のカウントを見ることしかできなかった。







救急車のサイレンの音が聞こえる。俺にシンジは救えなかった。救急隊員の人は俺のことを見向きもせずにシンジを救急車に乗せて行く。

俺はフラフラしながら歩く。


何もできなかった。


何もしてやれなかった。


最後に見えた死因は自殺なんかじゃない。結局俺は死ぬという運命を変えられなかった。


死にたい。


そう思いながら歩いているとある違和感を感じた。その違和感の正体は鏡。

その鏡には俺が写っていなかった。


「いやー、どうだい人間を超越した力を持った感想は」


忌々しい声が自分の影から聞こえる。

俺は鏡を指差して言う


「これはどういうことだ」


「僕のコメントには綺麗にスルーだね。ちょっとさみしいかな」


「いいから答えろ」


俺は少し声を荒げて言う


「そんなに怒鳴らなくてもいいじゃないか。それは力の代償だよ」


「力の代償?」


「そう、それなりの対価を貰うって言ったじゃないか。だから君の存在を貰ったんだよ」


「俺の…存在…」


「そう、君は世界中の誰にも見られないし認められない」


「じゃあ俺は幽霊ということか」


「強いて言えば、生きる屍かな」


なんだよ。何が死にたいだ。もう俺はしんだも同然じゃないか。


「だからさ、もし、力がもういらないとしたら返してよ。その代わり存在の三分の一を返してあげるよ」


そんな提案を影してくる。


「嫌だ…」


俺は小さくつぶやく。


「嫌だ。やっと誰かを救えるかもしれないんだ。手放すなんてできない」


そう言って俺は走り出す。


きっと誰かを救い出してやるという思いを胸に刻み俺は走った。


それを続けること二年

俺は誰一人として助けることができなかった。

なんだか部活している時が楽しい。ビタミンAクラスでお前だけが頼りなんだ。皆勤賞を一緒に目指そうぜ

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