決意
五話目です。そろそろ投稿する時に緊張しなくなってきました。
「理不尽には理不尽で返せばいい」
「僕が手を貸してやろう」
何が起こっているのか私にはわからない。
今の私は周りから見れば滑稽であろう。
自分の影と話しているのだから。
「それって、どういうこと?」
私は影に問いかける。
「こんな結末は望んでないんだろ。なら僕に力を貸してくれよ。その代わりに君にも力を貸してやろう」
「具体的に言ってよ」
「具体的ねー。そうだな、僕に力を貸してくれたならば、僕が力を使って君の願い事を叶えてあげよう。例えば、永遠の命、名誉の獲得、そして、死者の蘇生とかなんでもいいよ
」
「信じると思う?」
「別に、信じてもらわなくてもいいよ。無理矢理信じさせたところで良好な信頼関係なんて築けないからね」
「一日だけ考えさせて欲しいんだけどいい?」
「まあ、一日くらいなら大丈夫だよ。むしろ一ヶ月とかでもいいんだけど」
「一日でいい。それでどうするか決める」
「おお、いい顔つきだね。いい返事を期待してるよ」
そう言って影の男はどこかへ行った気がした。
「そうそう、そこに寝転がっている少年に会いたいだけなら僕の手を借りずとも簡単にできるよ」
訂正しよう。気がしただけだった。
それにしても影の発言は気になる。死んだ白ちゃんに簡単に会う方だなんて、わざわざ怪しいやつの力になる必要はない。
影は私の影の手を動かし、銃を拾うと私の足元までなげた。
「そいつで頭をぶち抜けばいい。死んだやつに会うには死ねばいいんだ。簡単だろ?」
そう言って今度こそ完全に消えた。
足元には銃がある。
私は一瞬迷ったあと、頭に銃を当てる。
しかし、引き金を引けない。
(ああ、私は何を覚悟して理不尽だと言ったのだろう)
(口先だけで心の中は中途半端に生きようとしている)
私は銃を足元に落とす。
白ちゃんとは会いたいけど私は死にたくない。
白ちゃんが死んでしまったからには私が生きたまま会うなんてあり得ない。
だが、そんな奇跡のようなことを無理矢理できる奴とさっき出会ってしまった。
中途半端な私でも白ちゃんを救えると言ってくれた。
嘘かもしれない。でも、この方法しか私には手段がない。
私は白ちゃんを見る。
これを最後の別れにしたくない。
私は白ちゃんに近寄ると耳元で囁く。
「少し返事に時間がかかってしまうと思うけど必ず白ちゃんに私の気持ちを伝えてみせるから。だから少しだけ待っててね」
そして私は白ちゃんの額にキスをする。
もう、夕刻は過ぎ去り夜になった工場跡地。
そこにいる少女は強く誓った。
横に倒れている少年を救うと
さあ、その後には様々なことがあった。
結局警察はあの後しばらくしたら工場跡地に来た。
どうやらボーズ頭の男の銃の銃声が民間人に聞こえその民間人が通報したらしい。
その後も、父親との感動の再会や白ちゃんの死が公になるなど、本当に様々なことがあった。
そんなこんなで次の日
私は白ちゃんのお通夜に来ていた。
別に何も起こらずに終了し私は誰もいないロビーの椅子に座る。
『どう、決まった?僕に手を貸すかどうか』
窓から差し込む日の光でできた私の影が喋りかけてくる
「私のお通夜があげられて無い時点で察して欲しいんだけどね」
『じゃあ、協力してくれるんだね』
「白ちゃんを生き返られてくれるならなんでもする。そのかわり、使うだけ使って今までの話が全部嘘で生き返らせることができないと言ったときは、あなたのことを死んでも呪ってやるわ」
『大丈夫だって、冗談は言うけど嘘は言ったことないよ』
「そう。で、私は具体的に何をすればいいの」
『そうだね、まあ話すと長くなるからさ続きはここでしようよ』
そう言うと私の影は何かを投げてくる。
そういえばこの前も銃を投げていたな。影ってこんなに自由度高いのかな?
そう思いながら私は投げられたものを両手で受け止める。
投げられたそれはメモ紙と何かの鍵だった。
『明日の正午にそこで話をしよう』
よく見るとメモには住所と簡単な地図が書いてある。
『あと、手伝ってくれるお礼に素敵なプレゼントをあげよう』
そう言うと影は起き上がり…起き上がり⁉︎
真っ黒な手で耳を叩く
「痛い。何してるの……え?」
「どうかな僕のプレゼントは気に入ってくれた?」
音が聞こえる。声が聞こえる。私の声って自分で聞くとすごくイケボに聞こえる。
「返事くらいしてくれたっていいじゃないか。全く、じゃあ明日の正午にその住所のマンションに集合だから忘れないでね」
そう言って影は私の影になる。
次の日
ちょうど今白ちゃんのお葬式をやっている時間帯。
私はお葬式には出ずに一人家にいた。
今の時刻は十一時。指定の住所までは二十分ほどでつくのだが、万が一のことを考えて早めに行く。
ふと、ゲームセンターのの扉が開かれる。
その瞬間ものすごい音が無差別に私の耳に入ってくる。
おお、これが一般人の感じ方。
そして、私は耳を塞ぐ。すると周りにいる人の心の声が聞こえてくる。
どうやら能力はなくなってないらしい。
耳を閉じると発動する使い勝手のいい能力になった。
そんなこんなで歩くたびに何かに感動してしまう。
ドアの開閉の時とベルの音、空を飛ぶ飛行機の音。
白ちゃんを通して聞いていた音がよりクリアになって私の耳に届く。
新鮮だ。
そう思い私はその場で立ち尽くす。
時計から鳩の鳴き声が鳴る。
(へえ、あの時計は十二時になると音がなるんだ)
私は鳩の鳴き声にしばらく身を委ねていた。
ん?
いや、待てよ。
十二時って何かあったような…
私は全速力で走る。
ああ、風を切る音が気持ちいい。
じゃなくて、急がないと、あの影の気が変わったら大変だ。
ハァ…ハァ…
なんとかついた。
近くの時計を見ると十二時五分となっている。
多分笑顔で許してくれる範疇のはずだ。
そう思い私は目の前のドアを見る。
このドアが私の人生を変えてくれるかもしれない場所への入り口だ。
私は大きく深呼吸をして、そのドアを開けた。
ここからは私の非日常だ
第一章の閉幕です。まあ、クズみたいな小説ですが見てくださっているみなさんよろしくお願いします