とことん運のない今日
この小説の略称を募集してます。候補は
「あえうら」
「うらかき」
「ダークネススピリッツ」
です。様々な意見を募集してます
さあ、俺の非日常は終わらない。今日はとことん厄日らしい。
『お前の娘は預かった。返して欲しければ一千万よこせ』
その電話の声を聞いて俺は反射的に部屋を出て外へと出る。
ユウの父の制止の声も今の俺には届かなかった。
俺はやみくもに走っているわけではない。
そうある場所へと向かっているのだ。
そこは立ち入り禁止の工場跡地。
悪いやつは大体ここにくるだろうという浅い考えでここに来た。
しかし、工場跡地を立ち入り禁止なのでほふく前進ではいると、奥から声が聞こえてきた。
その声の中心はどうやら奥にある倉庫からだった。
俺はコンテナの影に隠れて様子をうかがう。
倉庫の中にいる人は六人だ。
高校生のような人が三人
ボーズ頭でチャラそうな人
大男
そして、縄で縛られているユウの姿があった。
(ユウ)
そう心の中でつぶやくと、ユウがこちらを見て一瞬笑顔になりかけたが、すぐに真剣な顔になりそっぽを向いた。
(危険だから逃げろってことかよ。なめんなよ絶対に助け出してやるからな)
すると今度こそユウはこっちを見て笑顔になった。
その時急に大きな声が聞こえる。
音源は倉庫の中の高校生らしき人のうちの一人だった。
「俺たちが誘拐して、俺たちが電話をかけて、俺たちが匿ってやって、そこまでして何もやっていないお前たちと山分けで五百万ずつという約束だったのに、それすらないってどういうことだよ」
後ろの二人も頷いている。
ボーズ頭の男はその言葉に特に動揺した気配は見せず懐から銃を取り出すと3回引き金を引いた。
倉庫に静寂が訪れる。
「さあ、お嬢ちゃん行こうか」
静寂を破ったのはボーズ頭の男だった。ユウに向かって手を差し伸べる。
その手にユウは思い切り噛み付く。
ユウの目はこちらを見ていた。
その目は『逃げろ』と、訴えていた。
(逃げるに決まってんだろ。待ってろよ今警察を呼んでくるからな)
そう思って逃げようとした時、悲鳴が聞こえた。
「なんなんだよこいつ。急に噛み付いてきやがって」
また、ユウ達の方をみる。そこにはボーズ頭の男と大男に蹴られているユウの姿があった。
(クソッ、何が親友だ。何が惚れた女だ)
コンテナを横切るボーズ頭の男が見える。
(そいつが傷ついてるところを見ても)
足に力を入れて思い切り走り出す。
(平気な顔できるやつなんて)
さらにボーズ頭の男に近づく。さすがにボーズ頭の男も俺の存在に気づいたようだ。
(親友でもなんでも)
俺は拳をボーズ頭の男の顎に当てる
「ねえじゃねえか」
そのまま拳を振り抜く。
ボーズ頭の男は大きく吹っ飛び地面に頭を打ち付け気絶する。
その時ボーズ頭の男の懐から銃が飛び出て、俺の足元に転がる。
大男は焦ってポケットからナイフを取り出す。
「お前は誰だ」
俺は足元に落ちている銃を拾い、銃口を大男に向けて言う。
「主人公だ!」
その言葉に威圧されたのか大男は後ずさる。
しかし途中で尻餅をつき動けなくなる。
俺は銃の引き金を引こうとする。
その時
「待ってくれ。俺が悪かった。これをやらないと殺されるんだ。だから許してくれ」
大男がわめき始めた。だが、
「俺には関係ない」
俺は指に力を入れて引き金を引こうとする。
すると、大男は土下座をして泣き始める。俺は唇を噛み、銃を足元に落とした。
その時大男は人が変わったように笑始め、俺の腹にナイフを突き刺した。俺は地面に倒れこむ。
「アハ、アハハ、アハハハハハハハハ」
大男は狂ったように笑い、そのまま走ってどこかへ行ってしまった。
(はあ、かっこ悪いなぁ俺)
(ユウにこんな姿見せられないな)
(ユウ)
急に俺の目から涙がこぼれる。
(ユウに会いたい。話したい)
(ユウ、ユウ、ユウ!)
急に俺の額に水が落ちる。
(雨か?)
水の落ちた方を見るとそこにはひとがすわっていた。
「ユウ…か…?」
俺の視界は霞んでいてよく見えない。
不意に俺の右手が暖かくなる。
「うん、そうだよ」
「そうか…」
「なあ…ユウ…」
「なに?」
「俺…ユウのことが…」
「好きだ」