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あえてその裏をかく  作者: @
最後
27/29

それぞれの思い

二話連続投稿の最初の方です。読む時に気をつけてくださいね。こちらが先ですよ。

静まり返り風さえない駅前。その静寂の中一つの若い男の声が響き渡る。


「君の望みはなんだい?」


その声は建物に反響し、やがてだんだんと小さくなっていき、消える。

まるで夜の闇が音を飲み込んでいるかのようだ。

そんな例えをしていると自分もこの闇に飲み込まれるのではというあり得ない想像をしてしまい微かに身震いする。


ふぅ…ここで怖気付いちゃダメだ。やっと手に入れただった一つのチャンスなんだから


私は大きく息を吸い込んで心を落ち着かせた。多少震えも止まり体が軽くなったような感じがする。


「早く言ってよ。時間切れみたいなのもあるかもしれないよ」


私の前の若い男の声で話す黒い塊…暗闇がそう言って急かしてくる。


「じゃあ言うね」


私は最後の決断をして暗闇の方へ歩いて行く。

暗闇との距離が30センチくらいまでに縮めたところで私は立ち止まった


「私の望みは…」


「うんうん」


「白ちゃんを生き返らせること」


「だよねだよね」


「だった」


「そうだよね。過去形だよね。………だった?」


そこで初めて暗闇はおかしいことに気がつき首を捻る


「あれ?おかしいな。前に聞いた君の望みとは違うような気がするけど。それよりも大切な望みでもできたのかい?」


その質問に対して私は首を横に振る


「ただ、私は命というもののあり方を学んだだけだよ」


「ん?さらにわけが分からなくなってきたよ。結局君の望みは何なのかな?」


「私の今の望みは白ちゃんと会って普通に話すこと。ただそれだけで満足だから」


「それだけでいいのかい?生き返らせることもできるよ。急にそんなことを言われると逆に気になるよ」


その暗闇の言葉に私は軽く笑いながら返す


「いや、いざ生き返らせようとするとさ、考えちゃうだよね。白ちゃんの意思とか。命の意味とか」


「ふんふん。何を言っているのかさっぱり分からないけど一応頷いておくよ」


その通りに適当に首を縦に振りながら相づちをうってくれている


「それに私だって生き返らせたい。けど、人の記憶を改竄して、今までと同じような関係をまた作れたとしてもそれはきっと同じじゃない」


続けて私は言う


「暗闇さんに作られた偽物の友情だよ」


「んー?友情とか言われても僕わからないしなぁ」


暗闇はそんな気の抜けた返事しかしない。まあ、もともと暗闇に訴えるようにして言っていないから別にいいのだが

そして、また、自分の気持ちを整理するように再び口を開く


「そんな中でも必死で生きて、生きがいを見つけて、思い出をいっぱい作って」


「白ちゃんはまた死ぬ」


白ちゃんを生き返らせると、また誰かのために無理をして全ての犠牲を白ちゃんだけが背負いそうな気がする。


「だから、私は白ちゃんを生き返らせない。でも、少しでいいから話させてよ。まだ言い残したことが山ほどあるから」


「うん。大体の事情はわかった。つまり君の友人を生き返らせると、そいつは幸せになることはできないということなんだね」


私は頷く


「うーん。まあ、人のために頑張るとか僕には正直よくわからないんだけどさ。まあ、卑弥呼の礼もあるしなるべく君の意思を尊重しよう」


「ありがとう暗闇さん」





ーーーーーーーーーーーーーーーー


「じゃあ、最後にこの言葉を捧げようか」


俺は急すぎる展開にただ口を開閉させることしかできなかった。だってずっと仲間だと思っていた奴から銃を向けられてるんだぜ


「物語はいつだって唐突だ」


そう言って今まで俺を捉えていた銃口はスーッと動き今度はシグマのこめかみに触れる


「おい、なにしんてんだよ」


かすれ声だがやっと声が出てくる。


「やめろよ」


次に起こる事象を何通りも想像してみるが全てとある一つの結果に向かっている


「悪ふざけはよそうぜ。あんまり面白くねえよ」


そうやって語りかけるとシグマはニコッと笑いかけてきた。まるで聖母のような安心のできる笑みだった。俺も心の底から安堵して笑顔を返す。


「バイバイ」


今まで聞いた中で最も重い銃声が鳴り響いた。


数秒間音がこの世界からは消えた。そんな風に思えるほど衝撃的だった。やっと俺の耳に届いた音はドサリという何かが地面に倒れる音だった。


「は?嘘だろ。だってお前は叶えたい望みがあるんだろ。おかしいだろこんなところで死ぬなんて」


俺はその場に泣き崩れる


「悲しいだろ仲間が死んだら」


俺の目頭が唐突に熱くなってくる。何もできなかった自分の無力が悔しい。俺は結局シグマに何もしてやれなかった。迷惑ばかりかけてしまった。なのに…


「ああ?終わったー?終わったみたいだな。いろんな意味で」


そこであくびをしつつお腹をボリボリとかいて歩いてくる白い人物が来る。

白光だ。

俺はその緊張感のないしゃべり方に苛立ち、白光を睨みつける


「おいおい。そんな凶悪な顔すんなって、俺はなんか悪いことでも言ったか?俺はただ話が終わって更に色々と終焉していたのをありのままに伝えただけだぜ」


バカ正直に言うことに悪気はないのだろうし、特に悪いことでもない。ただ気に食わない


「おい、白光。この場合どうなるんだ」


俺はその苛立ちを必死に抑え白光に問いかける


「そうだなぁ。この場合は見事に生き残った勇者の君が生き返るということになるな。あの女と半分とか言ってたがもはや女はいねえ。なら従来通りの方法に戻すしかねえってわけだ」


「そうか、俺は生き返れるのか」


実感わかないな。生き返るだなんて夢みたいだ。ユウともまた昔みたいに遊べるかなぁ。また昔みたいにアスファルトに足つけて過ごすのか。また昔みたいに楽しく生きることが出来るのか


「なんか、やだなぁ」


多分生き返ったら楽しいだろう。親も友達もユウも俺に親切にしてくれて、もう、命をかけた戦いなんてしなくていいのだろう。でも、それは俺だけしか幸せにならない。今まで死んだ奴らだってこんな風に幸せになりたかったに違いない。なのに俺だけ…


「はぁ…。俺はまたこの罪悪感から逃げるのか。なんだか、この島に来てから逃げてばかりだ。敵の攻撃から逃げたり、自分から逃げて感情を爆発させたりしてさ」


自分で言って情けなくなる。俺って本当にダメなやつだ


「けど、こんなダメなところも全部ひっくるめて俺だ。自分を肯定しないと前へは進めない。シグマは多分自殺したことについて問いただしたら『私がやりたいからやった』とか言うんだろうな」


シグマは自分というものを知っていた。そして、自分自身を好きでいた


「なら俺はこの罪悪感から逃れるために今この場でシグマを生き返らせて従来の約束通り二人とも少しの時間だけ生き返らせろ!」


全くシグマは利害の一致だけの関係とか言っときながら少しお節介なんだよ


「本当にそれでいいのかよ?生き返るチャンスだぜ」


「うるせえ!これは俺のためにすることだ。俺がこうしてぇんだよ!」


これでもう生き返るチャンスは消え去ったな


「じゃあ、この女をまずは生き返らせなきゃな。ったく。ダリィこと押し付けやがって」


そんな風に愚痴をこぼしながら白光はポケットから右手を出すとキラキラと光る微細な粒子が集まってきた。そして、その手を軽く振ると粒子が黒い女性を包みこみ大きく発光する。そのあまりの輝きに俺が目を細めた。十秒くらい発光していただろうか。段々とその輝きは弱まっていき、やがて粒子は消えてなくなった。


「うーん。さあ、ここは天界かしら」


数秒前に聞いていたはずの声なのに懐かしいと感じる。そいつは自由気ままで適当で冷たいけど、優しくてお節介な俺のパートナーの声だ。

俺はそのパートナーに声をかける


「シグマ。違うぞ。ここは天界じゃなくて、俺たちが戦っていた島のロストだよ」


そう言うとシグマは辺りをキョロキョロし始め最後に俺をじっと見る


「おかしい。私はここで綺麗にカッコ良く自殺したはずだぞ」


「そこを俺が華麗にスパッと生き返らせたんだよ」


「お節介ねぇ」


「お前に言われたくねぇよ」


そして、二人で笑い合う。そこに割り込む影が一つ。いや、光だった


「はいはーい。会話の時間はしゅーりょー。てめえらをさっさともといた場所に叩き落とすぞー」


この白光の空気の読めなさにも慣れてきた。


「じゃあ、まずは男の方から叩き落とす」


そう白光が言うと先ほどと同じように白光の右手に光の粒子が集まり、それは俺を包み込む。多分数秒後にはここにはいないだろう。なら最後にシグマにお礼でも言っておかないとな


「おい、シグマ」


「何〜?」


「お前のおかげで弱い自分が好きになれた。ありがとう」


「あんたが弱いなんて言ったら私なんて弱小よぉ」


そう言ってシグマは笑い出す。つられて俺も笑う。

そうしている間にも粒子の輝きが強くなり始め、突然黒に変わる。


「あ、干渉されたわ」


白光がそんなことを言う。え?なに?干渉って。このどす黒いの絶対やばい感じだよ。


「まあ、なんとかなるだろ」


そんな適当でいいのかよ!


「まあ、グットラック」


「グッドラックじゃねぇぇぇ」


そう叫んだと同時に俺の周りにあるどす黒い膜はバリッと剥がれる。


最初に肌で感じたのは冷たく細く流れる風だった。そして、そのあと俺は周りを見渡してみる。ボロボロに見捨てられた建物が乱雑に置かれているような場所だった。俺はこの場所を知っている


ここは工場跡地。俺の死んだ場所だ。


こんな場所でも今は懐かしいと感じる。この工場跡地があるということはここはかつて俺が住んでいた街か。本当に懐かしく思う。


「白…ちゃん…?」


そんな風に感慨に浸っていると不意に後ろから声をかけられた。

俺は体ごと振り返る。そこには灰色の上着をきて、素っ気ないズボンを履いた女の子がいた。

俺はこんな色気もクソもない女の子を一人しか知らない


「久しぶりユウ」


はい、次で最終回です。まだ俺の中でウラカキを終わらせたくねぇ!という方は明日読みましょう

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