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あえてその裏をかく  作者: @
獣の衝動
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獣の衝動

さあ、この章のラストですよ。そしてテスト勉強中です

人間とその他の動物の違いとは何か。それは、判断能力の差だと思う。人間は歳を重ねていくごとに判断能力が高まってくる。例えば、人間以外の動物たちは判断というものが乏しいためお腹が空いたらご飯を食べ、排便したくなったらそこらへんに吐き散らす。だが、人間は違う。ご飯が食べたくなっても、この状況でそれはしてもいいことなのかという判断が無意識のうちに行われている。だから、仕事中にご飯を急に食べる人なんていないし、どこでも気が向いた時に排便する人なんていない。

もう一度言うが、人間が人間であるのは判断力があるためだ。ならば、理性を失い、本能に身を任せた人間は人間というよりむしろ獣と言ったほうが適切なのかもしれない。











「殺す」


少年は小さくそう呟いた


「あ?なんだって?聞こえないよう。それと、話す時は相手の目を見て話さないとダメでしょ〜」


リスタは茶化したように言う。それに対して少年は顔を上げ、叫ぶようにして言う


「殺すっつったんだよ。この程度も聞き取れなかったのか?てめえの耳は飾りかよ」


その怒気を隠さない言い方にリスタは若干気圧される


(今この距離でもシグマなら耳がいいから聞こえていたんだ。シグマなら…)


そうして、少年は唇を噛む。


「絶対に殺す」


「野心があるのは若いやつの特権だが、高望みはいただけないな」


今度は聞こえたらしく少年の言葉に返事を返す。


その行為が少年をさらにイラつかせる。だが、ここで言い合いになっても無意味だと悟り、少年は右手の銃の銃口をリスタに向け、腰を落とし山を駆け上がる準備をする。


不気味なほどの静寂が生まれる。すでに日はほとんど落ちており、夜特有の嫌な風が流れる。


その風のせいか否かは分からないが、少年の頬を大粒の汗が流れ、顎まで到達する。一旦その粒は重力に抗うが、すぐに真下に落ちる。


それが、地面に到達し無数の小さな水に弾けた瞬間


「うぉァァぁぁぁぁぁぁぁ」


少年は地を蹴り山を駆け上がった。


その無鉄砲に突っ込んでくる少年に落ち着いた様子で右手の銃を向けようとする。しかし、リスタはそれだけしかしない。少年を見て固まっていた。


少年は走っていた。体制を限界まで低くして顎が地面につきそうだ。だが左手を地面につけてバランスを保っている。


まるで、狼みたいだ


しかし、リスタはその四足歩行ならぬ三足歩行による走りに驚いて固まったのではない。リスタは少年の目を見ていた。その、獰猛で殺気を凝縮したかのような目を。


リスタは本能的にやばいと感じたのか思い出したかのように銃を持ち上げた。


パン!


乾いた軽い銃声が辺りに響く。


リスタはこの光景に唖然としていた。

リスタの銃は後ろに大きく吹き飛んでいる。そして、少年の銃口からは煙が上がっていた。

つまり、少年が一足早く引き金を引き、リスタの銃を弾き飛ばしたのだ。


(今のだって、シグマだったら余裕でかわしていた)


そんなことを思いながら、リスタが呆然としている隙に少年はさらに疾駆する。

その疾駆している間にも少年は引き金を連続して引いていた。


(くそ!出ろよ!早く殺させろよ!早く、もっと早く)


少年は追撃を出来ないことをもどかしく感じていた。

やっとリスタが正気に戻る。すでに距離はかなり縮められていた。


(もどかしい!早く!早く撃てるようにしてくれ!)


リスタはこういう時だからこそ焦ってはいけないと思ったのか、目を閉じ、一つ深呼吸をして、落ち着いて銃を持ち上げる。多分神経も研ぎ澄まされているだろう。


(もどかしい!もどかしい!もどかしい!もどかしい!もどかしい!)


リスタはゆっくりと瞼を持ち上げた。

初めに飛び込んできたものは回転しながらこちらへ飛んでくる物体だった。

リスタはほぼ反射的にその物体を撃ち抜く。その物体とは銃だった。それを撃ったことにより銃の中の火薬に引火し小規模な爆発が起きる。


(今のだって、シグマなら俺が投げた銃を反射的に撃つことなんてない。あいつはみんながやることとは逆のことをしたがるから)


予想外の出来事に落ち着いていたのに焦るリスタ。意味もなく左手の銃の引き金を引いている。


(シグマなら、こんなところで焦ったりしない。あいつのメンタルは半端ねえ。すぐに次やるべきことを見つけ実行する)


とうとう諦めたのか、リスタは俺と同じように銃を投げつける。それを俺は軽々とかわす


(シグマだったら、戦闘中にやけになったりしない。それは生き残る可能性を棒に振ることだとわかっているから)


とうとう少年はリスタの目の前まで来る。リスタは「ヒィ」という短い悲鳴を発する。そして、目をぐるぐると回し始める


(シグマなら迷わない。自分の決断に絶対の自信を持っている)


少年はリスタの胸ぐらを掴むと一気に近くの岩に背中を叩きつける。その衝撃でリスタは二、三度咳き込んだ。しかし、少年の攻撃はここで終わらない。その小さな手を力一杯握りしめ大きく振りかぶる


「雑魚が調子に乗ってんじゃねえ」


静かにそう言い一気に拳をリスタの顔面に向かって打ち下ろした。


その衝撃でリスタの後頭部が岩にぶち当たり、意識が朦朧としている


「なんだっててめぇみたいな雑魚がシグマを殺したんだ」


少年の攻撃は一撃では終わらない。もう一度右の拳を振りかぶるとまたもやリスタの顔面をぶち抜く。


「なんで、てめぇみたいなクズが生き残ってんだよ」


すでに声のボリュームはだんだんと上がってきていた。


「ちょ〜っと待とうぜ。それ以上やったら死んじまう」


知らねえよ


「おい…だからやめろ…意識が一瞬飛んだぞ」


うるせえ黙れ


「やめてくれ…お願いだ…。死にたくねぇよ…」


しかし少年の拳は緩まない。それどころか、さらに拳の勢いが強まっていっている


「殺さないでくれ…」


「知らねえよ。てめえには命乞いする権利すらねえんだよ」


ひときわ大きな鈍い音が辺りに響いた。














あたりに連続していた打撃音が止まった。それはもう日が落ち、辺りは暗くなってしまった時だった。もう殴り始めてから途方もない時間が過ぎている


少年の右腕は痙攣し、もう十分に動かすこともできていない。何度も力一杯殴ったためだ。


リスタはと言うと死んだ。少年が殴った顔面はその原型を思い描けないほどボロボロにされて、岩に何度も当たっていた後頭部は血のほかに、何やらよくわからないらないものまで飛び出している。


結果的には岩に後頭部が何度も当たって死んだのだろうが、何度もぶつけたのは少年だ。


少年は人を殺した。その人間としての最大の禁忌をただの激情に流されて殺した。

もう一度言う。少年は人を殺した。


少年は……いや


「俺が殺したんだ」


何逃げてんだよ俺は。何が少年だよ。全部やったのは俺じゃねえか。


一つの感情に身を任せて。


自分のしたくないことだからと言って逃避して。


偽善振りかざして我が身を守った。


でも、違う。


本当のことを言えよ。


なんでこんなことをしたんだ?


「なんでこんなことしたって言われても」


俺は少し前の時間に遡る。なんで、こんなことになったんだ?最初はシグマが死体になって転がってきて、あいつが舐めたことを言ってそれで


「殺したいと思った」


そうか…。行動の正当化とか、美化された解釈とかしようとしても無理だ。だって自分の気持ちに嘘はつけないから。


「ハハ、人間じゃないみたいだ」


その瞬間俺に脱力感がおとずれる。疲れたのか?と思ったが違う。遠くに人影が見える。

よく自分の体を見ると右足の太ももに小さな穴ができていた。そこから血が溢れ出ている。


ああ、なんだ。ただの罪の償いの時間か…


俺はゆっくりと目を閉じる。


視界が暗闇に支配される。その分聴覚に意識が行った。ザッザッという足音がだんだんと近づいてくる。

ザッ!という音が俺の耳元で聞こえた。俺は最後の時を覚悟する。カチャカチャと音が聞こえ明らかな殺意が伝わってくる。

そして、ズガンという重い銃声が俺の耳に届いた。


痛みなどない。あるのは静寂だけだ。言い知れぬ浮遊間のようなものが痛い。なんか、急に脇腹のあたりが痛い。


「痛いっつってんだろーが!」


俺が目を開けて叫ぶと俺の脇腹を蹴っている人が見えた。第一印象は黒い。そして、ふつくしい


「やっと起きたの?この寝坊助さん」


「な、シ、シグマぁ?」


そこにいたのは紛れもない俺のパートナーであるシグマだった


「どうして生きてんだよ」


「ンだよ。まるで死んでいた方が良かったみたいな。せっかく助けてあげたのに」


そして、シグマは親指でどこかを指差す。そこを見てみると倒れている人型の何かというより、人がいた。多分俺の太ももを撃ち抜いたやつだ


「ああ、助けてくれたのかありがとう。じゃなくて、お前はなんで生きてんだよ」


「思い返してごらん。私たちの持っている武器はなに?」


「あ?武器?そんなもん銃と暗視ゴーグルに足音のでない靴。あとはアジトに入るための鍵か」


「あともう一個あるじゃん。ほら、最初にあんたが持っていたさぁ」


俺が最初に持ってた?んー?確かなんか役に立ってたようなー。あの時は来てからすぐに殺されたからなぁ。


ん?殺された?


「あれか?あの一度だけ生き返ることのできる指輪か?」


するとシグマはニッと笑い親指を立てて


「正解!」


と言った。


そうか、生き返ったのか、ならまだ俺のパートナーは生きてるんだな。

そんな風にホッとしていると新たに一つの疑問が湧き上がった。俺はゆっくりと立ち上がり質問した


「おい、じゃあ、お前はいつから意識を取り戻していたんだ?」


するとシグマはサラリと言う


「あんたが声を上げながらリスタに突っ込んで行くところくらいからかな」


ほとんど冒頭じゃねえか。今起きたのならば知らん顔できたのに


「はぁ〜。なら見たんだろ俺を。俺は人間じゃないんだ。殺すことに何も感じないナニカなんだ」


「だから?」


「だからお前は俺に関わらない方がいい」


そう言って俺は唇を噛む。これでシグマともお別れだ。そうやって下を向くと急に頭をパカンと叩かれる


「あーもう。そんな台詞誰も求めてないって。まったくもう。あんまり嫌な雰囲気作ってんじゃねえよ。いいか?よく聞けよ。私はあんたが人間だから一緒に行動してるわけじゃないから」


続けてシグマは口を開く


「さらに言うと、私は自分の過ちに向き合って悩んで苦悩する奴は私なんかよりよっぽど人間らしいと思うけどね!」


そう言って、シグマは俺の腕をつかむとズンズン頂上に向かって歩いて行く


「お、おい!何すんだよ!」


「クソみたいなネガティブ野郎はこの山の頂上まで行って己の小ささを知れ!」


そして、シグマは俺をブンと投げた。俺は地面をゴロゴロと転がり、頂上の地面で仰向けになる。撃たれた太ももがかなり痛み視界が霞んでしまうが、すぐに元に戻った


「星が綺麗だ」


仰向けになった視界からはキラキラとまたたく星たちが見えた。星座とか星の名前とか全く俺には分からないが、今まで見たことのないほどの量の星だ。


「すげぇ」


俺の口から自然と感嘆の言葉が漏れる


「すげえだろ。この島は自然も豊かだしよ。結構すんげえ島なんだぜ」


「そっかぁ…。ん?」


俺が後ろを振り向くと白光がいた。


「あら、白光じゃない。偉大なる天使様が何の用?」


シグマもやっと頂上にたどり着き目に入った白光に話しかける


「ああ、戦いが終わったからわざわざ来てやったぞ」


「「え?」」


今戦いが終わったって…マジで。もう終わったの。俺生き残ったのか。なんか妙な気持ちだな。嬉しいけどこの嬉しさを胸の奥底にしまいたいみたいな感じ。


「じゃあ、少しだけ生き返らせればいいんだよな」


そう言って怠そうに右手を持ち上げるが別の手が右からが伸びてきたため一旦動きを止める。


「ちょっと待ってよ白光」


「どうした?くそビッチ」


「やっぱりここまで来るとお互い思い出話とかあるからさ。ちょっと待ってくれない?」


「へーいへい」


そしてまた怠そうに頂上の端に行って寝転がる。


「お前から話したいなんて珍しッ…」


シグマは俺に銃を向けていた。あまりの驚きに息が詰まる。あまりの衝撃で声の出し方さえ忘れてしまう


「じゃあ、最後にこの言葉を捧げようか」


シグマはそのままの体制で話し始める


「物語はいつだって唐突だ」






「バイバイ」












その頃関東地方にある小さな町の中にあるひっそりとある駅の前にて人型の影と一人の少女が相対していた。


「君の望みはなんだい?」


影がニヤニヤ笑いながらそう言った。


さあ、終わりましたね。白ちゃんかっこいい!すみません。かっこ悪いです。思い上がりました。

とにかくがんばってテストに臨みます

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