約束の宴
さあ、やってまいりましたよ。この頃修学旅行の計画が進んで行き、情緒不安定なtayuuです。楽しみで楽しみで夜もねれない。の逆で嫌で嫌でしょうがない
合コン
合コンとは男と女が複数集まりアハアハすることである。
さあ、私はいつもの制服ではなく、普通の私服を着て駅前の木の根元でボーッとしている。まあ、私服といっても本当に平凡なもので適当に選んだズボンにたまたま近くにあったから着ているTシャツ、そして、お気に入りの灰色の上着を羽織っているという出で立ちだ。
冷たい風が私の体温を奪っていく。はぁ、こんなに寒いなら意地になってお気に入りの上着じゃなくてジャンバーを着ればよかったなぁ
そんな風に若干後悔していると不意に私の肩が叩かれた。そちらを振り向くとツバキが最高の笑顔で立っていた。
「こんばんわツバキさん」
「はいはい。こんばんわ〜。ごめんね私が急に合コンなんて言って付き合わせちゃって」
「いえ、別にいつも暇ですから大丈夫ですよ」
「そう言ってもらえるとありがたいよ」
「それにしても急に合コンなんてどうしたんですか?」
すると、ツバキはニッと笑う
「ん?気になる?」
「気になります!」
率直な感想を述べる。
「うーん。まあ、いずれわかるから待っといてよ。心の声とかで私の声聞いたらダメだからね。楽しみが減っちゃうよ」
「えー、まあ、わかるなら楽しみにしておきますけど…」
「うん。ありがと。あ、二人とも来たよ」
ツバキの指差した方を見るとスマホをいじりながら歩いてくるレンと生まれたての子鹿みたいに震え続けるヒロミがいた。
「あんたたち遅いよ。何してたの?」
隣にいるツバキが文句を言う
「いや、まあ、ヒロミを連れてくるのに苦労してな…わかってくれよ…」
それに対してレンはなんだか弱気だ。ヒロミが何かあったのだろうか?
「ヒロミさん!どうかしたんですか?きっと合コン楽しいですよ!」
私は明るくヒロミに言う。しかし帰ってきたのは呪詛めいた呟きだけだった。
「初対面の女子と話す。初対面の女子と話す。初対面の女子と話す。ァァァァァァァァ」
なんか、やばい感じだ。
「おい。お前わざわざ律儀に地雷を踏むなよ。今のヒロミに合コンは禁句だ。初対面の女子と話すことに緊張しまくってさっきトイレで吐いてたからな」
な…ヒロミにとって合コンが生死を分ける重大な行事だったなんて…
「うん。じゃあ問題もなさそうだし合コンの会場に行こうか」
そう言って歩き出すツバキ。ヒロミのこの状況はさして問題ないらしい。ヒロミはレンがなんとか手を引っ張ってゾンビのように歩かせている。
数分後
「よし、ついたよ。ここの部屋を借りて合コンするから」
私たちの目の前にあるのは『すごい飲食店』という名前の飲食店だった。多分今日行った『すごいシネマ』の派生か何かだろう。まったくもっといい名前はなかったのだろうか。それから私たちは店の自動ドアをくぐり店の奥にある一つの部屋の前に来ていた。
「あぴゅー。ツバキ〜。今からでも帰らないか?まだ間に合うぞ」
弱音を吐いているのはもちろんヒロミだ。
「この後に及んでなに言ってるの!じゃあ開けるからね」
ガラッ
勢い良く扉を開けるとそこには二人の男女がいた。というか、そのうちの女の人を私は知っている。
「ひ、卑弥呼さん!」
「お、やっと来たか。全くこの男と一緒におるのは窮屈でな。待っておったぞ」
「この男?知り合いですか?よかったらこの方を紹介していただけませんか?」
卑弥呼と対面するように座っている男には見覚えがない。卑弥呼はずっとこの男といたようだし名前くらいは知っているんじゃないかと思って卑弥呼に問いかけたのだが返してきたのは意外にもその男の方だった
「んー、少しショックかな。まあ、僕だっていつもの格好じゃないわけだし仕方ないのかもしれないけどそれでも分かるっていうのが真の友情だと思っていんだけどね」
そう言って笑う男。いや、笑うという表現は正しくないのかもしれない。その笑顔に感情はなく無機質すぎたからだ。そして、この独特の言い回しに粘つくような雰囲気。もしかして…
「もしかして…暗闇さん?」
「そうだよ。暗闇だよ。全く忘れられたのかと思って怖かったよ。さあ、座って座って。僕は合コンを一度してみたいと思ってたんだ。いやー、誘ってくれてありがとう」
ツバキに笑顔のようなものを向ける暗闇。よく見ると黒の服をきているわけではなく、いつもの影の立体に肌色などの色をつけて人間のように見せているだけだった。
「じゃあ、メンバーも揃ったし合コン始めよっか」
「え?メンバー揃ったって…もしかしてこの六人で合コンするんですか?」
「そうだよ。嫌なの?」
「いえ、嫌じゃないですけど…あはは」
私は笑ってごまかす。いや、だって周りにいる人がみんな知り合いでそれを合コンと呼ぶなんて…ね。
「まあ、それならいいけどさ。じゃあみんなご飯食べよう」
そう言ってツバキがメニューを渡してくれる。どれどれ、どんなメニューがあるのかな?どのくらいすごいのか見極めてやるー。
『この世の全ての料理を取り揃えております』
メニューにはこれしか書かれていなかった。これはつまりどういうことだろうか?
「これってなんでも作るってことかな?」
私が答えを導き出す前にツバキが結論を言う。え?それすごくない?
「じゃあ、カレー料理でも、中国の民族料理でも、青汁でも作ってくれるってことですかね?」
「うーん。まあ、そうじゃない?まあ、店員きたらわかるって」
ツバキがそう言って店員の呼び出しのボタンを押す。
「ご注文何にいたしますか?」
すぐに店員が来た。めちゃくちゃ早い。確かにすごい飲食店だ。
ツバキ「じゃあ、私はミートボール七十個でお願いします」
レン「この店で一番安い品を用意しろ」
ヒロミ「水」
卑弥呼「わしはカルボナーラじゃ」
暗闇「んー、そうだね。じゃあ僕は食パンでも食べておこうかな」
ユウ「私はハンバーグでお願いします」
店員「承りました」
なんかとても支離滅裂なオーダーだけど果たしてちゃんとできるのかな?
「お、ハンバーグきたよ」
ツバキがそう言ってくれる。早い!早すぎる!どうやったらそんなに早く作れるの?よく見たらみんなの前にも自分の頼んだものがあるし…あ、レンだけなにもない。
「この店で一番安いのが店の景観って、やめてくれよ。確かに無料で楽しめるけどさ」
なんか自業自得という言葉が当てはまりそうな感じだ。ご愁傷様です。
「じゃあ、乾杯しようか。はい!みんな!グラスは持った?」
みんなが水の入ったグラスを持ち上げる。
「……ねえユウ?ここは乾杯でいいのかな?それともなんか一言言った方がいいのかな?」
「え!えーと、やっぱりなんか言った方がいいんじゃないですかね?」
「そう?じゃあ、私から一言。まあ、みんな急な誘いに応じてくれてありがとう。みんなが暇人でよかった!かんぱーい!」
「「「「「乾杯」」」」」
なんだか言葉に若干の棘があるような気がしたが私たちの楽しい合コンが始まった
暗闇「ねえ、君早く死なないの?僕困ってるんだよ」
卑弥呼「なんじゃ。今思いっきり楽しい合コンが始まる!みたいなノリだったじゃろうが。なんでそう雰囲気をぶち壊すのじゃ」
ツバキ「まあまあ、暗闇さんだから仕方ないよ」
卑弥呼「む、それもそうじゃな。すまんかった暗闇よ」
暗闇「うん。僕でも傷つくことはあるからね。もうちょっと優しく言ってくれたら嬉しいんだけど」
レン「すみませーん。なんか食べ物ください。てか、こんなメニューの書き方じゃ値段分からないでしょ」
店員「時価となっております」
レン「時価だと!お前!金を舐めるなよ!」
店員「ついでに今のあなたたちのお支払いしていただく額はこのようになっております」
レン「どれどれ?1996円?思ってたより高くないな。じゃあ俺にはとにかく肉をもってこい」
店員「わかりました。松坂牛ですね」
レン「おい、待てコラ。てめえ、それいくらするんだ」
店員「時価ですので、今はお答えすることができません。誠に申し訳ございません。なのでさっさと頼んでください松坂牛を」
レン「絶対ぼったくりじゃねえか!」
ヒロミ「ブルブル」
えー。みなさん現状を理解していただけたでしょうか?はい。そうです。カオスです。そもそもツバキはなにがしたいのだろうか?
「あの、ツバキさん?」
「だいたい暗闇さんは…ってなになに?どうしたの?」
「あの、この合コンどういう意図があってしているのかなぁとか思ってしまいまして…」
「ああ、それね。それはもう卑弥呼の願いを叶えるためだよ。ほら、卑弥呼って魏志倭人伝とかの記述とかで女千人が世話役で男は一人しか世話役いなかったそうじゃない。さらに外に出ずに引きこもりだったみたいだしね。だから、卑弥呼に足りないものは男女交際!恋愛よ!と思ったわけよ」
「はぁ、何百年も悩んでいたことが恋愛なんてあるんですかね?」
「ん?でも、やって見る価値はあるんじゃない?違うなら違うで別に何が起こるわけでもないし」
「まあ、確かにそうですけど…でもこのメンバーで誰と卑弥呼をくっつけるんですか?」
「愚問だねユウ。ヒロミに決まってるじゃない。消去法で考えてよ」
む、確かにレンはもうリア充だし、暗闇は論外だ。
「まあ、少しヒロミさんがかわいそうな気がしますけど協力します。『卑弥呼ベタ惚れ大作戦』成功させましょう!」
「おー!」
私の宣言に呼応して握りこぶしをツバキはあげる。
「ねえ、王様ゲームやらない?」
私はこのカオスな状況で唐突に切り出す
「なんじゃ?王様ゲームとは?」
それに卑弥呼は食いついた
「えーとね。クジで王様を決めてそれ以外の人が命令に従うっていうゲームなんだけど…どうです?」
「なんじゃ。クジで決める必要はなかろう。わしはもうすでに王なのじゃからな。まあ、傲慢でも慢心することもないわしは人をこき使うなんてせんがの」
「うーん。それだと盛り上がらないし、そのなんていうか…ゲームだし楽しんでいこうよ」
「ゲ、ゲーム…。むう。イマイチ理解できんが楽しい方が良いしな。よかろう!お前の娯楽に付き合ってやるぞ」
「うん。ありがとう!みんなもどうです?やりますか?」
「王様ゲームね。僕はずっと前から興味があったんだ。暇つぶし程度に遊んであげるよ」
「金にならんからあんまりしたくないな。ん?王様になったらなんでもできるのか。そうか。よし、やろう。今すぐやろう」
「ブルブル」
どうやら一応はみんなやる気はあるようだ
「よし!じゃあ、私クジ作ってくるからここで待っててね。ほら、レン行くよ」
「いや、なんで俺が行かなきゃなんねんだよ」
「百円あげるよ」
「全く、世話の焼ける娘だ。三秒で作り切ってやるよ」
そう言って部屋から出て行くツバキとレン。よって今部屋にいるのは、暗闇、卑弥呼、ヒロミ、私の四人となる。率直な感想を述べると……気まずい。どうしたらいいんだろうかこの沈黙。普通に考えたらヒロミに話しかけて沈黙を破るべきだ。そう思いヒロミをチラリと見る
「ガクガクブルブル」
駄目だ。とても話せるような状況じゃない。他に、他に話しかけられる人は!私はすがるように辺りを見回して暗闇を捕捉する。
「ん?どうした?僕に何かついてた?」
うーん。暗闇とはあまり話したくないので却下。と、なると必然的に…
「あの、卑弥呼さん王様ゲーム楽しみですね」
「ん、そうじゃな。王様になれば誰かに死ねと言ったらそいつは死ぬのか?」
「いや、そこは良心に従って法に触れない程度の命令でお願いします」
「そうか。わかった」
「あの、僕に何かついてないの?ちょっと。気になるんだけど」
そうやって談笑していると、部屋の扉がバーンと開けられる。
「よし!クジはできたよ。あとは運に任せなさい」
そいう言ってズカズカとツバキが部屋に入って来た。その横ではめっちゃにやけてるレンがいた。気持ち悪い。
「ねえ、君たち僕の顔に何かついてる?」
「はい、じゃあ、みんなこの紙のクジを一本手にとって、『王様だ〜れだ』で一斉に取るよ。いい?」
みんなツバキの右手で握っている紙の束を各々選び、余ったやつをツバキが左手で持つ
「じゃあ、行くよ」
「いや、ちょっと待ってよ。『王様だ〜れだ』なんてありきたりすぎてつまんないじゃないか。ここは面白い掛け声で取ろうよ。そして僕の顔に…」
「「「「王様だ〜れだ」」」」
みんな一斉にクジをとる。ついでにこの掛け声はヒロミと暗闇だけ言っていない。ヒロミはそもそも口を開けないとして、暗闇は話している途中だったから言えなかったのだ。
「えーと?誰ですか?王様は」
私はみんなに問いかける。私がとった紙には3と書かれてあった。さあ王様は誰なんだろう?
「ふふん。私よ」
ツバキが手を上げる。
「じゃあ、命令するよ。えーと2番と4番がキスをする」
ツバキがとんでもないこと言い始める。
「む、わしが4番じゃが」
「俺2番」
しかも、ちょうど卑弥呼とヒロミだ。
「なんで、二人ちょうどなったんですか?運よすぎですよ」
私は声を小さくしてツバキに話しかける。
「なに言ってるの。私の運がそこまでいいわけないでしょ。こっちには未来がわかるんだからそれを使えばいいのよ」
「ということは?」
「レンを買収して誰が何番を取るかを予知してもらったってわけ」
なるほど…それでレンがニヤついているのか。お金大好きだなぁ
私は横目で卑弥呼とヒロミを見る。
「ガクガクブルブル」
もはやヒロミの震えを止めることはできない
「なんじゃ。接吻くらいでびびりおって遠慮はいらんぞ?」
卑弥呼はまんざらでもなさそうだ。いや、見ると汗めっちゃかいてる。ただの強がりだ。
「はあ。しょうがないの。お前がしたくないのならせんが良いの。 うん、やめた方がよかろう」
そう言ってヒロミの肩に手を置く卑弥呼。なんであんなに勝ち誇ったような顔なんだ
「ガクガクブルブル……ピタリ」
卑弥呼の手が肩に触れた瞬間ヒロミの震えが止まる。どうしたのかと疑問に思っていると、ヒロミが急に立ち上がる。
「なんじゃ。どうしたのじゃ?」
ヒロミは大袈裟に前髪をかきあげフッと笑う
「可愛いな」
ん?今誰が喋った?
「でもそんなに可愛くキスを拒絶されたら無理矢理でもその唇を奪いたくなっちまうな」
周りを見回すとヒロミの口が動いていた。ええ!嘘だ!そんなはずはない。だってヒロミはコミュ障なのだから。
「悟りだ!ヒロミが今日二度目のコミュ障の向こう側を発動させたぞ!」
なにやら、レンが興奮している。まあ、キチガイだから気にしないでおこう
「説明しよう!コミュ障の向こう側とはコミュ障を極め通し真のコミュ障になった者しか使えない究極の技だ。コミュ障の向こう側とはすなわち非コミュ障!発動条件は緊張がキャパを超えるほど高まった時。そう、今のヒロミはコミュ障じゃない!ワイルド系イケメンだ!」
正直わけが分からなかったが、今のヒロミはコミュ障じゃないということだろうか。卑弥呼に言いよる非コミュ障のヒロミを見てみる。
こ、これは!
普段ボソボソとしか話さないヒロミがハキハキと話している。しかも奏でられるのはイケメンヴォイス
普段下を向いて目を合わせないヒロミがしっかりと目を見て話している。
いつもは前髪に隠れてよく見えない顔も髪をかきあげたことによりあらわになり、豪胆な顔立ちの中にも柔和で優しそうな雰囲気を漂わせる。
これは、これはつまり!
ギャップ萌え!
私でさえもときめかせる圧倒的イケメンオーラ
もうすでにヒロミは卑弥呼の唇に迫っている。このイケメンオーラで堕ちない女はいない!堕ちろ!堕ちろぉぉおおおお!
ブツン
ブレーカーが落ちた
しかし、すぐに電気がつく。そこにはボコボコにされて気を失っているヒロミがいた。私の頭もだんだんと冷静になる。なんであんなにテンションが上がっていたのだろう?
「ヒロミがコミュ障の向こう側を使うとヒロミを見たもの全てを狂わせ魅了する。対処法はヒロミを見なければいい」
ということは、私はヒロミを見たから変なテンションになり、ブレーカーが落ちることによりヒロミが見えなくなったためそれが落ち着いたのだろう。
「コミュ障とはまだ無限の可能性を秘めている。俺はまだ研究が足りないな。でも、必ずコミュ障というものを解明してみせる!」
「はいはい。じゃあ、ヒロミが倒れちゃったけど合コンは終わらないよ。楽しんでいこう!」
合コンはまだ終わらない
まあ、その後もいろいろとあったのだが、長くなってしまうので省略します。短くまとめると、その後すぐにヒロミは起きて、何事もなかったようにコミュ障の向こう側の時の記憶を忘れていた。(卑弥呼に殴られたとこは痛いようで、これについては卑弥呼が謝っていた)そして、今回の合コンのお金を払う人を決める勘定じゃんけんをしたり(提案者レン。敗北者レン)じゃんけんで負けた人がみんなに千円払うというプレゼントじゃんけんしたり(提案者レン、敗北者レン)じゃんけんで負けた人がもはや今日持ってきている金を全て失うという闇のじゃんけんをしたり(提案者レン、敗北者レン)した。
「んー、じゃあそろそろお開きにしようか」
「あ?なんでだよ。まだ闇のじゃんけんの二回目をやってないだろ。勝ち逃げすんなよ」
急なツバキの終了宣言にレンは文句を言う
「いや、だってもう九時回ってるし、ユウは中学生だからもう帰らないとダメでしょ」
「うっ。でも、じゃんけんをもう一回するくらいは…」
「じゃんけんぽん」
第二回闇のじゃんけん(提案者レン、敗北者レン)も無事に終わり私たちは帰るために駅まで歩いている。
「いやぁ、今日は楽しかったですね。まさかヒロミさんがあんなにイケメンになるなんて思ってませんでしたよ」
私は今回の合コンの感想を言う。まあ、あれを合コンと呼んでいいのか未だに疑問だが話がこじれるので今は合コンということにしよう
「うん。あれを合コンと呼んでいいのかどうかわからないけど、とにかく楽しかったからいいか」
ツバキも同じ疑問を持っていたらしい。主催者がそれでいいのか。その後も他愛のない談笑をしていたらあっという間に誰もいない駅についた。ん?後ろからボソボソと卑弥呼と暗闇が話しているのが聞こえる
「暗闇よ」
「ん?どうした?」
「唐突で悪いが、わしを…」
「わしを…殺してくれ」
「了解♪」
この時暗闇が初めて笑った
ズアアァァ
急に後ろから大きな音が聞こえた。慌てて後ろを振り向くと黄金の光の塔に包まれた卑弥呼がいた。
「いやー、すごいね。原則に従って存在の三分の一を返そうと思ったら歴史の偉人の存在が多すぎてこの様だよ。すごい。本当にすごいよ」
暗闇が笑いながら叫んでいる。私はその暗闇を全くの無視をして黄金の光の元へと走った
「卑弥呼さん。どうして?どうしてそんな急に…」
私はその光に向かって縋るように叫ぶ。それを見て卑弥呼は優しく微笑み口を開く
「わしが生きとったのはまだこの世に未練じみたものがあったからじゃ。それがなんなのか今まで分からんかったんじゃが。今日やっと分かった。わしはただ対等に付き合える友達が欲しかった。ただそれだけだったんじゃ」
私たちは何を言っていたのだろうか。恋人とか男女の付き合いだとかそんなものじゃない。本当はもっと身近でもっと簡単なものだったんだ。でも…
「でも、やっと友達になれたのに急にいなく…」
「アハハハハハハハハ」
私が話している途中で何の脈絡もない笑い声が聞こえる。私は驚いてその音源を見てみるとそこにはツバキが腹を抱えて笑っていた
「ツ、ツバキさん…?」
「いやぁ、あまりにもおかしいからさ。つい」
「なにがじゃ?」
卑弥呼は高圧的にツバキに問いかける
「いや、だって数日話しただけで友達と思っていたなんて思い上がらないで欲しいと思ってさ。仲がいいだけが友達じゃないんだよ」
「む…じゃあ、今わしの状況は自分で思い上がってやっているだけとお主は言いたいのか?」
卑弥呼は後悔と怒りの両方を孕んだ声で問いかける
「そんなに怒気のある声を出さないでよ。それにそんな声を出されても私の意見は変わらない。私とあなたは友達なんかじゃない」
「そんな…なら…わしはなんのために…」
「だから!」
卑弥呼の言葉に無理矢理割り込むツバキ。その迫力に負けて卑弥呼は口を閉ざす。
「だからさ。約束しようよ。七十年後くらいにまた会って、もっとお互いのことを知って、そして、友達になろうってさ」
そう言ってツバキは右手の小指を立てて卑弥呼に向かって差し出す
「む?これは…どういう…」
卑弥呼は頭が回らず動転している。
「だから私たちどうせ後七十年とかそこらで死ぬでしょ。そして、また会ってさ。もっと仲良くなってさ。友達になろう。これは約束を破らないようにという誓いよ。指切り知らない?」
ツバキは小指をピクピク動かす。
「私もします。必ず死んでしまったら卑弥呼さんに会いに行きますから」
私も小指を立てる。レンもヒロミもそれに同調する
「いや、俺は空気読んでしているだけだからな」
「まあ…なんか、殴られたりしたけどなるべく卑弥呼さんとは仲良くしたい…」
その時卑弥呼の目からは一筋の涙が流れた
「ああ、そうか…誰かと一緒にいるというのは…そして、誰かと会う約束をするというのはこんなにも温かいものなんじゃな」
卑弥呼は右手を私たちにに近づけて四つの小指を全て掴み取る。そして無邪気にニッと笑った
「約束じゃからな」
フッ
一瞬だった。卑弥呼が最後の言葉を言うと同時に卑弥呼の姿が突然空気に溶けるように消えた。しかし、私たちはまだ頭の中に残る彼女の残像と右手の小指をかすかに刺激するほのかな暖かさに感慨に…
「はい、ありがとう。君たちのおかげでまた一つ面倒な問題を解消することができたよ。まあ、今回は願い事を叶えてやるとか特に言ってなかったから、願い事叶えてあげないよなんて言わないよ。僕もそこまで鬼じゃない。悪魔だ。な〜んてね」
感慨に浸れなかった。
流石の空気の読めなさで、この感動ムードをぶち壊す暗闇。しかも、自分で言ったつまらないギャグにくすくすと笑っている
「さあ、誰からいく?」
私たちは互いに目配せをする。
「ねえ、ユウから言ってよ。なんか私緊張しちゃってさ」
ツバキがそう言って私の背中を押す。他の二人の男子組も特に異論はなさそうだ。ならば…
「では、暗闇さん。私の願い事からお願い」
「お、最初は君かぁ。僕の叶えられる範囲にしてくれよ。流石にこの世界の人類の滅亡とかは面倒臭いからね」
暗闇はそんな冗談めかしたことを言って、またくすくすと笑った。相当上機嫌らしい。私はゆっくりと深呼吸をして、口を開く
「暗闇さん…私の望みは…」
この章のタイトルでもありこの話のタイトルでもある『約束の宴』。結構適当に決めましたが、約束というのは普通に指切りのあれですね。もっと感動する雰囲気作りをしたかった。宴というのは合コンのことです。
というわけで暖かい感想とか暖かい感想とかくれたら少しは僕も友達作りを頑張るかもしれません。てか、普通に嬉しいです。では、さようなら




