誰だよあんた!みんなの裏の顔
会社の詳しいことわからねえよ。商品を売り込みに他社にいくとかあるのかわかんねえよ。高校生だもん
『レンのことが好き』
最初はツバキの声かと思っていたがあの時は突然の出来事で声を正確には聞き取れなかったのでもしかしたヒロミの声なのかもしれない。そう思った私はツバキを観察してみることにした。
そこの声を聞いて時は流れ次の日
私はいつも通り12時くらいにあのマンション通称『オフィス』に着く。ついでにこの名前をつけたのはレンだ。オフィスのドアを開けるとすでに三人とも集まっていた。レンの会社の詳細については全くの秘密にされたのだが、社長はレンで社員に大学を中退したヒロミ。暇な時にアルバイトとしてくるツバキの計三人でなんとかやっているらしい。どうして私を誘ってくれなかったのかと愚痴をこぼしそうになったが親友を救えなくて嘆いていた私に話しかけるのは逆の立場だったら私でもできない。それをツバキやレン、ましてやヒロミができるわけがない。
まあ、そんなことは置いといて、私は料理本を読むふりをしてオフィスの様子を観察していた。私はまずレンを見る。そこにはレンがかつてないほどの必死さでキーボードを叩いていた。どうやら仕事をしているようだ。こんなにも真剣なレンを見たことがないので珍しいなと私は思うが、誰も気にしていないあたり、これが仕事をするレンの当たり前の姿なのだろう。そのレンの横にさりげなくコーヒーを入れたカップを置くツバキ。その仕草が自然すぎてやはりこれもいつもの光景なのだろうと思う。その後に同じくヒロミにも同じようにコーヒーをだして、ツバキはキッチンへと戻って行った。これが三人の日常。
なんだかおいていかれたような気分になるがそれを頭を振って追い払う。今はツバキについて考えるべきだ。しかし、ツバキの行動に特におかしいところはなかった。やはり聞き間違いだったのだろうか。『レンのことが好き』という言葉は
こうして、最初の作戦である『料理本を読んで気配を消した後にレンに対するツバキの反応を確かめるぞ大作戦!』は何の成果も得られず終わった。
次の日
昨日の作戦が全く使い物にならなかったので、第二の作戦である『レンとベタベタして、ツバキが嫉妬の炎で妬かれるかどうか大作戦!』を決行することにした。
私はレンに近づく。仕事をするレンはいつものだるそうな感じとは違って少しかっこよかった。正直少し見直した。ならこちらもそれ相応の態度で接さなければいけないだろう
「ねえ、レン。なんか頑張ってるね。今のレン少しかっこいいよ」
「…………」
スッ
私はポケットから百円を取り出す。するとレンが仕事なんて知ったこっちゃないと言った感じでバッとこちらを見る。百円を右に動かす。レンの目がお金を追う。
「なんかレン頑張ってるね。なんか少しかっこいいよ」
「いや、かなりかっこいいの間違いだろ」
うん、死ねばいいのに。仕事をしてもなんだか無駄に芯だけは変わらない奴だ。
「なんかあんたたち面白そうな話してるね。私も混ぜてよ」
まさかのここでツバキの乱入。嫉妬の炎に妬かれてきたのか?
「案外珍しいなお前が話に乱入して来るなんて」
嫉妬の炎に…………え?
「え?レンが…レンがしゃっべってる?」
「喋るぐらいするわ。俺をどんな風に見てんだ?」
「やっぱり喋ってたんだ。ハハハ。明日世界が滅ぶ。私の人生に悔いが残るなぁ」
「なに?俺喋っちゃダメなの?」
「ユウ。レンはね狂ったわけじゃない。これこそが私のアルバイトの見返りなんだよ」
「え?アルバイトの見返り…ですか?」
「そう、いろんな雑用をする代わりにレンと話すことができるってことがこのバイトの給料ってわけ」
そしてツバキが顔を近づけてきてそっと耳打ちをする
「実はあとでヒロミがこっそりお金をくれるんだけどね」
社長変われ。アルバイトの人への給料が自分と話していいなんていう社長よりヒロミの方が適役だと思う。そう思ってヒロミをチラリと見てみると何やらブツブツと呟いている。
「あの、ツバキさん。ヒロミさんは何をしているんですか?呪詛を唱えているんですか?」
「そんなこと言わないであげてよ。あれはプレゼンの練習だよ。他の会社に自分の商品を売り込みに行くらしいよ」
「でも、ヒロミさんはコミュ障なんですよ。途中で倒れちゃいますよ。レンがするべきだと思います」
「んー、レンはスライド担当だからね。まあ、一回目は成功してたし大丈夫でしょ」
「一回目?」
「そう。同じやり方で成功してて、その時のヒロミはもう、緊張しすぎて吹っ切れてむしろ悟りを開いたような感じだったよ」
思わぬところでヒロミは才能を開花させていた。
「ヒロミさん凄いですね」
私はヒロミに向かって素直な感想をもらす。するとヒロミは呪詛をやめこちらをチラリと見た後にすぐに顔をそらす
「…ありがとう」
蚊の鳴くような声でヒロミはそう言った。それからもいろいろあって結局私もアルバイトをすることになった
次の日
やってしまった。私は後悔をする。昨日はみんなの意外な一面をたくさん見ることができて楽しかった。いや、楽しすぎたのだ。あまりの楽しさに私は作戦の名前どころか内容すら覚えていない状態だ。昨日の時間に戻りたい。
ええい!こうなったら最終手段を使うしかない。そう、『直接聞いて確かめる大作戦!』だ。あまりこれは使いたくなかったけどこんな状況だ。やむを得ない。なんだかこの頃白ちゃんみたいなノリになってるなぁ。
そんなことを考えているうちにオフィスに着く。リビングに入るとそこにはツバキが一人で本を読んでいた。
「こんにちは。他の二人はまだですか?」
「いや、他の二人は今日プレゼンに行ったよ」
どうやら昨日話していたプレゼンは今日やるらしい。つまりこの部屋には しばらくの間私とツバキしかいない。これは私にとってはチャンスだ。
「あの…」
「ん?なに?」
「空が綺麗ですね」
「あ、うん。秋晴れってやつだね」
失敗した。話題の振り方が遠回りすぎた。もう、遠回りなんてしない。率直に聞こう
「あの、レンのことが好きですか?」
「好きだけど…もしかしてユウは嫌いなの」
「いや、そうじゃなくて…その…異性として好きかどうか…です」
ツバキは少しキョトンとした顔になるが、すぐにいつもの顔に戻り言う
「はぁ〜。ユウに嘘ついても心の声でわかっちゃうから無駄だよね。私はレンのことが好きだよ」
あっさりと認めるツバキ。
「え?なんかレンのことを好きになったらまずいことでもあるの?」
「いえ、そんなつもりで言ったんじゃなくて、あの、応援したいと思って」
「応援ね。その気持ちは嬉しいけど別に告白するつもりでもないし」
私はその言葉になぜかカチンとくる。
「なんでですか。好きな人にはしっかりと思いを伝えないとダメですよ。告白してください」
「私はこのままでも十分幸せだからこれでいいんだよ」
いつになく消極的なツバキにより一層の苛立ちを感じる。なぜなのか。思い当たる節が一つある。私の白ちゃんに対する告白だ。私は様々な要因により、大好きな人に思いを届けることができなかった。ツバキに同じ思いはさせたくない。その感情が私の胸中で渦巻く
「後悔しますよ。好きな人に思いを伝えないと」
私は多少強めに言う。するとツバキは妙にさとしたような表情で近づいてくる。
「あのさ、私は嫌なの。告白して嫌いって言われることが。この状況が大きく変わってしまうことが。今が崩れることが」
そして、ツバキは私の額に自分の額を重ねて言う
「ねえ、私の気持ち分かってよ」
その瞬間私の頭の中にツバキの思いが入ってくる
すみません。前書き調子に乗りすぎました。本当にすみません。




