展開が早いと見てくれる人がついていけなくなる現象
はい。テスト終わりました。まあ、どうせ僕のリア友は同じようなことを書いているでしょう。まあ、とにかくテストは終わりました。これでまた頑張れる。というわけで新章開始です!え?待ちわびてない?ですよねー
朝起きて、学校に行って、授業を受けて、放課後には家に帰って、お母さんの料理の手伝いをして、寝る前に学校の課題をして、11時には寝る。
そんな生活は平凡で誰も私を責めない。私は人を殺しているのに誰も私を避けたりしない。ただ平凡な毎日が過ぎて行く。
季節はもう秋。少し肌寒くなってきた10月の下旬。私は学校の友人であるアケミと話しながら下校していた。
「でさー、清田君がさー。全裸で廊下走っててさ。って、あれ?どうしたのユウ?急に立ち止まって?」
「ごめんアケミ先に帰ってて、学校に忘れ物しちゃったの思い出して…」
「え、そうなの、じゃあここでお別れだね。じゃあまた明日。アディオス!」
そう言ってアケミは走って帰って行った。アケミが角を曲がりこの道には私一人だけになる。
「なんで今頃…私に用でもあるの?」
この光景はどう考えても私の独り言にしか見えない。
「やあ、久しぶり。何で今なのかっていう質問に対しては、今だからこそって返すしかないね」
しかし、私のその声に返事を返してくれる声がした。
「本当に久しぶり。暗闇さん」
私は自分の影を見て言う。そこには私の影てありながら私の動きと同期せず独自にうねうね動いている影があった。
「いやー、それにしても意外と普通の生活を送ってるんだね。罪悪感はもう拭えたのかい?」
「そう簡単に拭えるものじゃないよ。ただ普通に生活を送っているように見えるだけ。今ならヒロミさんの気持ちが少しわかる気がする」
人を殺したのに誰にも責められない状況。それは寿命を吸い取る能力を持っていたヒロミが置かれていた状況と似ていた。
「へえ、そんな君に朗報だよ」
影の手の部分から白い紙が出てくる。私はさして驚かずその紙を受け取る。そこには簡単な地図と12時という時間が書いてあった。
「前と同じパターンだよ。明日の時間だからよろしくね。また僕を救ってね」
そして、私の影は正常に戻った。
私はヒロミを生き返らせたことに関しては全く後悔をしていない。私が後悔しているのは白ちゃんを生き返らせなかったことだ。なら、今回の話は私の望みをまた叶えてくれるに違いない。ならば今度こそ白ちゃんを生き返らせよう。もう、絶対に後悔なんてしたくないから。
あまりの早い展開に若干ついていけない部分もあったが、私は新たな決意を胸に帰路についた。
次の日
まあ、当然いつの間にか学校という制度はどこかへいってしまうのだが、気にしないで欲しい。
私は久しぶりにマンションのドアの前で立ち止まる。久しぶりの再開に少し緊張する。私は緊張と興奮を心に混ぜ込んだままドアを開けた。
パーン
ドアを開けた瞬間右からクラッカーがなる。私は何かは来るだろうと思っていたのだがまさかこんなにも進歩が無いなんて…
私は顔を右に向けるとそこには案の定クラッカーを持ったツバキがいた。今日はこの前と違って高校の制服ではなく私服で来ている。
「ニヒヒ、久しぶり!」
やけにテンションが高い。いや、無理をしているというのが正しいだろうか。
「はい、久しぶりですね」
私は一旦それをスルーして返事を返す。
「ほら、後の二人も待ってるよ」
あの二人が私を待っている?そんなはずはない。多分私が来てもレンはパソコンをして、ヒロミはだんまりのはずだ。
ツバキはリビングにつながるドアを開ける。
「おぉ、久しぶりユウ。元気にしてたカネー?」
「それにしてもユウちゃん空が綺麗だな」
嘘…でしょ…
あの二人が私に話しかけている。レンに至っては無料で話している。何かの夢だろうか。何かがおかしいと思い私は耳を閉じる。
『ユウはきっと親友を助けられなくて落ち込んでいるだろうから元気付けてやらないと』
『なんで俺がユウを元気付けんといかんのだ。まあ、ツバキから千円もらったからやるけど』
「ユウが親友を救えなくなったのは俺のせいだ。俺がユウを楽しませてあげないと。でも、俺なんかで大丈夫なのか?てか、俺は生きてていいのか?でも…………』
「ありがとう」
私の口からは自然とその言葉が紡ぎ出されていた。
「ツバキさん、ヒロミさん。私は大丈夫ですからそんなに気を使わなくてもいいですよ」
私は笑顔で言う。このごろ心の底から笑えたことなんてあっただろうか。
「実際ヒロミさんを生き返らせたことに悔いはありません」
そう、ヒロミを生き返らせたのは間違いではなかったはずだ。なぜならこうしてヒロミがそこにいるだけで心の底から嬉しいのだから。
「でも、私の親友を生き返らせなかったことに悔いはあります」
でも、白ちゃんを生き返らせなかったことには間違っている。
「でも、今回は必ず生き返らせて見せますからそんなに気を使わなくても大丈夫です」
私は胸の前で拳を作り胸を張る。
「おぉ、頼もしいね。じゃあ、今回も僕の依頼をパパッと片付けてね」
その言葉に私はビクッとする。久しぶりすぎて忘れていたがこの暗闇という悪魔はいつも唐突に現れるのだった。
「じゃあ、前と同じ感じで頼むよ。僕の中で頼れるのは君たちしかいないんだ。他の奴らはみんな廃人になるか死んじゃったからね」
暗闇さんが少し笑う。しかし、その笑い声はのっぺりとしていて無機質だった。なんだか今日は暗闇さんのテンションが高い。何かいいことでもあったのだろうか。
「じゃあ、そろそろ行こうか」
今は暗闇さんの道案内で町の中を歩いている。
「あの、ツバキさん」
そろそろ沈黙にも耐えられなくなってきたのでツバキに話を振ってみる。
「ん?どうしたの?」
「あの、答えたくなかったら答えなくてもいいんですけど、ツバキさんの求めるものってなんなんですか?私はあのお葬式の式場で何を叶えるか言っちゃいましたから」
「だから、私は言ったのにあなたは言わないなんて不公平じゃんってことよね」
「いえ、そんなにがっつくつもりはないですけど、ヒロミさんを生き返らせるという私の望みに手助けしてくださってツバキさんは自分の願い事を棒に振ったわけですからお手伝いできたらなと思いまして」
「なるほどね。私の願い事なんて大した事ないんだけどね。私の望みは『絆』よ。」
「き…絆…?」
「正確に言うと、人間関係を元どおりにしたい…かな?」
「なるほど。絆ですか」
「別にユウがそんなに気にすることないし、ただ勇気を出して話しかければいいのに中途半端な私の心がそれを拒んでいるだけだからね。まあ、ユウには本当にどうしようもない話だったね」
「いえ、話してくださってありがとうございます。嬉しいです。お互いに励ましあいながらがんばって行きましょう」
「そうだね」
すると急に影が止まる。
「ほら着いたよ。このマンションの一室にいるから」
そこは高級そうなマンションなどではなくごく普通のマンションだった。相変わらず悪魔の悩みは身近にあるようだ。
そして、あっという間に3階にある一室のドアの前で立ち止まる。まあ、悪魔の力とやらを使いセキュリティを突破したのだが、赤外線センサーも効かないってどういうことだろうか。自動ドアが開かなくて大変だった。
まあ、こんな茶番はさておき。
私は意を決してインターホンを押す。
ピーんポーン
ガチャ
横についている箱みたいなやつから声が聞こえる
「なんじゃ?」
「僕だよ。暗闇だよ。面白い話を持ち込んできたから開けてよ」
「お前がわしを訪ねてくるとは何年ぶりかの。できれば一生来て欲しくなかったものじゃ」
「そんな連れないこと言わないでよ。ほら、君にとっても悪い話じゃないと思うよ」
「そうか。なら、話だけでも聞いてみようかの」
ドアが開けられる。出てきた人はなんとなく妖艶な雰囲気を漂わせる美しい女性だった。
「ん?今日はお前だけじゃないのか?」
「うん、僕にだって友達ぐらいいるよ」
「そうか、せっかくの客人じゃ。中に入れ」
そう言って妖艶な雰囲気を持つ女性は部屋の奥へと歩いて行く。
「ねえ、暗闇さん。あの人は誰なの?」
私はただの興味本位で聞いてみる。
「ああ、彼女は卑弥呼だよ」
え?卑弥呼?
気配りのできる男に俺はなる!




