どっちの師ショー(1)
風呂上がり、携帯の点滅に気付く。
とりあえず、濡れた体をタオルで拭き、落ち着いた様子で携帯を手に取る。
メールが一件。
『江口咲夜』
懐かしい名前だ。
そいつの顔が思い浮かぶと同時かそれより先に「あいつかよ」という独り言が口から漏れる。
別に誰を期待していたわけでも無いが、予想だにしない相手というのか、不意をつかれた感じだ。
どちらかといえば、嫌忌の念から言い漏らしたつもりだったが、洗面所兼脱衣所の鏡に映る男の口元は、あろうことか少し嬉しそうにしていた。
…孤独な生活の送り過ぎだろうか。
すかさず視線を携帯に戻す。
…。
……。
メールの内容を確認しながら、着替えを取るために部屋へと真っ裸で向かう。
狭いアパートに一人暮らし。
孤独ゆえの自由。
スッパで何が悪い。
プライバシーの確保された空間であること、他者の存在しない一室においてそれは脱衣所や浴室にとどまらず、例えリビングであろうとその点においては一律的に等しいのである。
メールの内容はこうだ。
『
ヤッホー!
ケニー、おひさー!
突然だけどちょっと手伝って貰いたい事があるんだ。
詳しくは女の子から聞いてね!
』
…女の子?
何のこっちゃと思いながら顔を上げる。
すると…
そこには目を指で覆いながら立ち尽くす、小柄な女の子の姿があった。