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たまごのような恋

 放課後、誰もいない教室で窓の外を見ていた。昨日まで晴れていた空が今は激しい雨が降っている。窓から下を覗き込むと、傘を差している者がほとんどだが、中には必死に走って帰る者もいた。やむ気配を見せない雨はきっと明日も今日と同じくらい降り続けるだろう。

 ふと、時計を見てみると、五時をさしていた。部活に入っていない私は放課後図書室で本を読んだり、勉強したりしていた。そのあとはまっすぐにうちには帰らず、ブラブラと寄り道をする。

 私の名前は水瀬琴音(みなせことね)です。趣味は読書なので、学校や家で好きな本を読んでいます。

 家に帰るので鞄に教科書やノートがきちんと入っているかを確認し、電気を消して教室を出た。階段をゆっくりと下りていき、玄関で靴を履き替えて傘を持って、外に出た。すべての音をかき消していくかのように雨はさらに激しくなった。

 今日は寄り道をしないでまっすぐ帰ろう。そう思い,早歩きをした。コンビニやレストランなどを通り過ぎて、そして、書店を通り過ぎてようやく家に着いた。家の前で鞄の奥に入れてある鍵を取ろうとしていたら、ドアが開いた。


「おかえり」


そういってドアを手で押さえてくれていたのが私の兄で名前は誠一(せいいち)。現在は大学生。


「ただいま。ここ最近ずっと降っているね」


 高校生になってからすぐに兄と二人暮しをしている。

 両親は共働きで家に帰ることはあまりないので、高校入学が決まったと同時に兄と暮らしたいと両親に言った。兄は高校生のころから一人暮らしをしていた。一緒に住むということで文句を言われるかと思ったけど、あっさりOKしてくれた。


「琴音、肩が濡れているぞ。タオルで拭け」


兄は私に黄色い花模様のタオルを投げた。私はそれを受け取り、肩だけでなく,スカートや鞄なども拭いた。


「ほんと、すごい雨だな」


これをいったのは兄ではなく、兄の高校からの友達である辻本支樹(つじもとしき)だった。彼は兄が一人暮らしをしてからしょっちゅう遊びに来ている。もちろん今も。


「誠一、あとレポート、どれくらいだ?」

「ん?あぁ、あとちょっとで終わる」

「そっか、俺はあともう少し。お前がやってくれるのか?はい」


 彼は笑って、レポート用紙を渡してきた。


「私、これから料理を作るのですけど・・・・・・」

「冗談だよ」


そういって、再びレポート課題に目を向けてシャープペンを走らせた。


「今日の晩御飯は何だ?」

「ポトフとサラダだよ」


 すると満足そうに笑った。ジュースを飲みつつ、課題の続きをし始めた。

 ポトフをコトコトと煮込みながら、サラダを作った。おたまでポトフをかきまぜていると、兄と支樹が美味しそうと話し始めた。

 コンロの火を消し、ポトフを皿に盛っている間に二人はキッチンにきていた。


「終わった?」

「終わったけど、まだいくつかあるな」

「お兄ちゃん、今日中にするの?レポート」

「いや、やりたくてもできねぇ。課題が何なのか発表されてないし、なぁ?」


 支樹は黙って頷き、ポトフを食べていた。彼は食事のときは無口になってしまう。今まで彼と何度か食事をともにしてきたが、ほとんど喋らない。言葉を発するときは決まってこういう。


「おかわりちょうだい」

「美味しい?」

「うまいよ」


 兄は言ってくれるが、支樹は違う。


「味が薄い」


 意地悪な笑みを浮かべながら、言ってきた。

 嘘だということはわかっている。ほんとに不味かったら、おかわりなんてしない。私は時々彼にからかわれている。

 食事が終わり、皿洗いを済ませた後、部屋でのんびりとしていた。


「明日はバイトだから」


 兄はテレビを観ながら言った。


「うん、頑張ってね」

「ああ」


兄は週に三回バイトをしている。

 明日から休日だからゆっくりしようと考えていた。テレビをみると、可愛いキャラクターのアイスクリームのCMが流れていた。クマとネコが仲良くアイスを食べている。アイスはたまに食べるが、数かぞえるほどだ。私はチョコ味が好きで、ほかのものは全く食べない。

 そういえば、来週、数学の小テストがあるけど、簡単だし、昼休みや放課後の時間を使って勉強したから大丈夫か。ほっとしていると、支樹が私の髪をくるくる指に巻きつけて遊んでいる。


「何しているの?」

「暇潰し」


そう答えてきた。なんか機嫌がいい。今も私の髪を指に巻きつけたままで離す気がない。


「私のこと何だと思っているの?」

「ペットだな」


 あっさりと言われたので、顔を背けた。


「はぁー、まいったな・・・・・・」

そういっている割には困ったって顔してないじゃない。むしろ楽しそう。

 突然、支樹は立ち上がって、どこへ行くのかと思っていたら、自分の鞄からあるものを取り出していた。何を出しているのだろうとのぞいては見たものの、彼の背中しか見えない状態だった。向きを変えてこちらに戻ってきた。大きな手の中に包まれているものはなんだろうか。

 まるで小さな可愛らしいプレゼントの箱を開けるかのようだった。私の目の前にこぶしのまま渡した。それを受け取るために膝にのせていた手を彼の手の下まで持ってきたら、何か落ちてきた。小さな赤い包みに入ったチョコレートだった。


「これ、最近話題になっているのだよね?」

「うん、そう」


 彼は隣に座り、ポケットから取り出したもう一つ、自分のためのチョコを口に入れた。


「琴音も食べろよ」

「う、うん」


 口の中へ入れると、甘さが広がっていった。苦味は全くなかった。


「あ、おいしい」

「だろ?」


 彼の顔の前に人差し指を立てて、もう一個欲しいと頼んだが、彼は私の手をとって、膝の上におろした。


「食べ過ぎは駄目だ」


 鞄から読みかけの本を取り出したあと、鞄を邪魔にならないように部屋の隅に置いた。パラパラとめくって読み始めるが、すぐに隣から視線を感じる。


「何?今、読書しているのだけれど・・・・・・」

「ん?俺も読書中」


 思いっきり私の本を読んでいるじゃない。そう思いながら彼をじっとみた。

「どうした?かっこよすぎてみとれていた?」

「あのね、そんなわけないでしょ」


そう言って再び本に目を向けた。これは単行本ではなくて文庫本。持ち運びが便利なので持っている本は文庫本のほうが多い。

 今もまだ降り続いている雨とともに雷も鳴っている。昔は遠足の前日にてるてる坊主をつくった。子どもの頃の思い出。

 雷の大きな音が鳴ると肩をビクッと震えさせてしまうくらいだ。さらに停電になると不安になる。まだ半分も読んでいない本を少しずつ読み続けて気を紛らわしている。


「おい、大丈夫か?」


支樹が少し心配そうな目で見る。そんなに怯えた顔をしていたのだろうか。兄もテレビから視線を外してちらりとこちらを見た。


「大丈夫だよ」


 笑顔で言ったのだが、やはり少し窓の外が気になる。たまに稲光が光っているから。

 支樹は立ち上がって何をするのかと思いきや、カーテンを閉めた。もう雷は見えない。こういうところは優しいと思う。


「あ、ありがと」

「いえいえ、どういたしまして」


彼は少し笑ってそう言った。


「お前、怖がりだな」

「支樹はなにか苦手なものはある?」

「うーん、何だろう?」


少し考えていたが、あまり思い浮かばないみたいだ。ジェットコースターとか高いとことかも平気そう。


「あんまりないみたいだね」

「そうだな。お前はほかにもありそうだな。苦手なもの」


 実はつい最近、家にゴキブリが出たとき、兄に助けを求めた。たまたま家に兄がいたからよかったものの、一人だったら大騒ぎしているところだった。私は虫も苦手だ。

「あのさ、映画館に行かないか?明日」

「映画?」


 急に話が変わったので、少し戸惑った。


「ちなみに何の映画?」

「恋愛物。お前、好きだろ?」


 ゆっくりと頷いた。彼は鞄から二枚の映画のチケットを出した。ラブストーリーの映画。明日は休みだし、何も予定が無いので断る必要なんてない。


「うん。行く」

「支樹、俺の分はあるか?」

「ないよ、あったとしても明日はバイトが入っているだろう」


 兄は少し残念そうな顔をしていた。


「明日は十時半から始まるから遅れるなよ」

「あの、遅れるなって待ち合わせ場所はどこに?」

「十時に駅前。以上」


 支樹は早口でそう言った。きちんと返事をしなかったが、メモをとった。

 久しぶりの映画なのでとても楽しみにしていた。

 翌朝 いつもなら晴れていて気持ちいいのだが、今日も雨が降り続いていた。昨日よりかはだいぶましにはなっていた。部屋を出て、キッチンへ行くと、兄が座っていた。


「おはよう」

「おはよう」


 互いに挨拶をした後、朝食を食べるか質問をする。


「朝ご飯何食べる?」

「俺はいい、今はあんま腹減ってない」


 冷蔵庫を開けて見てみるとヨーグルトがあったので、それとまだたくさん残っているオレンジジュースを取り出して自分専用のグラスにジュースを注いだ。


「俺のも入れて」


 気がつけば新しいグラスを片手にして注ぐのを待っていた。


「もっと早く言ってよ」

「悪い」


 兄のグラスにもジュースを入れてから冷蔵庫に戻した。一口ヨーグルトを口にしてから、本当にいらないのか念のために確認した。


「あぁ、これだけで十分」


そういってグラスを軽く上にあげたあと、ジュースをゴクゴクと飲んだ。軽い朝食を食べ終えたあと、身支度を整えてインターネットで上映スケジュールを確認してから家を出た。

 バスに乗って、二人用の座席に座ってかばんの中に入れておいた小説を読み始めた。 すでに半分以上読み終えていた。


「今日、朝から夜までバイト?」

「そうだ、少し気が重い」


 眠そうに目を擦りながら言った。


「支樹は?」

「ん?何?」

「バイト。しないの?」

「高校生の頃はしていたな」


 今はやる気が無いのだろうかと思った。


「お前、来週数学のテストあるらしいな?ちゃんと勉強しろよ」


 突然話を変えられた。支樹もそうだが、兄もこうして話を切り替えることがある。


「大丈夫だよ。簡単だし、満点取る自信あるよ」

「よしよし」


 頭を撫でながら言った。


「まったく、せっかく遊びに行くのにいきなり小テストの話をするのだから」

「あぁ、ごめん」


 そう言うと、お辞儀したので、思わずふきだしてしまった。兄もつられて笑った。

 兄にお見送りをしてもらい、家を出て、バス停に行くと、ちょうどバスがとまっていたので急いで乗り込んだ。息切れをしながらあいていた席に座った。外の景色を見ながらバスに揺られていた。

 次の停留所で降りるため、ボタンに手を伸ばしたが、先に誰かに押された。手の中にあるお金を払ってバスを降りた。駅に向かったら支樹がもうそこに立っていた。


「ちゃんと来たな」

「もちろん。十五分前に来たでしょ?」


 彼は笑いながらうなずいた。

 朝早く出たせいで映画館はまだ開いていなかった。時間まであと十五分待たなくてはならなかった。


「十五分って結構長いね」

「そうだな、そのへん軽く散歩するか」

「うん、じゃあ行こうか」


 映画館の周りにはコンビニがあったり、喫茶店があったり公園などがあった。映画館は大きなショッピングモールの中にあるのでその周辺にいったことはなかった。たいてい映画のあとは食事をしたり買い物をしたりしている。

 公園にある時計を見てみると、ちょうど十時になっていた。観る映画は十時半からなのでゆっくりと戻って行った。今日は休日だからたくさん人がいるのかと思っていたけれど、そうでもなかった。

「琴音、なんかいるか?」


 支樹が販売店を見ながら言った。


「えっと、ウーロン茶にする。自分で払うから」


 慌てて鞄の中から財布を取り出そうとしたが、支樹に止められた。


「買ってくるからここで待っていろ」


 そう言うと、さっさと買いに行ってしまったので、おとなしくそこで待った。  数分後支樹はポップコーンとアイスコーヒーとウーロン茶を持ってかえってきた。


「ありがと」


 ウーロン茶を受け取りながらお礼を言った。


「どういたしまして、じゃ、中に入るか」


まだそんなに客はいなかったが、もう少したったらたくさんくるのだろうなぁと思っていた。

 予感的中。客は次から次へと入って自分たちの席をさがしていた。

「私達の席、後ろで良かったね」

「そうだな、前だったら首がいたくなるからな」


 すぐに館内が暗くなった。館内での注意事項や新作の映画の予告などが映像にうつし出された。タバコを吸う人や撮影する人は今までみたことがない。後ろに座っている子どもが蹴ってきたり、他人がずっと話したりしているということはたまにあるので本当に迷惑。守るべき事はきちんと守ってほしい。

 そういうことを考えながら小さく頷いていると、横に座っている支樹は首を傾げた。

 映画の内容は高校生のラブストーリーで一つ年の差があって、はじめはあまりお互いのことを意識していなかったけれど、図書室をよく利用するため、次第に話すようになり、一緒に行動をするようになる。二人の距離は縮まっていって、やがて恋人同士になって、人を好きになるということを知る。


「映画、良かったね」

「本当にそう思っているか?」


 支樹は疑いの目でこちらを見た。理由は分かっている。他の人達は泣いていたが、私は泣いていなかったから。周りの人たちは鞄からハンカチを出して目元を押さえながら泣いていた。正直にいうと、ほんの少し、泣きそうになっていた。


「ちゃんと思っているよ。もう、早くご飯を食べに行こう」


 時刻は一時。どの飲食店も混んでいた。

 どうしようかと話していたとき、目の前にある飲食店からカップルと四人家族が店を出た。店の中で待っているのは二組だったので、店の中に入り、待つことにした。

 待つこと十分後、自分達が呼ばれて店員に席を案内してもらった。テーブルに置いてあるメニューを取って、じっくりと見た。

 ふと顔を上げると、支樹はすでにメニューを閉じていて、じっと待っていた。私は慌てて決まったことを彼にいうと、片手をあげて店員を呼び止めた。私が注文した後、彼が食べたいものを頼んだ。

 外食をするとき、何かを頼んだ後、またメニューを見てしまう。なにかデザートでも付け加えたいと思うのだが、そこまで入らないので結局、注文をするのは一度きりだ。


「デザート、欲しいのか?」


 私の行動を見た支樹が言ったので、首を振って否定した。


「違うの。なんとなく見ていただけだよ」

「遠慮してないか?」

「してない。ほら、どれも美味しそうだから」


 メニューを元の位置に戻した。


「映画館に来たの、半年前くらいだから、久しぶりに感じた」

「そっか、今日誘ってよかった」

「うん。嬉しかった」


 友達とか誠一とかと行かないのか質問され、買い物くらいだと言った。


「俺はときどきカラオケに行ったりするな」

「お兄ちゃんと一緒に?」

「誠一と他の友達と一緒に歌いに行く」


 そんなことを話していると、注文したものが運ばれてきた。湯気がたっていて、とても美味しそう。


「いただきます」

「いただきます」


 目の前の料理を食べながら考える。

 店によるけれど、量が多いと、半分くらい食べたところでおなかがきつくなってくる。また、量がそんなに多くない場合、ぺろりと食べることができて、どこか物足りない気がする。デザートでもと思うが、頼んだら今度は苦しくなる。なので、食べると、すぐに店を出てしまう。


「この店、はじめてだけど、うまいな」

「うん、おいしい」


 食べながら彼に視線を向けると、嬉しそうに食べている。話が終わると、ゆっくりと食べはじめる。今度来たときは支樹が食べているのを注文してみようかな。私たちは会話をせず、ただ黙々と食べた。

 支樹は私より先に食べ終えた。料理はまだ半分ほど残っているので、急いで食べると、それに気づいた支樹が焦らなくていいことを言ってくれた。

けど、そんなわけにいかないだろう。スピードを変えず、食べ続ける私を見て、支樹は苦笑いしていた。あと少し、あと少しといわんばかりに食べるのをやめなかった。支樹が戻ってきた頃、ようやく食べ終えた。


「そろそろ出ようか」

「うん」


 支樹は伝票を持って、レジへ向かった。私は店の外へ出て、待っていると、彼はすぐに出てきた。


「ご馳走様。あの、お金・・・・・・」

「いいから」

「でも・・・・・・」


 言葉を続けたかったが、とっくに札を出していた。


「これからどうする?どこか行くか?」

「ううん。家に帰る」

「じゃあ、バス停はあっちだな」


 くるりと逆方向に向いて歩いた。私がまだ幼かった頃、ケーキの箱を持ったまま、転びそうになってしまったため、家に帰り、箱を開けてみると、ケーキの一部がつぶれた状態になってしまった。何かを持っているときだけでなく、持っていないときでも、小さいときはよく転んで、傷をつくっていた。そんなことを思い出しながら溜息を吐いていると、支樹が首を傾げていた。


「どうした?疲れたか?」

「ううん、今でも取り除きたいものがあるのにさ・・・・・・」


 支樹はますますわからないという表情で私を見ていた。


「自分の嫌なところだよ」

「何、それ?」

「な、内緒。笑うだろうから」

「じゃあ、想像しておく」

「もう、やめて」


 距離が近かったため、すぐにバス停に到着した。


「あ、今日はありがとね。誘ってくれて」

「いえいえ、一人で行くより、ペットを連れて行ったら、楽しくなるかなと思ったから」

「ペットってどんな?ワンちゃんやネコちゃんみたいに可愛いの?」


 彼は少々呆れ顔で見たあと、俯いて、小さく息を吐いた。バス停には何台かバスが停まっていた。それらの中に自分たちが乗るバスがちゃんとあった。バスに乗り、二人分の席に座った。発車するのは数分後だった。


「さっきの続きだけど・・・・・・猫や犬だと思っているのか?自分で」

「ううん、思っていない」


 そういえば、兄や父親以外の男性とでかけることは支樹くらいだ。

 今までつきあったことなんてない。他の女子のように放課後にデートをしたりするなんてことはなかった。別のクラスの男子を見て、ちょっとかっこいいと思うことはあったけど、ただそれだけだった。

 今日、一緒に行動したのはお出かけでデートではない。デートというのは恋人としてあちこち行くことをいうのだと、思っている。


「今日はどうだった?」

「楽しかったよ。支樹は?」

「俺も」


バスはすでに発車していた。ゆらゆらとバスに揺られながら、お喋りをしていた。今日の映画のこういうところが良かったとか、あそこの店もオススメだとか、そういった話をしていると、支樹は話すのをやめて、財布から小銭を出して、お金を払った。

 窓から手を振ると、私と同じように手を振りかえしてくれた。支樹が見えなくなると、前を向いて座り直した。辺りを見回してみると、中学生の子達が楽しそうに喋っていた。相手がいなくなると、一気に静かに感じる。何人かの話し声はちゃんと聞こえているのに。なんだか切ない気持ちになった。冷たい風が頬にあたり、胸をしめつけられた。


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