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加奈が入院している病院は飛行機で行かなきゃならないほど遠かった。
俺は何かに突き動かされるかのように空港まで車を走らせる。
そして運良くキャンセルが出た飛行機のチケットを買ってそのまま飛行機に飛び乗った。
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あたりがすっかり暗くなった頃ようやく病院に着いた。
病院に着くと、ナースステーションで加奈の病室を聞き、全速力で走った。
医者や看護婦が驚いた顔をしていたが、今の俺にはそんな事に構っている余裕は無い。
病室に着くと、そこには目をつぶったまま動かない加奈の姿と、加奈の両親の姿があった。
「おばさん………加奈ちゃんは?………」
泣き崩れている加奈の母親の様子を見れば、聞かなくても答えは分かる。それでも聞かずにはいられなかった。
「洋ちゃん………加奈ね………最期まで洋ちゃんの名前を呼んでたんだよ………それにね・・・・・・・・・必ず洋ちゃんはここに来るから、例え間に合わなくても一晩ここで待って居たいって言ってたのよ」
おばさんは、そこで耐え切れなくなっておじさんの胸の中で泣いた。
おじさんは、おばさんの背中を宥めるように擦りながら、おばさんの言葉を拾うようにこう言った。
「ウチの加奈は………洋介君に会えて、本当に幸せだったと思う。まるで本当の兄妹のように、二人一緒に笑って暮らすことが出来たんだから………おじさんは、本当に洋介君に感謝してるよ。だからね、洋介君。最後にウチの加奈を見てやってくれないか」
俺はおじさんに言われるがままに、加奈が横たわっているベッドに近づいた。
加奈は、本当に死んでいるようには見えない位、安らかな寝顔をしていた。
俺は白雪姫ではないかと思った。
ここで王子がキスをすれば、目を開けるのではないか。そう思えてくる。
でも、そんなことはありえない。どんなに寝ているように見えても、どんなに愛しく思っても、絶対に目を覚ますことは無いのだ。
そう思った瞬間、俺は再び走り出していた。