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⑥
「ただいま~」
玄関に入って靴を脱ごうとした矢先に、帰って来たばかりであろう父親が、顔を真っ青にして洋介の前に来た。
「お前の幼馴染だった加奈ちゃんが、たった今、亡くなったそうだ」
「え?」
「それでな。母さんにその事を電話で話したら、昼頃にその加奈ちゃんとお前が出掛けて行ったって言うじゃないか………お父さん、心配になって会社を早退してきたよ」
俺は目の前が真っ暗になった。悪い夢にもほどがある。
「何を言っているの?加奈ちゃんとは、ついさっきまで一緒に居たんだよ?何かの間違いじゃないの?」
「お父さんも加奈ちゃんが死んだなんて何かの冗談かと思ったんだが、加奈ちゃんのお父さんがついさっき息を引き取ったと電話を掛けてきてね・・・・・・・・・本当にやりきれなかったよ」
俺はその瞬間、父親の制止も振り切って走り出していた。
どこに行くかは決まっている。
加奈が入院していた病院だ。
俺は父親の車の鍵をひったくると、全速力で車へと走って行った。