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①
今年の夏はヤケに熱いと思う。
何でも「異常気象」とかいう奇怪な現象が起こっているらしい。
更に悪い事に、この部屋は非常に通気性が悪い。
俺は、閉じていた目を開けて窓から顔を出した。
そのタイミングを見計らったかのように、一階から母親の声がした。
「洋介~、加奈ちゃんが来たわよ~」
正直、俺は心臓が止まるかと思った。
加奈は俺と幼馴染だ。昔は遊ぶときも寝るときだって一緒だったくらい仲も良かった。
ただ、加奈の体は俺とは違って重い病気に掛かっており、月に一度は都会にある大きな病院に通っていた。
それでも病気は一向に治らず、ある事をキッカケにそのまま大病院のある都会へと家族と一緒に引越ししていった。
それっきり一度も会っていなかった加奈が、今この家の前に居る………
そう思うと、どんな顔をして行ったら良いのか分からなかった。