私たちが仲良くなると終わる冒険
信じきれない少女×その少女を知りたい不老不死の魔法使い。
「爆発するスライムって何なの…」
私はため息を吐く。
そして、服を脱ぎ、下着も脱ぐ。
何もまとわない姿。
「見ないで下さいねー、魔法使いさん」
「わかってる、わかってる。誰にも見させないよ、可愛い子のそんな姿」
遠くから魔法使いの声。
…やっぱり信用しきれない。
ここからは、見えない。だから、あそこからも見えない。
変な魔法を使われなければ。
やっぱり裸になるんじゃなかった、と後悔する。
いつものように、暗い穴の中、灯して、濡れた布で拭けば…。
早く入って早く汚れ取って早くあがって早く着よう。そして早く下着と服を綺麗にしよう。
「はー、いい湯だなー。
なんでこんな森に温泉があるのかは知らないけど」
「いや、いや、なに当たり前のように入ってんの?」
「けど、本当に綺麗だよね。お肌もスベスベ、髪もつやつや」
うざい…。
「触っていい? 先っぽだけ」
「嫌です」
「えー」
当たり前のようにこっちに来て当たり前のように脱いで当たり前のように入ってきた。
「んー? 大丈夫、大丈夫。魔法で結界張ったから。魔王でも入って来れないよー」
早く魔王倒せばいいのに、と突っ込みたくなる。
「まあ、魔王なんてどうでもいいけどな。倒しても楽しくないし」
ククク、と魔法使いの女性はおかしそうに笑う。
倒せる前提。
不老不死の魔法使い故の余裕、だろうか?
姿は20代くらいのお姉さん。胸は大きく、髪も長くしかも異世界から来た私よりも綺麗で、お尻も大きく。
女子の私でもつい羨ましいって思うくらいに、理想的なボン・キュッ・ボン。
私が胸が小さく貧相な体つきだから、か?
不老不死。実際の年齢は分からない。
私は18歳。元、高校3年生。
「魔王なんてどうでもいいよ、あんなか弱いもの。お気に入りの図書館が部下の魔物に燃やされ、倒してやるぞって思ってはいたが」
魔法使いは私に顔を向けニコリと笑い、
「今は面白い遊び相手がいるからね」
「…ふん」
「一緒に冒険してるのに名前とか歳とか全く教えてくれないし」
「…」
「出身はニホン、異世界」
息を大きく吸い、
「異世界だぞ!? 異世界! 面白すぎる!」
大きな声がうるさい。
「名前とか歳とか早く教えてくれないかなっ、異世界人ってことはわかるのに、卑怯すぎるだろっ」
「触らないで下さいっ」
そうベタベタと触られたら困る。
信用しきれないのに。
「一緒に冒険してるんだし、早く教えてくれないかな?」
「私も貴女のことを不老不死の魔法使いとしか知りませんよ?」
「知りたい? じゃあ早く教えてっ」
「嫌です」
「えー?」
「バシャバシャするのやめて下さい、かかります」
「教えてよー」
元の世界では、私は便利な『良い人』だった。
『勉強教えてよ、会長』
『ノート見せて、会長』
同級生たちからは『勉強を教えてくれる良い同級生』。
『便りにしてるぞ。早く問題を解決してくれよな、会長なんだから』
教師からは『生徒の問題を解決してくれる良い生徒会長』。
『東大? 行けて当たり前じゃない。これでお義母さんに自慢できるわ!』
『俺も上司に自慢できる! 出世目指すぞ!』
家族からは『望んだ結果を出してくれる良い娘』。
『ありがとう』という言葉があれば、納得できたかもしれないのに、良い人、良い人、便利で良い人。
友情なんてなく、愛情もなく、私の人生はヒトの生とはとても言えなかった。
正直、異世界に来てラッキーだって思ってる。
締め付けられた世界から脱け出すことができたから。
それでも、誰かを頼りきることはできない。
頼りきるって、何だろう。
信頼しきって、裏切られたら怖いって思わないのだろうか?
満面の笑みを見せたら牙を向けられた、そんな怖いことを想像しないのだろうか?
分からない。
「背中流してあげようか?」
「嫌です」
いつかこのヒトに名前や歳を教えるときがくるのだろうか?
「私たちの冒険は私たちが仲良くなったら終了! 仲良くなったらどこか国で暮らそっ」
「一生言ってて下さい」
「いいよ? 不老不死だから。
でも幸せな2人暮らしもなかなかな」
「はあ」




