AI作品の乱発を受けて思った事~極まったなろう系テンプレはガッチガッチの“おままごと”である~
皆さんは“おままごと”と聞けば何を思い浮かべますか?私の場合は幼い子供がアクションフィギュアを握り締め、「どうだぁ! うわぁ! それみたか! すごーい!」等の声を発しながら、それらをぶつけ合い遊ぶ様なんかを想像します。
これがそのまま、私のなろう系テンプレに対して抱くイメージであり、AIが完璧にトレースする属性なのです。
幼児が床に座って、乱雑に線を書きなぐった段ボールを敷いて「これがね、世界なの」と教えてくれる。その辺のアクションフィギュアを置いて「これがね、主人公なの」とし、美少女系アクションフィギュアを隣に置いて「これがね、ヒロインなの」と説明してくれる。
そして幼児一人劇の幕が上がる。
「悪いやつだ! おら!」
「ぎゃぁ!」
吹き飛ぶ汚らしい怪獣フィギュア。
「きゃぁ! 素敵よぉ」
主人公フィギュアに美少女フィギュアの顔を押し付ける。
「ちゅっ、私の王子様」
「やれやれ。おっと、だれか困ってるぞ、やれやれ」
幼児の手に握られたフィギュアが宙を舞う。
「くらえ! ダイナマイト・チート・スプラッシュ!」
投げつけられたフィギュアが原型をとどめていないスライムを直撃し、派手に破片が飛び散る。目をキラキラさせた幼児がこちらを見上げ、興奮した口調で矢継ぎ早にまくし立てていく。
「でね、でね! 主人公を虐めてたやつがね、ざまぁなの! 凄いの! ほら、見て!」
これです。これが私の脳内イメージ。可愛らしいですね。リアルなら。
おままごとって、真似事なんですよね。子供は見聞きした事柄のうわべを真似してくるんです。何故そうなるのかも、どんな心の動きがあるのかも、小さな子供には分かりません。だから子供は気にしないんです。
周りの大人からすれば「そうはならんやろ」と感じる展開も子供は気にならない。自分が楽しく演じている劇だから、楽しい結果だけあれば良いんですよ。フィギュアに心なんてものも無いんです。子供が望む動きをするだけ。
「ヒロイン欲しいから、はい、この子は主人公が大好き」
「悪いヤツはとにかく悪いんだ、早くやっつけるぞ」
「次の悪いやつをやっつけたいから、一発で勝つね」
「最初は旅してたけど、自分がそれに飽きたからここに住むね」
等々。
整合性?何それ、漢字読めない。
キャラの心の動き?アクションの邪魔だし、こっちがポーズを取らせないと立つことも出来ないフィギュアにそんな物ないよ。
ご都合主義?当たり前じゃん。とにかく派手に楽しければ良いの。
繰り返し言おう。リアル世界の上辺だけを濃縮した真似事なんです。
では、なろう系テンプレはどうか?
極まったテンプレは「読みやすさ」全振りです。何が面白いとされるのか、何をどの順番で、どんな表現で示せば良いのか。どんな役割のキャラが居て、どんなふうに役割をこなすのか。全てがガッチガッチに決まっています。ベストとされる台詞・地の文の割合まで。徹底的に「重要じゃない」要素を削ぎ落し、凄まじく読みやすい。サクサク進む。中身が無いから。
小さな子供のままごとを見て、「これは……なんだ? 数学の方程式を解いているのか?」なんて勘違いする人はいません。目の前で飛び交うフィギュアがまんま答えなんです。
そこに難しい理屈や複雑な要素はありません。上辺だけですから。フィギュアが別のフィギュアをなぎ倒せば勝ち。悪いやつは悪い事を言ってやられるだけ。フィギュアは見たまんまの役割を担い、「実はこんな過去や考えがある」なんて小難しい話で劇のテンポをへし折る子供もいません。
極まったなろう系テンプレもしかり。上辺の結果を特定の順番で見せていく。これだけ。何かを理解する必要はありません。果たすべき役割以上の深みを持ったキャラなど不要。故に分かりやすい。「こんな人間はおらんて」なんて言われてもへっちゃらです。最初から人間を描いてないから。決まった台詞を決まった個所で吐き、決まった動きをするだけの存在が「清く正しいなろう系キャラ」なのです。それ以上はノイズ。読みにくくなる。
乱雑に線を書きなぐった段ボール世界然り。なんとなく舞台に見える可能性が微粒子レベルであれば十分。子供は脳内補完しますから。テンプレートの場合は読者が脳内補完しますし。いや、それすらないかも。目の前のアクションに関係が無い部分は存在しないし、存在しなくて良いんです。好きなフィギュアを好きな脚本に従ってバチバチさせられる「舞台らしき何か」だけあれば十分。
で、ですよ。これまでに会った事も無ければ、見た事もない子供のままごとをいきなり見せつけられて「面白いだろ」なんて言われても、私は何一つ面白くないんです。でも、これがウケている。お金になるんですよ。
さぁ、いよいよAIの出番ですね。
AIとは名ばかりで、実際には膨大なデータと複雑なアルゴリズムで「より高確率でマッチする物」を提示するだけのプログラムなんですけどね。これがまた強みでもある。
ガッチガッチに全てが決まっている手順の模倣は大の得意。正解が決まっていますからね。正解に行きつく道筋も。楽勝です。
秒でお手本のような文章が手に入るんですよ。そしてそれがそのまま金銭に直結するのが「なろう小説」界隈。人間一人でやると時間と労力の割には稼げない界隈でもありますが、手数を増やせるなら話は違ってくる。
完璧なテンプレ作品を大量に生産できるAI。金の生る木ですね。そして実際にその手法は取り入れられている。
それが良いのか、悪いのかをここで論じるつもりはありませんよ。ただ、AIと極まったなろう系テンプレ、そのあまりの相性の良さにたまげました。
大人の世界を上辺だけ真似するままごと。そのままごとを極めたテンプレート。そのテンプレートを極めたAI。
いやはや、凄い世界ですよ。
以上、私個人の見解でした。




