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最弱ハンター、二度の覚醒を経て最恐へと進化し、最強の魔獣軍団を従えて無双する  作者: たぬころまんじゅう


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8/20

過去と零落と現在と

「旧皇帝派の臣下は次々と追放された。あるいは閑職に追いやられ、あるいは、ありもしない罪で処刑されたわ。一方でルドールに与した貴族たちは、帝国軍の実権を握り、それぞれが私兵を率いる軍閥を築き上げた。軍事力を背景にやりたい放題。やがて放漫財政が祟り、国庫は底をつき、地方への魔獣討伐すら放棄するようになった」








彼女は悲しげにノルを見据えた。








「あなたの街では、ハンターは英雄だったんでしょう?でもその需要が急に高まったのは、結局、帝国の政治の腐敗が原因なの。地方を守るはずの軍が来なくなったから、街や村は自分たちでハンター協会を作って自衛せざるを得なかった。協会に出していた補助金だって、上層部で中抜きされてるなんて話が絶えないわ」








ノルは唇を噛んだ。魔獣を狩り、素材を売り、街や村を守って感謝される。それがハンターの誇りだったはずだ。いつの間にか若者たちの憧れになっていた。けれど現実は、死亡率の高い、血塗られた仕事だ。腐敗した帝国の尻拭いを、少年少女が背負わされていただけだったというんだろうか。








スカーレットは声を低くした。








「本題はここからよ。ハンターの中でも、特に強力な魔獣を単独で仕留めるような者たちがいた。彼らの多くは異能者だったわ。帝国は、彼らが結託すれば反乱を起こしかねないと怯え始めたのよ。民衆の不満は、帝国の傾いた財政を補うための増税と貧困で限界に近づいている。だから帝国は、『異能者を保護する』という美しい名目で、情報を集め、実際には抹殺を始めたの」








「それじゃ、ノルも…!?」








「ええ、残念ながら…貴族や帝国軍上層以外は全て対象となってるわ」








リリスの疑問にスカーレットは頷きながら、目線を床に落とした。静寂が洞窟を満たす。焚火のぱちぱちという音だけが、妙にはっきりと響いた。彼女は顔を上げて、ノルとリリスに視線を戻す。








「私とガルムは、異能者を保護し、帝国に抗うことを目的にこの騎士団を結成した。当面は、異能者を守りつつ、メンバーを集めること。ログは各地で帝国の動向を探り、異能者を探してるのよ」








スカーレットは二人を見据えて続けた。








「帝国と戦う意志はある?」








ノルとリリスは、瞬時に目を見交わす。言葉はいらなかった。二人同時に、力強く頷く。スカーレットは小さく微笑み、次にノルに向き直った。








「あなたの異能について聞かせてくれる?知っておく必要があるわ」








ノルは少し躊躇いながら口を開いた。








「ええと、最初は…身体の感覚とか反応、筋肉が強化されて。そういった異能なのかと…。でも、さっきの戦いで気付いたんですけど、傷がすぐ治るみたいで…。自分でもよくわかってないんです」








スカーレットは興味深そうに目を細める。








「……自己修復?そんな異能、初めてね。驚いた…ただの身体強化じゃないわね」








彼女は右手を軽く上げた。瞬間、焚火の薪がふわりと浮き、近くにあった水差し、剣、木の椅子――次々と空中に浮かび上がる。








「凄い‥‥‥」








ノルが思わず感嘆の声を上げる。やがてゆっくりと回転しながら、元の位置に戻った。








「これが、私の異能:ベクター・レイン」








「これほどの異能、帝国にとってはかなりの脅威になりそうですね…」








リリスは冷静にスカーレットの異能を評価した。戦闘だけでなく、あらゆる応用が効く万能型。戦闘時になれば、人間砲台が出来そうだ。








「ありがとう。でも、万能ってわけでもないわ」








スカーレットは真剣な眼差しで続けた。








「強力な異能ほど、帝国の標的になりやすい。己を鍛えることが、一番の自衛よ。幸い、うちにはカレンがいる。明日から彼女にみっちり仕込んでもらうといいわ」








そして、今度はリリスに向き直る。








「リリス・ローゼン……あなたとも、明日、ゆっくり話をしたい。都合のいい時間に私の部屋に来て」








リリスの肩が、わずかに震える。スカーレットはそれを見逃さなかった。――ルドールの名を聞いたときの鋭い反応、そしてこの名前――胸の奥が騒ぐ、何かが引っかかる。ノルが立ち上がって、場を和らげるように口を開いた。








「あの……良かったら施設を見せてもらっていいですか?」








スカーレットはぱっと笑顔になり、頷く。








「そうね。私はログから報告があるから、案内は出来ないけど。ダグに案内させる。その間にリリスちゃんの着替えも用意しておくわ」








リリスは頰を染めながら、ぺこりと頭を下げた。








「……ありがとうございます。ずっとシーツ姿で、恥ずかしくて……」








「気にしないで。女の子だもの」








スカーレットは優しく微笑み、ダグを手招きする。








「ダグ、頼んだわよ」








ダグと呼ばれた青年がゆっくりと近づいてきた。ログより背が高く、落ち着いた声色だ。








「ついて来い、案内する」








通路を歩きながら、ダグは少し申し訳なさそうに口を開いた。








「俺の弟が迷惑かけたようで、悪かったな。説明もろくにせず、いきなり巻き込んじまって」








ノルは慌てて首を振る。








「いえ!助けられたのはこっちです!……ていうか、ログのお兄さんだったんですか?」








「ああ。似てないだろ?」








ダグは苦笑し、肩をすくめた。








「これからよろしくな。ところで、お前、異能持ちだって聞いたけど……どんな異能なんだ?」








ノルは少し躊躇いながら答える。








「身体が強くなって……傷もすぐ治るみたいで……でも、正直まだ自分でもよくわかってなくて」








「傷が!?冗談みたいな力だな…。もし、そうなら近接は最強だな」








ダグは感心しながら頷いてるようだった。正直、自分の異能についてもよくわからない。あまり過剰に期待されて、いきなり最前線に一人で立たされる…なんてことはないだろうか?…と勘ぐってしまう。

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