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最弱ハンター、二度の覚醒を経て最恐へと進化し、最強の魔獣軍団を従えて無双する  作者: たぬころまんじゅう


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覚醒した力

ノルは姿勢を低くして短剣を構えた。あんなに速かったダークウルフの動きが、今は妙にゆっくりに感じる。ダークウルフは飛び上がった。そして、勢いのまま突進して牙を剥き出しにして噛みつく姿勢で突っ込んで来る。後ろ足で蹴り飛ばされた土と苔が空中を舞った。それをノルは、まるでスローモーションの映像でも見ているかのように無心に見る。やがて、ノルに直進するダークウルフの頭を掌で押した。押された衝撃がダークウルフの黒い毛を波紋のように走り、巨体が弾かれる。次の瞬間、魔獣は木の幹に激突し、甲高い悲鳴を上げて地面に叩きつけられた。


リリスは息を飲んだ。


何が起きたのか、理解が追いつかない。ダークウルフはよろめきながらも立ち上がり、血走った瞳で再び飛びかかる。どうやら攻撃本能が理性を焼き尽くしたらしい。


ノルはダークウルフに対して、最小限の動きで攻撃をかわしながら、今度は構えた短剣を振り抜く。赤黒い閃光がダークウルフの身体を斜めに斬り裂く。森に轟音が響き、朝もやが真っ赤に染まった。真っ二つに裂かれたダークウルフの身体が、突進した勢いそのままに、ノルを中心にして左右に弾け飛ぶ。閃光は背後の木も数本巻き込んで切り倒し、ゆっくりと木が倒れ込んでいった。地面に刻まれた深い溝から赤い霧が立ち昇る。


ノルは短剣を下ろし、静かに息を吐いた。


「凄い……」


リリスが放心したように呟いた。


「リリス、何かおかしいよ…」


「おかしくないよ。これがノルの力なんだから」


ノルは激しく首を振った。


「違う、そうじゃなくて。普段なら、こんな場所にダークウルフが現れることなんてないんだ。それが、短期間で二頭も出るのはやっぱり変だよ」


リリスは、ノルがさっき言ってた言葉を思い出した。彼はダークウルフが出た瞬間に、同じ疑問を口にしている。私が目覚めた村も魔獣の襲撃を受けたようだった。ノルはずっと、この場所で育ってきている。彼がそう言うなら間違いないんだろう。何かが起きてる…?ノルの言葉でリリスの胸にも何か言い知れぬ不安が広がった。


「ノル、君の家に。カシルの街に戻ろう」


ノルは即座に頷き、踵を返した。森の道を急ぐ。木漏れ日が二人の影を追いかける。だが、数分も歩かないうちに、リリスが小さく顔をしかめた。


「うっ……」


シーツ一枚の姿で、苔むした根っこを踏み越えるたびに裸足の足裏が痛む。ノルがぴたりと止まった。


「……リリス、乗って」


そう言って、背を向けて膝をつく。


「……!?」


おんぶの構え。


「えっ!?い、いや、だ、大丈夫だから——!」


リリスの顔が一瞬で真っ赤に染まる。転生前の精神年齢は三十路の軍師。年下の少年におんぶされるなんて、プライドが――!


(でも、今の体は十二歳の少女だから、私が、年下——!?)


理性と羞恥心がせめぎ合う。


躊躇していると、ノルが振り返り、ちょっと心配そうな顔で「あ、こっちのほうがいいよね?」と、いきなり、腕を回してリリスの背中と膝裏を抱え上げた。


「ひゃあっ!?」


お姫様抱っこ。リリスの悲鳴が森にこだました。シーツがはだけそうになり、慌てて胸元を押さえる。


「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとノル!?降ろして、降ろしてってば――!」


「でも、足痛そうだったし……」


「痛くても歩ける!ていうか、こっちのほうが恥ずかしいいいいい!」


顔から火が出そうなリリス。銀髪がぱたぱたと揺れ、耳まで真っ赤になるが、ノルはきょとんとした顔だ。


「……ごめん。でも、リリス軽いから、平気だよ」


「軽いって……!そ、そういう問題じゃなくて……!」


リリスはもぞもぞともがくが、ノルの腕はびくともしない。異能で強化された腕力は、少女など羽のように軽いらしい。


(くうっ……!こんな屈辱、軍師時代にはなかったのに……!)


でも、ノルの体温が伝わってくる。少し汗ばんだシャツの匂い。森の風と混じって、妙に安心してしまう。


「……ほんとに、降ろして」


小声で呟くと、ノルは苦笑いしながら「もうすぐ街だから、そこまでは」と、歩き続ける。リリスは観念して、仕方なくノルの肩に顎を乗せた。銀髪がノルの頬をくすぐる。


「……ノルって、意外と図太いよね」


「え?どうして?」


「なんでもない……」


森の出口が見えてきた。朝日が二人の影を長く伸ばす。リリスは小さくため息をつき、まあ、いいか。と、自分に言い聞かせた。




森を抜け開けた道をしばらく進むと、カシルの街並みが、朝靄の向こうに浮かび上がった。ノルの足が、ぴたりと止まる。煙だった。街のあちこちから、黒い柱が何本も立ち昇っている


「急いだほうがいい…」


ノルは黙って頷くとリリスを抱えたまま駆けだす。街に続く街道を抜け、街の入り口に辿り着いた瞬間、二人の視界が、凍りついた。正門は粉々に砕かれ、折れた鉄格子が地面のそこかしこに突き刺さっている。


石畳は血で赤黒く染まり、壁には爪で削られた深い溝が走る。いつもなら、門兵が立って住民や行商人をさばいているはずの場所…。今は兵士の姿どころか、人の気配が、まるでない。ノルはゆっくりとリリスを降ろし、呆然と立ち尽くした。


「こんなことって……」


ノルが呟いている間に、リリスは先に進み、崩れた門をくぐる。


焼け焦げた匂い。


血と肉の臭い。 脳裏に、転生直後の村が蘇る。


作りかけのスープ。壁に残る爪痕。半壊した家々。焼け落ちた梁。同じだった。いや、それ以上に徹底的だ。煙を上げる家々からは、人の気配が途絶えている。


破壊された扉には、魔獣の爪痕が深く刻まれ、血は乾き始めていた。石畳の隙間に、小さな布人形が転がっている。リリスはそれをそっと拾い上げ、沈痛な面持ちで握りしめた。


「小さな街だけど…ここに数百人は居たはずなんだ」


ノルが小さく呟く。

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