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最弱ハンター、二度の覚醒を経て最恐へと進化し、最強の魔獣軍団を従えて無双する  作者: たぬころまんじゅう


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銀の賢者

スカーレットは冷めた紅茶を一口飲み、静かに口を開いた。








「……私の話を聞いてくれて、ありがとう。今度は、あなたの番よ、リリス」








彼女はまっすぐにリリスの瞳を見据えた。








「あなたの話し方、視線の運び、紅茶を飲むときの仕草……ずっと、気になっていたの。それに、ルドールの名を聞いたときの反応……」








リリスは小さく息を吐いた後、小さく笑った。








「お察し——の通りです……。私の転生前の肩書きは、シュタール帝国皇帝付き個人顧問 兼 帝国最高参謀。リリス・ローゼン」








「やっぱり、あなたが……!」








スカーレットは目を見開き、思わず立ち上がる。やがて我に返り、椅子に座り直すと、納得したように深く頷いた。








「リリス・ローゼン。帝国最高の軍師、またの名を『銀の賢者』。私の中では、憧れの英雄よ。私が幼い頃、国中がその名で沸いていた。シュタールがまだ王国だった頃の話よ。シュタールは、最後の宿敵マーレ王国に苦しめられていた。補給線を断たれ、兵は飢え、将軍たちは敗北を重ねた。そんなとき、銀髪の少女が王の前に現れた。当時、十七歳」








リリスは俯いたまま、静かに聞いていた。








「諸侯は大反対したわ。『子供の戯言に付き合う気か』って。でも王は、彼女の一言に全てを賭けた。『補給線を潰せ』ってね」








スカーレットは気まずそうに、小さく笑う。








「彼女はマーレ軍の補給路を、まるで掌の上の地図でも見るように言い当てた。山道、川沿い、森の抜け道——すべてを焼き払い、潰し、飢えさせた。そして、わざと自軍の輸送隊を敵の目に付くように移動させた。飢えたマーレ軍はそうとも知らず、飛びついた。食料物資を奪い、自陣へと運んだ。底に仕込んだ火薬ごとね」








彼女は指を鳴らすようにして、ぱちん、と音を立てた。








「轟音とともに、次々と爆発。敵の陣地が火の海になった瞬間、シュタール軍は総攻撃をかけた。でも、それだけで終わりじゃなかった。リリスは、別の道を使って別動隊に山を越えさせ、伏兵として背後から本陣を突かせた。混乱してる敵陣は、前後から挟撃されて崩壊。すべてが、彼女の掌の上だった」








スカーレットは静かに息を吐いた。








「その後、シュタールは彼女の采配により連戦連勝。宿敵マーレを滅ぼし、帝国への道を開いた。誰もが『銀の賢者』を讃えたわ。そして、ある日突然、賢帝と呼ばれた前皇帝グラヴォスが毒殺された。直後、リリス・ローゼンに、公開処刑の布告が出た……」








リリスはゆっくりと顔を上げた。瞳に、涙が光る。








「……私は、死んだ。処刑台に立たされ、首を吊られ…。最後に見たのは、歓声を上げる民衆と、前任の軍師——ルドールの冷たい笑みだった」








彼女は震える声で告げた。








「でも、私はこの体に転生して。その間に十二年の空白があった…。私が作り上げたはずの帝国は、その十二年で完全に腐りきっていた」








リリスは拳を握りしめる。








「私が夢見た世界は、もうどこにもない。残っているのは、私の理想を歪めた残骸だけ。だから、今度は私が終わらせる」








スカーレットは立ち上がり、リリスに右手を差し伸べた。








「ようこそ、黒焔騎士団へ。銀の賢者」








リリスは涙を拭い、その手を強く握り返した。








「……スカーレット団長、お願い。どうかこのことは内密に」








「わかってる。あなたが『銀の賢者』だってこと、周りに言うつもりはないわ。当時、何があったのかも、聞かない。あなたは昔も、そして今も、私の中では英雄なの」








リリスは小さく頷いた。








「このことを知ってるのは?」








「あなたと、ノルだけ…」








スカーレットは少しだけ意地悪そうに目を細めた。








「ひょっとしたら、彼に会えたのが、あなたにとって一番の幸運だったのかもしれないわね」








それを聞いたリリスは、すぐに俯いてしまった。








「……うん」








小さな声だった。でも、その一言に込められた想いは、紅茶の湯気が消えたあとの部屋に、ほのかな温もりとなって残った。












夕刻。








地下アジトの通路に、よろよろとした足音が響く。扉が開き、ノルが文字通り這うようにして部屋に入ってきた。








「……もう、動けない……」








全身汗だく、腕はプルプル、膝は笑ってる。千本の素振りと打ち込み、足運び、体捌き。カレンの「まだまだ甘い!」という声が耳に残ったままだった。








ベッドに突っ伏す寸前、小さな手がそっと肩を支えた。








「……お帰り、ノル。すごく頑張ったね」








リリスだった。大きめの麻シャツの袖を捲り、濡らした布を手にしている。ノルは顔を上げて、ぼんやりと呟いた。








「……リリス?なんでここに……」








「スカーレットさんとの話が終わったから。それより、座って」








リリスはノルをベッドに座らせると、慣れた手つきで額の汗を拭ってくれた。冷たい感触に、ノルは思わず目を細めた。次は首筋、続いて腕の汗を丁寧に拭っていく。ノルはふと気づいて、恥ずかしそうに身を捩った。








「ちょ、ちょっと待って! 俺、汗くさ……」








「別に、平気」








リリスはクスッと笑い、最後にノルの頰をぽん、と軽く叩いた。








「カレンさんは容赦ない人ね。でも、ノルはよく耐えた。……本当に」








ノルは深い息を吐いた。

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