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【異世界ラブコメ】【続編】また転生したかと思ったら婚約者のご令嬢も一緒でした  作者: 舞波風季


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第24話 告白できる気がしないのですがどうしたらいいですかアリス様

(伝えるぞ、テシリアに俺の気持ちを……!)


 俺とテシリアは庭の散歩道をゆっくりと歩いている。


 (はた)から見たらふたりでゆったりとした気分で散歩を楽しんでいるように見えるだろう。


 しかし俺の心臓はバクバクと音が聴こえるのではないかというほど激しく鼓動し、握りしめた手は汗でじっとりと濡れている。


 一方横を歩くテシリアはというと、落ち着いた表情で庭の木々や草花を楽しんでいるようだ。


「なんだか学園の中庭のことを思い出すわね」


 テシリアが静かに言った。


「そ、そうですね」


(ヤバい、落ち着け、俺!)


 俺はテシリアに悟られないようにゆっくりと深呼吸をした。


「あ、あの、テシリア」

「なに?」

「実は、その、聞いてもらいたいことがあって」

「いいわよ」

「ええと……」


 ドクン!ドクン!


(よし、言うぞ、俺の気持ちを……!)


「き、昨日……」

「昨日?」

「き、昨日、ぼ、ボーロさんが来たんです!」


(何を言ってるんだ俺はぁああーーーー!)


「ボーロって、ボーロ=グッシーノ?あいつが来たの!?」


 穏やかだったテシリアの表情が一気に嫌悪でいっぱいになった。


「一体何しに来たのよ!!」


 凄まじい剣幕である。


「お見舞いに来たと言ってました、グッシーノ公爵に言われてと……」


 俺が怒られているわけではないのに、何故か縮こまってしまう。


「そう、で?何か話をしたの?」

「はい、調子はどうかとか……そういうひと通りのことを」


(あまり詳しいことは言えない……)


 ボーロから言われたことをそのままテシリアに言ったりしたら、とんでもないことになってしまう。


「また、決闘をするようなことにはならなかったのね?」


 テシリアは気遣うように眉をひそめた。


「いえ、それはありません」

「そう、ならよかったわ」

 テシリアは表情を緩めて言った。


「座りましょうか」

「はい」


 ちょうどベンチの所に来たのでふたりで腰掛けた。


「私に聞いてもらいたいことってボーロが来たってことなの?」


 テシリアは不審そうな顔で俺を見ている。


「い、いえ違います、そのことではなくて……」

「?」


 すぐ横に座っているテシリアが俺の顔を覗き込むようにして見つめている。


(か……顔が近い!)


 ドクン!ドクン!!ドクン!!!


「あ、あの……その……」

「ええ」

「その……その(あと)ダンジョンに行ったらニルに会ってニルがテシリアのことを心配してましたっ!」


(ぬぁああーーーー違うだろうーーーー!)


「あ、そうだわ、ニルにも会いたいわね!しばらく会ってないものね、私たちの感覚だと」

「はい……」


(なんで言えないんだ……こんなにテシリアのことが好きなのに……いや、好きだからこそ言えないのか……違う単にビビってるだけだ……俺はダメな男だ)


 俺はとことん自分が情けなくなって肩を落としてしまった。


「その気持をそのまま言ってみたらどうかしら?」


 不意に後ろから声が聞こえた。


「「え?」」


 俺とテシリアは同時に振り返って声の主を見た。


「「アリス様!」」


 そう叫ぶと同時に俺とテシリアは立ち上がった。


「お邪魔かなぁって思ったんだけど」


 そう言いながらアリスはベンチを回って、正面からテシリアの頭を両手でそっと包みこみ、じっと彼女の表情を検分した。


「もう、大丈夫そうね、安心したわ」

「ありがとうございます」


 そう言いながらアリスを見るテシリアの表情からは、彼女への憧れの気持ちが溢れ出ていた。


(ああ、かわいい……)


 俺はそんなテシリアについ見惚(みと)れてしまった。


「ところで今アリス様がおっしゃったことって……」


 憧れの表情を思案顔に変えてテシリアが聞いた。


(そうだ、あれって……)


「あれね、ついノッシュくんの心の中を読んじゃったの、ごめんなさいね」

 アリスはいたずらっぽく笑って言った。


(やっぱりーー!)


「心を読めるといえば……」


 テシリアは何かを思い出そうとしている。


「逆に心の中に話しかけることもできるのですか?」

「ええ、できるわよ」 


 テシリアの問いにアリスは笑顔で答えた。


『ね、聞こえるでしょう?』


 アリスの声が頭の中で響く。

 大魔王にされた時と同じだ。


「「あ!」」

 テシリアにも聞こえたようだ。

「やっぱり……」

「テシリア……?」


(やっぱりって……)


「あの時、あの世界が壊れ始める少し前に聞こえたの」

「え?」

「理事長、いえ大魔王の声が私の頭の中に」

「ええ!?」


(テシリアにも聞こえてたのか!)


 「『君の前世の末期(まつご)の願いだよ』とか……」


 テシリアが思い出しながら言った。


「あなたにも聞こえていたのね、テシリア」

 アリスが言うと、


「はい、最初は私に話しかけているのかと思ったんですけど、途中から、これはノシオに話しかけてるんだって分かったんです」


「あの……そうするとアリス様にもテシリアにも聞こえてたのですか……?」


(まさか……あれを全部聞かれてたのか?)


「ええ、もちろんよ」

「そう言ったでしょ」


 アリスとテシリアが当然のごとく答えた。


(うう……なんてことだ)


「それでねノッシュ、聞きたいことがあるの」

「はい……」


 あの時、俺が大魔王の口車(くちぐるま)に乗せられてリアに口づけをしようとしたことは知られてしまっている。


 リアが『ノシオなんて大嫌い!』と言ったのもそのことが大きく影響しているのだろう。


(何を聞かれても正直に答えよう……)


「前世ってどういうこと?」

「はいぃ?」


 思いっ切り虚を突かれて俺は間抜けな声を出してしまった。


(そうだったーーそのことは誰にも話したことなかったーー!)


「ノッシュ」


 テシリアは真剣な目で俺を見つめて言った。


「はい」

「私に隠し事はしないで」

「はい」


「そのことなんだけど」

 アリスが遠慮がちに言った。


「私が説明できるかもしれないわ」

「「え?」」


 これには俺も驚いた。


(アリス様はご存知なのか?俺が転生したことを)


 とはいえ前世の記憶があるというだけで、それが転生だと決めつけているのは俺の勝手な解釈なのだが。


 アリスはベンチに腰掛けて俺とテシリアにも座るように促した。

 俺達はアリスを挟んでベンチに腰掛け、アリスが話を始めた。


「ノッシュくんが前世の記憶を持っているというのは本当のことよ」


 そう言ってアリスはテシリアを見た。


「本当だったんですね、私はてっきり……」


 テシリアはそう言ってチラッと俺を見たが、俺と目が合うと直ぐに逸らした。


(俺の頭がおかしくなったと思ったんだろうな……)


「こういうことはとても珍しいことなのだけれど極稀(ごくまれ)に起こるのよ」

 と、アリスは言った。


 アリスによれば、死んだ人の魂は【世界の意思】に統合されるのだそうだ。

 そして新しい命が生まれると【世界の意思】から魂が分離し体に宿るのだという。

 なので、新しい命には新しい魂が宿るということになる。


「【世界の意思】が海で、魂は水の一雫(ひとしずく)って考えたら分かりやすいかもしれないわね」


 【世界の意思】にはこれまで生きてきた生命の魂の記憶の全てが統合されている。

 そういう記憶の断片を魂は内在して肉体に宿るので、「初めて来たのに見たことがある風景」に出会ったりすることがあったりもするらしい。


 ところが前世の記憶をそのまま持っているということは極めて珍しいことだという。

【世界の意思】という大海原に戻った前世の俺の魂が、海の水と混ざらずにそのままノッシュの体に宿ったということになるからだ。

 しかも俺の場合は全くの別の世界、リガ王国があるこの世界ではない別の世界の魂だったので、極めて稀な事象なのだという。


「ドークルールがあなた達の魂を閉じ込めたあの世界、ノッシュくんには馴染(なじみ)があったんじゃない?」

 アリスに聞かれて、


「はい……見覚えがある場所ではなかったのですが、俺が生きていた日本という国にありそうな場所だとは思いました」

 と俺は答えた。


「ニホン?」

「はい、俺が以前に生きていたところです」

「ドークルールがあの世界を作る時にノッシュくんの前世の記憶を元にしたんだと思うわ」

「今思うと不思議なところだったわ」

 テシリアが思い出しながら言った。


「それで、ドークルールの目的ってなんだったのでしょう?」


 俺が聞くとアリスは少し考えてから答えた。


「あなた達の魂をあの世界にずっと閉じ込めたままにしておくこと、かしらね」

「閉じ込める?」

「そうすれば魂が抜けてしまったあなた達が目覚めることはなく、体は衰弱して死に至ってしまう」


「そんな……!」

「……!」 

 テシリアも俺も次の言葉が出てこなかった。

 今ここにこうしていることが無事だった何よりの証拠なのだが、思い返すと恐怖感が全身に巡っていくようだった。

 そんな、恐怖で固まったようになってしまった俺とテシリアを励ますように、


「そこで、そうならないように私が登場したってわけなの」


 と、明るい声でアリスが言った。


 アリスは言葉を強調するように、俺とテシリアの手にそっと自らの手を載せ、代わる代わる俺達に笑顔を見せてくれた。



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