午後三時、客間にて
シンデレラが王子のもとに嫁いで、三ヶ月。
お城の客間には、ティーセットと──シンデレラと義姉の二人だけ。
「お久しぶりです、お義姉様。傷の具合などはあれから痛みませんか?」
シンデレラの問いに
「見せたじゃない?傷なんて無いわ。心配しすぎよ。今日だってあなたがあまりに心配するから、こうして顔を見せに来たのに。
あたしが来たら王子が嫉妬するんじゃなくて?」
義姉の問いに、シンデレラは頭を振り、
「殿下は、お義姉様が今日訪問することも伝えておりますが、さして変わらぬ様子でありました」
と、言うと
「ふふ、それってきっと強がりよ」
シンデレラの言葉に笑って義姉は否定した。
(そんな、まさか⋯)と思ったが、戸口で「そのとおりだぞ」と、声が響いた。
振り向くと、戸口を開け放ち、ズンズンとシンデレラ達に向かって歩いてくる王子様の姿が。
「殿下⋯」
王子様は、チラリ、とシンデレラに目線をやると、すぐに鋭く義姉を睨みつけ、
「ここに何しに来た、赤い女狐」
と、言うのだった。
「あら、お言葉じゃない王子様?あたしが育てたシンデレラにゾッコンのくせに」
赤毛の髪をクルクルと指でいじりながら義姉は、フフンと鼻で笑った。
「なんだとっ……!貴様、不敬だぞ!」
激昂する王子をよそ目に、義姉はシンデレラに寄りかかり、
「シンデレラ、助けて!あなたの旦那様、心狭すぎ!」
と助けを求めた。
「殿下⋯」と、シンデレラが王子様を見上げて声を掛けると、
「わたしは、そういうつもりじゃ⋯」としどろもどろに答える王子様。
シンデレラは立ち上がり、王子様の肩にそっと手を置くと、
「殿下、どうぞお座り下さい。義姉も悪気があっての事ではないのです」
と、宥めるのだった。
(女狐なんだから悪気しか無いだろ⋯)と、心の中で悪態つきながらもシンデレラの言葉に素直に従う王子様。
シンデレラの涼し気な瞳に見つめられると、怒りも心もトロトロに溶かされるのだった。
「なんだか、面白くないわね。帰ろうかしら?」
と、義姉は立ち上がり、戸口に向かおうとして、椅子の脚に足が引っ掛かってよろけてしまった。
「あっ!」と、叫んだ時には、シンデレラの胸の中。
ドレスを着ていても、紳士の嗜みが抜けきれないシンデレラに義姉は「やっぱり素敵⋯」と、ウットリ眺めるのだった。
「あーっと!!私もつまずいたぁああ!!!」
二人の世界に割って入る王子様の声に、慌ててシンデレラは王子様に、駆け寄り助けた。
「二人とも今日はなんだか、足元が危ないですね」
というシンデレラとうっとりする二人を戸口で眺める王様は、
「あいつら、何やっとんじゃ」と、呆れるのだった。




