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静かなる決壊



 一方その頃、屋根裏部屋のシンデレラはというと、後悔することの無いよう、寝衣のまま、ベッドに横たわり、目を瞑り、幸せな時間を満喫していた。


 ウトウトしていると、誰かがドアをノックする音がした。


 義姉かと思い、「お義姉様⋯?」と、返事をすると


 ドカッ!!!ベキベキベキィ!!


 という、音とともに、扉が破壊された。


 慌てて起き上がった、シンデレラの目の先には、見知らぬ男性。


 男は、「女⋯?」と呟くと、シンデレラの様子を確認した後に、慌てて、身体ごと反転した。


 シンデレラも自分が寝衣姿だったことを、思い出し、

「お目々汚しを、失礼しました」と、いつもの従者の格好に着替えようとするが、扉が破壊されていることを、思い出した。


「えーっと⋯。すみません。着替えるので、声を掛けるまで、そのままでいて下さい」


 耳を赤く染めた男性は、こくりと、頷いた。


 着替え終わったシンデレラが声を掛けると、申し訳なさそうに、男性が、謝ってきた。


「とんだ失礼をしてしまい、申し訳ございません。囚われの身になっているのかと、勘違いをしまして⋯」


と、言いながら、振り向いた男性は、驚いた。


 目の前には、男性の服に身を包んだ、先程の女性がいたからだ。


(そうか、これが先程の行商人の言っていた⋯)


「私の、お仕着せになります。性別は、女ですが、制服はこれなのです」


 礼をする仕草は、男性そのもの。


 その時、使者の脳裏に、王子の号令が鳴り響いた。


“男女、関係ない!!私が提示した年頃の年齢は、全てガラスの靴を履かせろ!最初の家からやり直しだ!!!”


「⋯⋯っ!そうか、あなたが⋯。ふふっ。殿下が、無茶な号令を出すはずだ」


 殿下の想いがようやっと報われるのかと思うと、使者のまなじりに濡れた感触を、覚えた。


「舞踏会の日の夜、貴方様の忘れ物を、殿下が預かっておられます。必ず一対になるよう、持参をお願い致します」


 使者は、そう、シンデレラに告げた。



 階下を降りる途中で、料理を運ぶ、継母と、義姉と、使者。


 シンデレラの姿を認めた継母が、驚愕の表情を浮かべた。


「それは、何だ?」とシンデレラに同行していた使者が問う。


 料理を手に持った使者が、「ただの塩ゆでにございます」と、答えた。


「母子二人での料理が、塩ゆでのみとは」

と、使者はくっとわらう。


 しかし、シンデレラは感動していた。


 料理の“り”の字も知らない、継母と義姉が、塩の場所探し、塩ゆでを完成させたことに。


 なのでつい、

「塩ゆでも、立派な料理です。歯応えは出ますが、パンに挟むと美味しいですし」と、反論してしまった。


 シンデレラの反論に、使者は、


「無知ゆえの発言でございました。お許しくださいませ」


と、謝るのだった。


塩ゆで肉に合う、付け合せを作ろうと、お茶を準備している間に、二、三品、下拵したごしらえをした。


 皆がお茶を飲んでいる間に、パンを軽く焼き、下拵えした物を完成させる。


 ワゴンに乗せていると、先程、ドアを破壊した使者がやってきた。


「行商人から聞いて半信半疑だったのですが、あなたは、本当にここの管理を、全てやっておられるのですね」


 ワゴンの操作を買って出ながら、使者が話し始めた。


「ええ。まぁ。下働きは、私しかいませんし。あの、食材、有難うございました」

 山のような、食材を見ながら、シンデレラは、お礼を述べた。


「食材、頑張って使い切らなくちゃ」


 シンデレラのその言葉に、複雑そうな表情をする使者だった。


 昼食を終えると、使者が改めて、シンデレラに、こう告げた。


「私達は、王子の代理で、ガラスの靴の持ち主を探しております。結果は、既に分かってはいるのですが、今一度、確認させても宜しいでしょうか?」


 使者たちもこの目で確かめないと、城に戻れない、と言うことなのだろう、と思ったシンデレラは「私で良ければ」と、応えるのだった。


 ガラスの靴が用意された。


 シンデレラは、タイツを脱ぎ、足を差し出す。


 ガラスの靴に導かれるように、足はすっぽりと、靴の中に収まった。


 使者たちから、歓声が上がる。

 継母は、それを忌々しく見ていた。


 一人の少女も、シンデレラと使者の様子を呆然と眺めていた。



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