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薔薇には棘を、女には仮面を



―その時だった。

「随分と楽しそうじゃないの、灰かぶり。」


その声に、シンデレラの背筋が無意識に伸びる。


開け放たれた戸口に、薄紫の上衣に身を包んだ、中年だが、美しい女性が立っていた。

目は笑っていない。口元には、形だけの笑み。


「今日の準備は、終わったのかしら?」


冷たい声。射るような視線。継母(ままはは)だった。


「はい⋯、ただいま、終わりました。」

シンデレラは、ぎこちなく返事をした。

「なら、私の準備も手伝ってちょうだいな。」

継母は、にっこり笑うとシンデレラを手招きする。


シンデレラは、義姉に退室の挨拶をすると、先を行く継母に、付かず離れず付いていく。


継母の部屋に入り、舞踏会に行くための、ドレスの着付けの手伝いをする。

コルセットを締める際に、『痛い!』と、叫ばれ、継母から、頬を打たれた。

「下女の仕事ばかりしてるから、粗野で嫌だね!

あたしは、貴族なんだよ!

もう少し、丁寧にやって頂戴!」

と、継母に怒鳴られながら、シンデレラは、殊更丁寧に準備を進めると、今度は、愚図でノロマな出来損ない、と罵られた。


髪を梳く際は、『痛い!』と言われ、扇で手の甲を打たれた。


シンデレラの全てが気に入らない継母は、何をするにも難癖を付け、躾だとシンデレラを罵り、打った。

肩で息をしながら、気が済んだのか『ふんっ』と、ボロになった扇を放ると、姿見で自分を確認し、シンデレラを打った際に、少し乱れた後れ毛も演出のようだと、ウットリとしながら『まあまあだね。』と、出来栄えに満足するのだった。


「いいかい。アタシらが舞踏会に、行ってる間、アンタは薪割り、洗濯、靴磨き、それと、そうだねぇ、今度お茶会に招待されてるんだけども、あぁ、あの、緑のドレスがあるだろう?

その袖口と裾に、皆の目が釘付けになるように、刺繍を施しておいてちょうだいな。今日中に。

上手く出来なかったら、折檻するからね。

ちゃんとやるんだよ。」


と、継母の暴力にひざまづいて、痛みに耐えていたシンデレラにそう言いつけると、シンデレラの赤く腫れた手の甲や頬見て、満足そうな顔をして出ていくのだった。

(刺繍以外は、朝の内に終わらせたわ⋯)

刺繍の時間を確保できる事に、ホッとしつつ、義母のクローゼットから、緑のドレスを取り出すと、刺繍や、繕い物をする部屋へと急ぐのだった。

(掃除していた途中だったわ。戻らなくちゃ。)

頭の中で、刺繍を最優先事項に置き、今日の予定を組み立て直すのだった。


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